この本を読む前にマーガレット・ミラーの「狙った獣」を読みました。「狙った獣」は1956年のエドガー賞を受賞した作品です。
1956年にこんな内容のサスペンスを書いていたことに驚きますが井上夢人のこの本も同じネタを使ったものでした。偶然とはいえ同じネタの本を続けて読んだことになります。
1956年にこんな内容のサスペンスを書いていたことに驚きますが井上夢人のこの本も同じネタを使ったものでした。偶然とはいえ同じネタの本を続けて読んだことになります。
内容的に気をつけないと直ぐにネタバレになる可能性が高いのですが、サラリと内容を紹介します。ある女性が夫の出張中にこれまで利用したことのない町の図書館を訪れますと、昨日に利用登録を
済ませ貸し出しを受けていますと告げられます。名前も住所も全く同じで女性は心当たりもなくどういうことなのか混乱します。こういったプロローグからストーリーが始まりますが、いきなりの謎で
読みやすい文章もあって物語にのめり込んでいきます。住んでいるマンションの自分の部屋で顔を切り刻まれた女性の死体が見つかり、気付けば向かいの部屋で目覚めた女性。殺された女性はいったい
誰なのか、夫はどこに消えたのか。 各人の名前で出来事をファイルに記した文章を読者は読んでいくことになります。このへんの構成は見事ですが云わばこの部分がこのストーリーの肝ですから
工夫を凝らすのは当たり前という所でしょう。 このネタ事態は一時期流行ったもので、海外では有名な本や映画などもあります。
でもこの本は井上夢人らしい味のミステリに仕上がっていると思います。 マーガレット・ミラーも1956年には書いていたというその着想のすばらしさ。
ちょっと調べてみれば当時の日本では鮎川哲也の「黒いトランク」や「りら荘事件」が出ています。でもこういった着目のものはありませんから、マーガレット・ミラーのセンスの良さといったものが
感じ取れます。 ここで小さなトリビアを、このマーガレット・ミラーの旦那さんは「さむけ」などで有名なハードボイルド作家のロス・マクドナルドです。
え、知っていました?それは残念でした。
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