Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

僕の出自の一つのルーツが鹿児島の【南洲墓地】にあるというので、行ってきました。【出自を知る権利の実践哲学】

出自を知る権利についていろいろと議論しています。

出自を知る権利を考える上で、自分の学問のベースである「現象学」的に問うてみると、

「私自身は自分の出自をどう知り得るのか」

となるかなと思います。

客観的事象としてではなく、自分の経験に基づいた事柄としての「出自」。

自分のorigin=Herkunftは、どう経験されるのか?

そういうわけで、自分のオリジンのオリジン(Urherkunft?)を探しに鹿児島に来ました。

伯父の話によれば、僕の母方の祖母の祖父?曾祖父?のお墓が鹿児島にある、とのこと。

そのお墓は、かつての西南戦争で命を落とした西郷隆盛のお墓のそばにある、とのこと。

そのお墓は、【南洲墓地】という場所にある、とのことで、、、

南洲墓地

にやってきました!

南洲墓地は、南洲神社の中にあります。

南洲神社は…


南洲神社(なんしゅうじんじゃ)とは、鹿児島県鹿児島市上竜尾町に鎮座する神社です。旧社格は無格社。西南戦争での西郷軍方の戦死者が埋葬される南洲墓地の北隣にある神社です。南洲翁こと西郷隆盛及び、西南戦争における戦没者(桐野利秋,篠原国幹,村田新八,永山盛弘,辺見十郎太,池上貞固,別府晋介,大山綱良,島津啓次郎,中津隊など)を祀っています。

引用元はこちら


とのことで、西南戦争で命を落とした人のための神社なんですって。

ってことは、僕の母方の祖父(曾祖父)が西南戦争で戦って死んだということ?!

僕の先祖の一人である男性は、西郷さんと一緒に戦って命を落としていた、ということ?!

南洲墓地に入ると、こんな掲示板が立てかけられていました。

命もいらず名もいらず
My life as at an end, and I do not ask for fame.

ですって。

この言葉は、とても有名な言葉なんですね。

命もいらず、というのは、僕の哲学には反しますが、英語表記で考えると「私の人生は終わりを告げる」という意味になり、それなら分かる気はします。また、「名もいらず」というのは、「名声はいらない」という意味で捉えると、西郷さんっぽい気もします。(西郷さんって、かなり変わり者というか、変人というか、若干ADHD気質というか、そんな人物だったんですよね…。このことはまた別記事で書きます)

そして、更に先に進むと、ありました。

西郷隆盛の墓

であります!

こ、これが、西郷さんのお墓なのか、、、?!

ちょっとテンションがぐっと上がります。

小さい頃から、西郷さんの伝記とかは読んでいて、めちゃめちゃ破天荒だった人というイメージがあって、すごくお気に入りの歴史的人物でした。

今、自分の目の前に、西郷さんのお墓があるんだと思うと、ゾクゾクしてきます。

西郷さんのお墓を先頭にして、無数のお墓が置いてあります。

ここにあるお墓の数だけ、西南戦争で命を落とした、ということなのでしょう。

とんでもない数のお墓がここにありました。

前に、ドイツのユダヤ人墓地を見て衝撃を受けましたが、ここもかなり衝撃を受けます。

このお墓の四列目に、僕のルーツとなる人のお墓があるんだそうです。

四列目のお墓に書いてある文字を注意深く見ながら、進んでいくと…

ありました…。

僕の出自にかかわる渋谷精一さんのお墓がありました。

この精一さんが、僕の出自を辿っていった先にある人なんだそうです。

西南戦争で亡くなっているので、当然会ったことなどありませんが、「出自を知る」という経験をリアルに感じることができました。

「この人が、僕のルーツの一人なのか…」って。

嬉しいとか悲しいとかっていう感情は一切ありませんが、なんかグッとくるものがありました。西南戦争で亡くなったということで、少し西南戦争について知りたい!という気持ちも芽生えました。

出自を知ることで、自分の世界が広がるっていうことを経験した気がします。

自分とは全く関係ないと思っていたものが、自分に関わっていたんだ、という経験にもなります。

自分の出自を知るという経験は、単に親の身元情報を(頭で)知る経験というところに留まっているものではなくて、自分の世界が広がる経験であり、自分とは関係ないと思っていた事柄が自分と関わっていたということを知る経験でもあるんですね。また、その自分と関わっていた人にもまたその人の人生があって、その人の人生の終わりがあって…。

それを通じて、「自分は一人ではなかったんだ」ということも感じることができるんですね。ただの(物質的な意味での)「石」に過ぎないお墓ですが、そこに、「自分のルーツとなっている存在があった」という証拠を得ることができるんですね。

なるほど…。

招魂、と書いてあります。

ここに、西南戦争に敗れ、命を落とした人の魂が眠っているってわけですね。

この南洲墓地の隣りにあるのが、南洲神社です。

神社自体はとても小さくて、コンパクトな感じでした。

西郷さんの銅像もありました。

西郷さんって、写真が一枚も残っていないんですってね。

なので、現存する西郷さんの絵とか銅像とかって、あくまでもイメージなんですね。

こちらも、西郷さんです。

西郷さんファンにはたまらない場所かもしれませんね。

僕自身も、かつて西郷さんに憧れていたところがあるので、嬉しくなります。

回向には 我と人とを 隔つなよ
看経はよし してもせずとも

と書いてあります。

回向は、「死者への弔い」のことで、看経は、「お経を声に出して読むこと」。

この歌の意味についてはこちらを参照

死者を弔う時は、身内の者と他人とを区別するな、と。

で、お経については、読んでもよいし、読まなくてもよい、と。

これもまた、「日本の思想」の一つかなって思いますね。無分別の思想。

こういう「言葉」ももっともっと集めていきたいなぁって思います。

お墓の正面には、鹿児島のシンボルでもある「桜島」が見えます。

この桜島、定期的に爆発しているんですって。

先日も、こんな動画がTwitter(X)にあがっていました。

凄いですね、、、

これが「日常」だっていうんですから、、、

こんな石碑もありました。

怨親平等の心を今に

と書いてあります。

怨親平等というのは、「敵も味方も同じように扱うこと」という意味らしいです。

これもまた、「自他未分離の哲学」によるものかなって思います。

今の日本人にも、この「怨親平等の心」ってすごく大事な気がします。

この十数年の日本って、ものすごくアメリカ化してきていて、すぐに「敵」と「味方」を分けて、敵を攻撃するような精神構造になってきた気がします。寛容さもなくなって、すぐに「敵」を攻撃し始める。

「まぁまぁ、お互い様ですから」っていう感じがなくなってきたっていうか。

そんな時代にこそ、この怨親平等っていう思想は大事な気がしますね。ホントに。

とはいえ、西南戦争では、たくさんの人が命を落としました。

それは、まぎれもない事実だと思います。

政府側と反政府側が激しくぶつかり合ったんですよね。

そういう歴史に触れるのもまた、とても大切な学びだろうなぁって思いました。

そんなこんなで、僕の出自の一つのルーツとなる精一さんのお墓のある「南洲墓地」の訪問を終えました。

たかがお墓ですが、されどお墓です。

自分がこうやって存在しているのは、この精一さんがあってのことでもあるわけで…。

精一さんだけじゃなくて、たくさんの人の「命のバトン」をもらい、生きているんです。

それは、「生命のつながり」を感じるものであり、また、「自分が歴史の一部に属している」ということを経験することでもあります。

出自を知る権利というのも、こういう視点からもっと考えていかなければいけないよなって思いますね。単に「親の身元情報」を知ればいいっていうわけではなくて、その身元情報から、自分が「大きな歴史の一部である」という経験をすることこそが大事で、、、。

自分はどこからやってきたのか?

自分の親や祖父母や曾祖父母は誰だったのか? 

更にその先にどんな人がいたのか? どんな人生を歩んだのか?

どこにその人たちの墓地があって、どこに眠っているのか?!

そういった問いもやっぱりとても大事な気がします。

出自を知る権利だけを見ていると、こういう観点って出てこないんです。「子どもの権利」という観点だけだとどうしても、「学び」という観点が不足気味になるっていうか。

どうして人間にとって「出自」が大事なのか。それは、単に「自分をなぐさめるもの」という意味だけでなくて、「自分をより深めるもの」であり、「自分と世界がつながっていることを示すもの」であり、また、「自分が人間の歴史の中の一部であることを気づかせるもの」であるのです。

最後の「自分が世界や歴史の一部であること」って、教育学的にはすごく大事なところだと思うのです。それこそ、ハイデッガーのいう「世界-内-存在」に気づくことというか、、、。

そういう意味でも、すべての人の出自を知る権利の保障を目指すことは、大切なことだと思うんです。が、同時に、自分の出自がある程度分かっていれば、あとは自分の力で色々と掘り起こしていけることでもありそうです。

この辺のことはもっともっと考えていきたいなって思います!!

出自を知る権利には、たくさんの課題があり、議論があります!

この本もすごくいいです!

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