母の無実を証明して欲しい。娘の依頼で16年前の事件を調べる、灰色の脳細胞私立探偵エルキュール・ポアロの物語です。夫を毒殺した妻。誰もが彼女の有罪を
疑いません。関係者は五人。一人ひとりに会って話を聞いて、さらに記憶を掘り起こし詳しいことを手紙で教えて欲しいとそれぞれに頼んでいくポアロ。
人が人を評するその主観は感情によって左右される。そこらへんを上手く使ったメイン・プロットですが五人の話も微妙にすれ違っていくところがこのストーリーの
面白いところです。ケンカの絶えない夫婦。ひとつの事実です。しかし、それらをひっくるめてすべてを一方向に持っていくのは誤りの元であり危険である。
ポアロはそう感じたのでしょう。丹念な聞き取り調査で辿り着いた事件の真相には意外な真実が隠されていた。
ラストの意外性をクリスティらしい物語で読ませます。用意周到の伏線とミスリード。分かりやすいといえばそうですが
でも、もやもやした感じを見せながら最後まで引っ張っていく手腕はさすがです。クリスティの作品のなかでは好きな一冊です。