第一部はアレックスが帰宅途中の路上で拉致され誘拐されるところから始ります。男の容赦ない暴力でアレックスは小さな檻に閉じ込められます。少女と呼ばれるその檻は
立つことも座ることも出来ない拷問用の檻で関節が固まり筋肉が萎縮してじきに発狂するといわれる檻です。アレックスと謎の男。そして目撃者の証言から警察が誘拐事件として捜査を始めます。誘拐捜査は
時間との戦であり時間が経つごとに被害者の生存の可能性がなくなります。上司と衝突しながらも必死に捜査するカミーユ警部ですが、その彼も妻を誘拐され殺害された過去を持っています。長い療養の末職場に復帰した警部ですが誘拐事件はやらないと上司の部長とさんざんケンカをしますがいつしか捜査に熱中していきます。しかし、いくら調べても誘拐された女の身元が分かりません。どこからも問い合わせが無いことに警部は不審を覚えます。
「この女はうさんくさい」そう警部は呟きます。そして一人の男が浮かび上がりその男がいる今は使われていない工場に行きますが、予審判事と捜査方針で揉めていると帰ってきた男が警察に気付き車で逃走します。
そして追跡する警察車両に追いつめられた男は橋から下の道路に飛び降り死亡します。ケータイに遺された監禁されている女の写真。衰弱がひどく危険な様子ですが場所がわかりません。
焦る捜査陣に偶然発見された監禁場所に急行してみるとそこには壊れた檻があり女の姿は消えていました。ここまでが第一部です。そして第二部はアレックスが次々と殺人を起こす様子が描かれます。様々な人物をカツラをかぶり
カラーコンタクトと偽名で近づき殺害します。理由は不明です。アレックスは何も語らず読者にはその理由がまるでわかりません。警察もやがてアレックスの犯行に気付きます。しかし、犯罪歴が無いため目撃者や現場に
指紋などがあってもアレックスの正体が掴めません。いくら情報を集めてもアレックスと言う名前しか分からず身元不明の女です。そのアレックスという名前さえ疑われます。このアレックスの行動と警察の追跡がメインの
第二部もとてもテンポ良く書かれていて、登場人物などもそれぞれの個性がとても上手く描かれていてストーリーを盛り上げます。アレックスが次々と殺人を重ねるその理由とは、何故繋がりの無い人物たちを殺害するのか。
第三部ではその理由が明らかになってきます。そしてこれまでの読者が感じていたアレックスへの想像などがまるでひっくり返されます。意外性充分の展開です。そして警察と容疑者との対決が待っています。一筋縄では
いかない容疑者との心理戦がこの物語のクライマックスとして用意されています。確証はありません。でもカミーユ警部は追いつめます。そしてある事柄に容疑者は気付きます。周到な罠に嵌まっていたことに。
最後にはアレックスに哀れさを感じますが、警部たちのエピソードなどが良い余韻となって物語を締めくくっています。なかなか良く出来たミステリと思います。展開のスピーディさと構成の妙がこの物語を成功に導いていると思います。
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