はい、しげのですが?

匿名でないと困ることは書かない。最近は体調不良で投稿めっきり減ったが。

日本で最大の障害者差別の加害当事者は、行政自身だ、ということ。

2016年01月01日 20時44分26秒 | 障害者権利条約Vs障害福祉

「(仮称)大田区における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領(素案)」パブリックコメント提出を前に。


大田区が、今年4月に施行される障害者差別解消法についての対応要領素案を発表し、パブリックコメントを募集している。正直、その内容にあきれ返って怒ってはいるのだが、意見提出は4日までにしようと考えている。

この対応要領はあまりにお粗末なものだが、そもそもまず、なぜこのようなものが出てくるのか、という考察を加えることが必要と考えた。そもそも行政による障害者差別とはどのようなものか、という点については、おそらく、大田区行政以外の多くの人と僕との間で大きな認識の差があると思う。それは、この数年間大田区自立支援協議会に参加して痛感してきたことでもある。

まず問われているのは、障害者差別解消法の前提としてある、障害者権利条約の理解に関わることだ。

明確に確認しよう。
■そもそも日本の障害福祉行政は、障害者差別の行政体系である。

何を過激なことを、というかもしれない。だが、障害者権利条約が言っていることはそういうことだ

「現状の障害福祉行政のどこが障害者差別なのか?」気が付いていないのだろうか?日本の行政は、「障害に基づく差別は正当」という前提で成り立っているのだ。

1 日本では、障害者はその機能障害に応じて権利は自然に制限されると考えられている。

2 障害の原因は本人の内部にあるので、機能障害に起因する不利益は自己責任であり、次いで家族責任、が基本の考えで、本人や家族が決定的に窮する場合に限って、初めて行政が一定の救済を担うとしている。

3 行政の支援は福祉の全体上限内で確保した資源を選択・限定的に配分する性格を持つ。

4 支援の供給は公的負担として常に抑制され、現場裁量や非公開性で担保される場合も多い。したがって利用すればするほど差別と選別が染み込み、権利保障と正反対な意識が醸成される効果を持つ。

 

条約は障害の社会モデル=権利モデルに根差し、権利の保障に基づく障害者政策への政策転換を要請している。「他の者との平等を基礎」とすれば、日本の障害福祉行政の現状はまさに、条約違反の「国による差別」状況なのだ。

だから、日本は条約に署名しながら、批准を国内の当事者団体から反対され続けていたのだ。「条約を批准するなら、その下位に位置する障害福祉の法体系を、条約に適合するよう変更せよ」と。残念ながら、国によるその作業は未完だ。しかし、現在日本における最大の障害者差別は、国による差別であることを確認しておく。

僕が大田区自立支援協議会の中で繰り返し障害者権利条約と障害の社会モデルの理解の重要性を強調してきたのも、この文脈にみんなに気付いてほしかったからだ。

さて、国が作成した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」では、「第3 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項」の中で、「行政機関等においては、その事務・事業の公共性に鑑み、障害者差別の解消に率先して取り組む主体として、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供が法的義務とされており、国の行政機関の長及び独立行政法人等は、当該機関の職員による取組を確実なものとするため、対応要領を定めることとされている。行政機関等における差別禁止を確実なものとするためには、差別禁止に係る具体的取組と併せて、相談窓口の明確化、職員の研修・啓発の機会の確保等を徹底することが重要であり、対応要領においてこの旨を明記するものとする。」とある。

これは、人権を確立していく過程で最も肝要な「責務の保持者の研修」について述べているとみてよい。
かつて人権が抑圧されていた国々において、人権抑圧の被害者だった人々が、加害者であった人々とともに政権に参加しながら人権を確立していく過程で、最も重要だったのが、加害者である警察や軍隊を含む公務員を「責務の保持者」として再教育することであった。それは国連の権利基盤型アプローチの中で定式化された。国連障害者権利条約もまた、その流れの中にあるのだ。

まず、区の職員は基本的な加害認識を持つべきだ。
1 仕事を通して障害者の権利を制限してきた、という加害認識を持つ。
2 権利保障ベースで障害者を見たとき、現状でその権利はいまだ保障されていない、という認識を持つ。

だが、上の2点を職員に承認させるような研修は可能なのだろうか?この2点に最も抵抗するのが区の上級職自身ではないのか、という疑問は残る。

その上で今、ここでの合理的配慮を考えなければならない。
国の法律は従来のままであり、権利水準と供給水準には格差があり、自治体の力には限界がある。自治体の現状の力に即した合理的配慮がどこにあるのか、それを明らかにするのはかなりの困難が付きまとうはずだ。しかし、その困難を回避しようとするとき、「差別は合理的配慮を提供しないことを含む」という権利条約の規定が刺さるものだと覚悟していただきたい。


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