Dr.keiの研究室2-Contemplation of the B.L.U.E-

What is "Poverty"?! 貧困とはいったい何なのか?!

貧困について考える際に、Poor/Povetryという語から出発したい。


Poverty

「貧困」という意味の名詞です。その形容詞はpoorでラテン語pauparos、pau-(=few, little)+ paros(= producing)を語源とし、「ほとんど生み出さない」が原義です。

引用元はこちら


この「ほとんど何も生み出さない」というのが「貧困」の語源のようです。

あまりいいニュアンスの言葉じゃなさそうですが、「生産活動にほとんど参加していない(できていない)」というのが、貧困だというのは、わりと冷静な定義になっている気もします。

貧困とは何か。これは、昔も今も、無数の人が議論している永遠のテーマだと思います。

(この本は僕のバイブルです!)

貧困は、一般的には、お金がない状態生きていくために必要な物資が得られない状態を意味すると思いますが、それだけではないみたいです。

世界銀行機構(World Bank Organization)は、貧困について、こんな風に言っています。


Poverty is hunger. Poverty is lack of shelter. Poverty is being sick and not being able to see a doctor. Poverty is not having access to school and not knowing how to read. Poverty is not having a job, is fear for the future, living one day at a time.

Poverty has many faces, changing from place to place and across time, and has been described in many ways.  Most often, poverty is a situation people want to escape. So poverty is a call to action -- for the poor and the wealthy alike -- a call to change the world so that many more may have enough to eat, adequate shelter, access to education and health, protection from violence, and a voice in what happens in their communities.

引用元はこちら


貧困は、単に「お金がない」という状態を意味するのではなく、貧困というのは、行動への呼びかけであり、世界を変えよう!という呼びかけなのだ、と言っているんです。

貧困は、「お金がない人」「お金をもっていない人」の問題ではなく、この世界を生きる私たち全員の問題なのだ、と。貧困を考える上で、この点は最も大事だと思います。

生産活動に参加できる人(できている人)も、事故に巻き込まれたり、倒産したり、大病を患ったりして、生産活動に参加できなくなることも多々あります。また、誰もが歳を取り、働けなくなる時がきます。

貧困問題は、僕ら全員の問題であり、行動する呼びかけであり、世界を変える呼びかけなのです。

このことを指摘した上で、、、

世界レベルの貧困と国内レベルの貧困を考えてみましょう。

世界レベルで考えれば、まだ日本は「貧困国」とは言えません。まだ「G7」のメンバーですし、まだ「GDP(Gross Domestic Product=国内総生産=国内で産出された付加価値の総額)」は、名目上で第三位、一人当たりの名目上GDPでも(まだ?)30位(2022年)に留まっています。貧困国とは言えないけれど、成長はほとんどしていません。

GDP(前年度比)が上昇すれば、貧困は減り、下降すれば、貧困が増えるという(言われれば当たり前?の)法則(オークンの法則(Okun's law))もあります。

世界レベルでの貧困国は、たくさんあります。その多くがアフリカ大陸と南米の国々ですが、アジア大陸や太平洋の島々にも、極度に貧困な国が多々あります。

絶対的貧困と相対的貧困の違いについて押さえておきましょう。


…貧困には絶対的貧困(absolute poverty)と相対的貧困(relative poverty)の2種類があります。前者は、必要最低限の生活水準を維持するための食糧、生活必需品などを購入できる水準に達していない人びとのことを指し、世界銀行の定義では1日1ドルを貧困ラインと定め、それ未満で生活している人びとを「絶対的貧困層」(the absolute poor)と定義しています。主に開発途上国(developing country)で起きている貧困問題と言えます。一方、後者は所得の中央値の半分を下回っている人びとの割合を指し、その国の所得格差(income disparity)を表している数字で、主に先進国(developed country)での貧困問題と言えます。国連大学の研究によると、最も裕福な1%の人だけで世界全体の富の40%を所有していると言われています。ちなみに2018年Forbesが発表した世界の大富豪(super-rich people)の番付では、1位はジェフ・ベゾス(Amazon.com, Inc.)、2位はビル・ゲイツ(Microsoft®)、3位はウォーレン・バフェット(Berkshire Hathaway Inc.)となっています。


と指摘しています。

この「絶対的貧困」と「相対的貧困」は、貧困論の出発点になりますね。

ここにある1ドルは、2015年に、1.9ドルに変更されました。(参考

一日1.9ドル(約200円)以下で暮らしている人は「絶対的貧困」の状態にあると言えます。全世界に、8億人くらいの人がこの絶対的貧困状態にある、と考えられています。

詳しくはこちらを参照

この論文の中でも、絶対的貧困と相対的貧困のことが論じられています。


(1) 絶対的貧困

絶対的貧困は、一般的には生存が可能な最低限度の生活、すなわち生理的・生物学的レベルをメルクマールとして貧困をとらえようとするところに特徴がある。

エンゲル(Engel.E.)は、労働者家族の生活費の構造に着目し、労働力維持に不可欠な生活資料が家計支出に優先されるとし、その第一順位に飲食物費を挙げている。そして家計調査より、家計支出に占める飲食物費の割合(エンゲル係数)が家計収入の減少に伴い増大するというエンゲルの法則を発見している。さらに生存最低限を「限界数字」とし試算している。

また、ブース(Booth.C)は、イギリスの東ロンドンに居住する労働者を職業、生活水準、その他を総合的に判断し、8 つの社会階層に分け調査を行っている。この調査結果によれば、貧困を「貧困」(poor)と「極貧」(very poor、lowest)に分け、ロンドン市民の約 3 割(30.7%)が貧困線以下の生活(「貧困」+「極貧」)をしており、その原因が不規則労働、低賃金、疾病、多子にあることを明らかにしている。

同調査に影響を受けたラウントリー(Rowntree.B.S)は、ヨーク市において貧困調査を行っている。そこでは貧困を「第一次貧困」(Primary Poverty)と「第二次貧困」(Secondary Poverty)に区分し、前者を「その総収入が、単なる肉体的能率を維持するのに必要な最小限度にも足りない家庭」、後者を「その総収入が(もし、その一部が他の支出―有用無用を問わず―ふり向けられぬ限り)単なる肉体的能率を保持するに足る家庭」としている。

同市の調査結果では「第一次貧困」と「第二次貧困」に当たる者が合わせて約 3 割弱(27.6%)とロンドンとほぼ同様の者が貧困線以下の生活をしており、そこには疾病、老齢、失業、低賃金、多子の原因があることを明らかにしている。

なお、ラウントリーは、「第一次貧困」を設定するに当たり、栄養学の知見を導入し、必要カロリー量から飲食物費を計算し、さらに諸経費を積み上げて最低生活費とし、これに基づいて貧困線を設定している。同方式はその後応用され、マーケット・バスケット方式と呼ばれ、最低生活費の算定に採用されている。さらに、労働者の生活は、「困窮」と「比較的余裕のある生活」との交替によって 5 回が違った生活様相に直面する、そのうち、3 度(少年期、中年期の初期、老年期)は第一次貧困線以下の生活をせざるをえない、と指摘し、その一生において貧困の浮沈があるという生活周期(ライフサイクル)を明らかにしている。

ブースとラウントリーの貧困調査を通して、貧困は個人的原因に基づくものであるというとらえ方から、社会的原因に基づくものであるという考え方へと、貧困観の転換がもたらされた

その他、ウェッブ夫妻(Webb S&B)は、『窮乏の防止』(The Prevention of Desttution,1911)において「窮乏とは、生活必需品のあれこれが欠如することによって、健康や体力をそこない、気力さえもおとろえて、ついに生命それ自身を失う危険にある状況をいう。それは単に肉体的状況にあるだけではない。近代都市社会での困窮は、まさに、食物・衣服・住居の欠如を意味するだけではなく、精神的荒廃を意味する。」(『窮乏の防止』(The Prevention of Desttution,T Longman,1911,p1)とし、絶対的貧困について規定している。

このように絶対的貧困とは、生存することが不可能な状態を指しており、先述のエンゲル、ブース、ラウントリー、ウェッブ夫妻の貧困の定義もこの考え方に立っていると言える。絶対的貧困は、現代社会おいても消滅していない。開発途上国における飢餓や先進国におけるホームレスの存在などがそれを証明する。

(2) 相対的貧困

相対的貧困は、特定の社会における標準的な生活様式との比較より許容できない状態で決められるため、その状態は時代や社会において異なることになる。すなわち相対的貧困は、絶対的貧困のように単なる衣食住のみが足りた状態ではなく社会の標準的な生活様式や慣習、活動に参加することができない剥奪を生み出す状態を指す。

この点についてタウンゼント(Townsend.P)は、貧困を「相対的剥奪」という視点から次のように定義している。すなわち「個人、家族、諸集団はその所属で慣習とされている、あるいは少なくとも広く奨励または是認されている種類の食事をとったり、社会的諸活動に参加したり、あるいは生活の必要諸条件や快適さをもったりするために必要な社会資源を欠いている時、全人口のうちでは貧困な状態にあるとされるのである」、つまり、「貧困な人々の生活資源が平均的な個人や家族が自由にできる生活資源に比べて、きわめて劣っているために、通常社会で当然と見なされている生活様式、慣習、社会的活動から事実上締め出されているのである」としている。このようにタウンゼントは、相対的剥奪という視点から貧困・低所得層の生活問題の多様性・広汎性・複合性を提示している。


少し難しいですね(苦笑)。

相対的貧困は、簡単にいえば、「世帯所得が、全世帯の平均の半分以下」となります。そして、その全世帯の平均の半分のライン(Poverty line=貧困線)を下回っている人の割合が、相対的貧困の割合となります。

日本の相対的貧困のラインは、年所得127万円以下となっています(2018年)。このライン以下の人の数は、約2000万人で、日本人の6人に1人が相対的貧困の状態になっています。16.7%の人がこの状態となっていると言われています。

厚生労働省HPによると、、、

「平成21(2009)年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は 112万円(実質値)となっており、「相対的貧困率」(貧困線に満たない世帯員の割合)は16.0%となっている。また、「子どもの貧困率」(17歳以下)は 15.7%となっている。「子どもがいる現役世帯」(世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯)の世帯員についてみると、14.6%となっており、そのうち「大人が一人」の世帯員では 50.8%、「大人が二人以上」の世帯員では 12.7%となっている」(引用元

とあり、実質値では、112万円であります。この112万円に満たない所得で生きている人の割合は、16%で、子どもの貧困率は15.7%。その半分の家庭が「ひとり親家庭」となっていることが分かります。6.5人に1人の子どもが相対的な貧困の状態で生活しているということになります。(ネットでは7人に1人と書かれています)

*夫婦のみの世帯だと、貧困率はぐっと下がります(子どもがおらず、夫婦共働きだと、貧困には陥りにくいですよね…。結婚する、というのもまた、貧困対策と言えるのかも…)

✅日本は、絶対的貧困という意味では(まだ)貧困国ではない。

✅けれど、相対的貧困という意味では、日本は貧困状態の人々が多数いる。(その多くが、若者、高齢者、ひとり親家庭となっている)

✅相対的貧困で言えば、日本は世界で第14位くらいの貧困国となる(OECD加盟国(38か国/2023)となると、第8位の貧困国(15.7)となる)

✅こうした貧困状態に陥った時のセーフティーネットが【生活保護】。

*日本で初の救貧法である「恤救規則」は、福祉関連学科の定番のワード。イギリスの「エリザベス救貧法」を見習って作られたとか…。

次は【生活保護】について考えてみたいと思います。

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