タダさんは以前コルカタの警察に捕まったことがあると言った。
タダさんは友達の若いインド人のグループが対立するグループとの小競り合いの場面にたまたま居合わせ、そこに警察が来ると何も聞かずに二つのグループを検挙しようとしたので、タダさんは訳を話しに行こうとしたが、警察はタダさんのことも何も聞かずに検挙したそうである。
そのままタダさんとその二つのグループを合わせた10人は警察署の留置場に一週間いさせられた。
トイレしかない留置場であり、トイレットペーパーも水道もない、ベッドやモーフなども何もない留置場であった。
朝警官が来ると留置場から出され、一列に並ばされ、何も聞かれずに端から物でも殴るように人間の尊厳など考えずに理由なく殴られたそうである。
しかし一人30ルピーをその警官に払えば殴られないことをグループの一人がタダさんに教え、タダさんが全員のお金を払うと殴られずに済んだとのことだった。
夕方には違う警官が現れ、同じことをし、またタダさんは全員分のお金を払い続けた。
対立していたグループは厳しい留置場生活のなかですぐに仲良くなったとのことだったが、インドの刑務所では自殺する者が多いと言われることが良く分かるほど、そこは厳しい生活を余儀なくされていたと言っていた。
タダさんの友達のスペイン人が留置場には差し入れをしてくれ、数日後にタダさんが日本人だと分かると警察の態度も少し変わったらしい。
一度だけ殴られないためのお金をインド人も払ってくれたそうである。
タダさんはマザーハウスに迷惑が掛かると思い、自分がマザーのボランティアだとは警察に言わなかったらしい、それを聞いてタダさんらしいと私は思った。
裁判があり、結局何もしていないタダさんが2000ルピーを払い、留置場をみな出ることが出来たとのことだった。
日本では考えられない話しであるが、インドでは良くあることであろう。
先週の金曜日に家に来た、何度もコルカタでボランティアをしているイギリス人のクリスもデリーで拘束された日本人とスイス人の男性のうち、スイス人は留置場で亡くなったと言っていた。
インド人ですら警官は怖いと言う人がいるのである。
何年も前のことだが私も瀕死の患者をカーリーガートにタクシーで運ぶ途中、ドライバーがUターン禁止のところをUターンしてしまい、前からバイクに乗って来た非番の警察に呼び留められ、ドライバーは顔面をぼこぼこに殴られ、鼻から血が噴き出した。
その警官は物凄い険相で私たち{一緒にいたのはアイルランド人の子とノルウェー人の女性}にも「お前たちは何をしている」と随分長い間怒鳴り散らしていた。
こうした問題をあげれば次から次へと今まで聞いて来た。
しかしもちろんすべてのインド人の警官が悪いとは言えないことも言っておかなくてはならないだろう。
私はステーションワークをしている時、何度となく優しい警官に助けられたこともあったからである。