◆D'ERLANGER◆LAZZARO◆最強のバンドサウンド!
2007-03-13 19:39:46
17年ぶりとあって、僕の期待は最大級にまで膨れ上がっていた。この期待は、アルバムの出来が相当良くないとあだとなり、がっかりしてしまう危険性を秘めた「劇薬」となる。
期待していて、裏切られてしまう場合。期待していて、それなりに満足する場合。期待していないで、感動する場合。期待していないで、そこそこの満足を得る場合。期待していないで、なんてこともなく消え去る場合。どの場合も、「恍惚」にはならない。期待していて、それ以上の感動があった場合。これこそ、「恍惚の絶頂」だろう。
今回のアルバムは、ものすごい期待をしていながら、さらにそれを上回る圧倒感のある最強の一枚となっていた。かつてのデランジェの雰囲気を保ちつつも、それぞれのメンバーのキャリアや経験がうまく昇華されている。「かつての否定」ではなく、「弁証法的相克(デランジェっぽくて、デランジェっぽくなくて、yesとnoが両方存立していて、しかも全体的にまとまっている状態)」が見事に実現されていた。4人の音がこれまでのキャリアに彩られて、一つの華を咲かせている。
やはり「コンセプト(バンドのイメージの構想)」が最高のアクセントになっている。サウンドや技術的には、これまでメンバーがやってきたバンドの時とそんなに違っていない。サイファのギターは、音色を変えつつも、荒々しいソリッドさのあるプレイだし、哲っちゃんのドラムも、CRAZEの時とそんなに違わない。KYOちゃんの歌も、歌詞を除けば、それほどBUGの時から劇的に変化したわけじゃない。シーラのベースは、相変わらずの安定感と抜群のセンスが活かされつつも、前身バンド(複数)のスタイルを守り続けている。なのに!!!
なのに、サウンド全体は「新しいデランジェのサウンド」になっているのだ。4人のメンバーが集まったというだけでは、これは説明できない。まさに4人の抱くデランジェの「観念」が、全体の道筋を指し示してくれているのだ。「デランジェ」という魔物が、4人のサウンドを一つに見事に纏め上げている、そんなアルバムになっているのだ。メンバーやプレイ以上に重要なものが、デランジェにはあるような気がしてならないのだ。
【全曲紹介】
1. Kain
妖しい教会の鐘の音で、17年ぶりのフルアルバムは幕を開く。突然中世のヨーロッパに迷い込んでしまったかのようなイントロだ。そして、哲のドラムが妖しく始まる。どこか「和太鼓」のような音だ。洋と和が融合していく予感をかもし出している。野武士のデランジェの4人が再びヨーロッパの世界(原点)へと向かっていくことの現れか。そして、Kyoの妖しいささやきとともに、ベートーベンの「交響曲第九番」の最終楽章と哲のパワードラムが共鳴し始める。17年もの歳月を経て再び世に出たデランジェの再生を祝福するかのようなインストロメンタルだ。
2. dummy blue
再びデランジェという世界への扉を開けば、そこはソリッドで攻撃的で冷血で感情的な音の響きが待っていた。しかし、単に冷血ではない。そこには、冷えきりつつもかすかな体温が残る血がたしかに流れていたのだ。そんなことを感じさせるサビの旋律。楽曲のポピュラリティーとサウンドの暴力性を兼ね備えた「新たなデランジェ」の幕開けにまさにうってつけの一曲だ。イントロ・アウトロのギターはもう絶品中の絶品。
3. XXX for YOU
イントロ1の唸るベースは、これぞデランジェスタイル!と言いたくなるほどに絶妙。曲的には、十分にシングル化できるほどの名曲。進化したデランジェを確かに体感できる。Aメロ、Bメロなんて、これまでのファンなら涙モノだろう。これまでの彼らのキャリアが十分に繁栄されている。曲的には、Kyoのソロ時代に一番近いかな。カッコよすぎ。しかも「DARLIN'」って使っているし(笑)。しかし、なんといっても、4人が一つに見事に重なり合って、デランジェという化け物の姿を見事に表現しきっているところがさすが。サスペンスとかの挿入歌になったら・・
4. BABY I WANT YOU
いきなりフィンガースナップで始まるところがビックリ。少年隊の「君だけに」かと思った。しかし、Kyoの妖しい歌が始まると、バシリスクのような退廃的な世界が目の前に広がってくる。ホント、バシリスクに入っていてもおかしくないほど。ただ、やはりちょっとしたブレイクのところなんかで、彼らの経験の強みが出ている。ホントだったら、ここで一休みなんだろうけど、全然休みにならない。。。こういう音の世界は、往年のデランジェファンにはたまらないだろう。Kyoの歌も、より上手く、よりエモーショナルになっているし、より情熱的になっている。最後の「奪われる~」ってところがなんとも妖しい。
5. Divina Commedia
やった!きました。サイファのギターメロディー。泣きのメロディーがたまらない。これは、「デランジェ」の域を超える新たな領域の曲かもしれない。今後、こういう曲を中心にやっていくのかどうか、楽しみなところだ。ギターのメロディーは、限りなく演歌に近いような、それでいてセクシーさがあって、カラオケで歌いたい曲になりました。アニメの主題歌に抜擢されてほしい一曲だ。僕的にはツボにはまっちゃいました。
6. Beauty & Beast
お、このイントロは?・・いや~、この曲もツボにはまります。これこそ、シングルカット第一弾にふさわしい一曲かも。なんていうか、風が吹き荒れる荒野の向かい風の中を進む4人の勢いがヒシヒシと伝わってくる一曲。歌詞は、ちょっと映画チックで面白いかも。次がロメオとジュリエットだし。
7. Romeo & Juliet
ゆったりとしたベースラインが心地よい雰囲気重視の曲。今のデランジェが「勢い」だけじゃないっていうことが分かる一曲。イントロの「チュルル~」がなんともいえないですね。。押すところは押すけど、引くところは引く。まさに「引き」の一曲だ。Aメロの裏で鳴っているキーボードが妖しくて切なくて素晴らしい。曲の展開も結構目まぐるしいので、聴いていて飽きない。かつてのデランジェにはない「大人のテイスト」が盛り込まれていて、彼らの生きた足跡が感じられる。ナチュラルなデランジェサウンドと言っていいのかな。
8. ALONE
本作では、サイファ以外が作った唯一の曲。哲っちゃんの曲。しかし、これまでの哲の作る曲とは雰囲気が全然違う。やっぱりKyoの歌が雰囲気をガラリとかえるのだろう。イントロの喜太郎のようなシンセの音が最高に気持ちよい。サビのメロディはさすが。かっこよくて、シンプルで、残るメロディーになっている。
9. 月光
ワイルドなデランジェ風R&Rと解釈したいところ。デランジェとR&Rってあんまり合いそうにないが、この曲はまさにそんなアンビバレントなロックンロールになっている。サビのキャッチーさと、サウンド全体のうねりと、跳ねる音が「新しいデランジェ」を示しているように思えてならない。この曲では、4人の持ち場が色んなところでチラリと見えて面白いかも。Kyoの野蛮さと繊細さが実によく表現されている。
10. MARIA
最初のギターとドラムの掛け合いが、往年のパートナーシップを感じさせる。それにシーラの絶妙なベースラインが絡み、三つの音が究極のロックハーモニーを産み出す。すごい展開だ。サイファと哲っちゃんとシーラの音が重なることで、三人以上の力がフルに出ている。そして、感情を押し殺したようなKyoの歌が入り込んでくる。感情を押し殺しつつも、それがビンビンに伝わってくるような切ない歌詞がまたさらにデランジェの妖しさとなって迫ってくる。そうだ、デランジェとは「淫らな誘惑」だった。この曲は、ラビアンローズの曲の雰囲気に近いかも。ただあの頃と決定的に違うのは、やっぱり「味」というか「深み」なんだとしみじみ思った。最後のアウトロのキーボードがもう最高のスパイスになっていて、新しいデランジェに花を添えている。
11. NOIR -C'est la vie
僕の解釈だと、MARIAで本編終了!で、11と12は、「予告編」というか、「カーテンコール」というか、「次の嵐の予感を示す予兆」というか、そういう位置づけの二曲。「紫の薔薇よ」っていうところがなんともいえない高揚感を与えてくれる。歌い方はもうあの頃のKyo!!って感じでノスタルジックになってしまう。
12. NOIR -D'amour
キターーーー!! ライブ向け、ライブ専用のファイナルウェポン! シャウトの創始者Kyoのシャウトがもうたっぷりと堪能できる。そう、Kyoは、シャウトの鬼だった。今のヴィジュアル系のシャウトは、Kyoの雄叫びから始まったといっても過言じゃない。アマチュア時代の彼のシャウトはホントやばかった。。で、また、こういう過激な曲でも、シンセの音や、途中のクールダウンポイントを取り入れることで、複雑で聴かせこませようとしている。
13. Abel
フィナーレのファンファーレだ。一曲目のKainと連動しているような・・・ 中世ヨーロッパの香りがプンプンに伝わってくる(マリスミゼルみたい?!)。そう! もともとは中世ヨーロッパから飛び出した無国籍バンドって感じだった。そんなデランジェの妖しい世界の出口ともいえる短いSEだ。このSEを終えて、また再び1に戻ると、なんともいえない爽快感に包まれる。
【総評】
音楽は、言葉で表現するのが最も難しい芸術だと思う。今回の作品は、とりわけ僕自身の主観が大きく入り込んでいるので、特に言葉にするのが難しかった。ただ、できるだけ冷静になっても、我が日本でここまでの雰囲気と技術と世界観と勢いと力強さをすべて表現できるバンドはそうそういないと思う。欧米の世界観に近づきつつも、欧米のロックの単なるモノマネにならず、日本人の魂の表出になっている。1の和太鼓風のドラムもその一つと考えることができるし、5の泣きのメロディーもその一つとして捉えられる。デランジェは、まさに洋と和の微妙なハーモニーの上に成り立つ「新しいバンド」なのだ。それは今も昔も変わらない。彼らの「復活」が本当の意味での復活になるのはこれからだ。今回のアルバムは、デランジェという終わりなき旅の幕開けに過ぎない。さあ、パンドラの箱は開かれた。「希望」という文字はどこにあるのか・・・
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