泉心堂治療院

せんしんどうちりょういん

A先輩とB先輩

2021年01月13日 | Weblog

私が針灸を学んだ大学は、3年次終了時に国家試験を受け、

4年次は有資格者として実習などをこなすというカリキュラムでした。

 

A先輩は私が1年生の時の4年生で、同じ柔道部、同じアパートに住んでいました。

入部早々膝を傷めた私にA先輩は鍼灸治療をしてくれました。

ちなみにそれが私が人生で初めて受けた鍼灸でした。

(そのときのエピソードはホームページ内で紹介しております)

A先輩には膝だけでなく、腰痛、肩のケガから食あたりまで、

本当に色々とお世話になりました。

そして、何よりも治療は気持ちよく、

心地よい刺激で心も体もスッキリできる癒しのひと時でした。

(食あたりの治療についてはまた別の機会にご紹介いたします)

 

ところで、私が針灸を学んだ大学は、京都丹波地方の片田舎にあり、

私もその近くに下宿しておりました。

朝晩の気温差が大きくて濃い霧がよく発生する土地で、

太平洋の海沿いに生まれ育った私にはどうも慣れない気候でした。

そのためか、1年生の秋に私は風邪を引き、

風邪を甘く見ていたこともあってこじらせてしまい、

激しい咳と、会話もできないほどの呼吸困難に悩まされることになってしまいました。

もちろんA先輩も私を心配して暇を見つけては鍼灸治療をしてくれました。

おかげで1カ月ほどかけて徐々に4分の3ほどは改善したように思ったのですが、

どうもあと一歩が治りきらないのです。

 

そんなある日、やはり同じ柔道部の4年生のB先輩が

鍼灸道具を持って訪ねてきてくれました。

ちなみにアパートが別ということもあり、

それまでB先輩の鍼灸は受けたことはありませんでした。

 

B先輩は「中国針」を取り出すと、私の肘のツボに「ブスッ」

おもわず「うっ」と声が出てしまいそうなほどの鈍痛。

そして足のくるぶしの上のツボにも「ブスッ」

かかとに抜けるような強烈な刺激感。

 

他にも「ブスッ」「うっ」「ブスッ」「うっ」と中国針を打たれ、

その針の頭の部分にモグサ(灸)をくっつけ点火。(灸頭鍼という手法)

それまでA先輩の心地よい鍼灸にすっかり慣らされていた私には、

今でも鮮明に思い出せるほど強烈な体験となったのでした。

 

そしてその翌日、なんとびっくりです。

あれだけ悩まされていた呼吸困難がほとんど治まってしまったのです。

いったい何が起こったのだろう⁇という感覚でした。

それから3日後くらいにB先輩は念のためともう一度やってきて同様の治療をし、

それで私の咳と呼吸困難はすっかり治ってしまったのでした。

 

ここで私が述べたいのはB先輩の方がA先輩より優れている、

中国針灸の方が優れているということではありません。

まず、A先輩には日頃からケアをしていただいて絶大な信頼がありました。

あの心地よい鍼灸は今でも忘れることができません。

もしどちらか選ぶならば、私が普段受けたいと思うのはA先輩の鍼灸です。

食あたりになったときも1回で治していただきました(後日投稿します)。

 

B先輩の中国針灸は確かに効きました。

停滞した状況を打破する起爆剤となって

病気の根っこを引っこ抜いたという感じです。

しかし、よほど困った状態でなければ遠慮したいかな~

というほど強烈でした。

 

A先輩の鍼灸を「柔」とするならB先輩のは「剛」といえるかもしれません。

結局は「柔」と「剛」、それぞれを状況に応じて使い分けられるのが

最も好ましいのかもしれません。

 

ちなみにA先輩、B先輩ともに現在開業され成功されております。

もちろん絶えず研究・工夫をされているので、

今もこの記事のままの内容というわけではありません。

 

学生時代の懐かしい思い出のひとつでした。