Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『アリス殺し』小林泰三のミステリ

2014-04-06 07:24:36 | ミステリ小説
大学院生の栗栖川亜理(くりすがわあり)は最近不思議の国に迷い込んだ夢ばかり見る。
ハンプティ・ダンプティが墜落死した夢を見たあと大学に行ってみると、キャンパスの屋上から玉子という綽名の博士研究員が墜落死を遂げていた。
不思議な国の人物とこっちの世界の人物はリンクしているらしい。そして不思議の国の死と現実の死は繋がっているようだ。
三月兎と頭のおかしい帽子屋が犯人さがしに乗り出した。思わぬ展開からアリスは不思議の国で最重要容疑者にされてしまう。
同じ夢を見ていると分かった同学年の井森とともにアリスは事件を調べ始めるが、今度はグリフォンが生牡蠣を喉に詰まらせて
窒息死した。現実でも牡蠣を食べた教授が急死する。アリスは事件を解決して自分の身を守ることが出来るだろうか・・・。

そんな物語ですが、世界感に合わせてほとんど会話だけで物語が進行します。三月兎、頭のおかしい帽子屋、メアリーアン、ドードー、公爵婦人
彼らが入り乱れて会話をします。でも、最後まで読んで気がつきます。みんな作者の計算です。伏線も巧妙に隠されています。
ですから最後に真相が明らかになった時に「!?」となってしまうのです。背景は特殊な世界を設けていますが中身は本格ミステリです。
読み終わった後すっかり作者に騙されていたことに満足します。
蛇足ですが、コバヤシタイゾウだと思っていたらコバヤシヤスミだそうです。これもミスリードなんでしょうか??