Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『凪の司祭』石持浅海のミステリ

2016-02-07 11:49:43 | ミステリ小説
                                         


世界中でテロ事件が起きています。宗教と戦争は人類の歴史です。でもこの日本は世界が認める安全な国です。

しかし、果たしてそうでしょうか?この日本は世界がまだ経験したことのないテロを経験しています。そうです地下鉄サリン事件です。

この本は平和ボケした日本に、近未来に警鐘を鳴らす物語と云えます。近い将来はどんな日本になっているのでしょうか。人口は減り続け若者がいなくなって世界の声に屈し難民を受け入れているのでしょうか。

利益誘導型の無秩序な都市開発、コンクリートジャングルの都市特有の自然災害。平和な日本であっても課題は山積みです。

コーヒー専門店ペーパー・ムーンのアルバイト店員篠崎百代は明確な意思を持って汐留にある大型ショッピングモールに向かいます。

そこは恋人が不慮の死を遂げた現場でもあります。原因はゲリラ豪雨でした。百代は自らが神となって世の中を正す行動を決意しました。

兵器は自然界に存在する毒です。この百代にペーパー・ムーンの常連客五人が五人委員会と称していろいろとサゼッションします。

しかし、行動を起こすのはあくまで百代ひとりです。五人は何も関与せずいろんな話を聞かせたに過ぎないという立場です。

いつもどうりの日常を過ごす五人のはずが一人だけ百代の出発を見送りに来ません。普段と違う行動はとらないと決めていたはずなのに店に顔を出さない一人。

不審を覚えた四人が携帯に電話しますが携帯にも出ません。気になってアパートに向かいますが、彼は死体となっていました。

この異常事態に計画の中止を伝えるために四人は百代を追って汐留に向かいます。

しかし、百代は計画の実行を始めていました。猛毒を使った大量殺戮。百代の行動をいろんな視点から息もつかせぬ展開で読ませます。


石持浅海らしいスキのない緻密さで構成されたストーリーですが、正義感溢れる人や物語はハッピーエンドでなければならないって人には不快感しか残らない内容かも知れません。

動機がイマイチとかあり得ない話と片付けるのは簡単ですが作者の意図も読み取って欲しいと思います。

一気読み必至のこの本、こういう社会性のある物語も良いと思います。



                                   

最新の画像もっと見る

コメントを投稿