やれこら やれこら 昨日も今日も

自分だけはと力んでみても,膝はガクガク,息ハアハア。会話は「アレ,ソレ」そして「やれこら」。鍛えるべきは皮肉とジョーク。

「地縁,血縁,地域の目」   やれこら やれこら

2014-09-15 08:16:58 | 今日のやれこら
「他店オープンチラシをお持ちください」
「他店価格に徹底対抗」 
大手家電量販店の新聞折り込みです。
「他店」とは,この度新築オープンした大手の家電量販店の事に間違いありません。
イヤー,今に始まったことではありませんが,同業者の集客,価格競争は大変です。

昔,テレビが普及し始めたころの話です。
まだ二世代前,明治生まれが主導権を握っていた時代です。
テレビは,給料の三,四ヵ月分は十分する贅沢品です,時代の最先端です。
町内で,テレビを買った家は直ぐに分りました。
屋根にアンテナが設置されるからです。
当時,アンテナは「テレビを買いましたよ」と町内に宣言する「しるし」です。
当地のような田舎では,その「しるし」で地域に“さざ波”が起きる事がありました。
“さざ波”は,今では「バッカみたい」「うっそー」の類の話です。
「あそこがこうたら,うちもこうちゃる(あのお宅が買ったら,我が家も買う)」
こどもには良く分かりませんでしたが,地域に暗黙の「順番」が有ったのです。
アンテナの「しるし」で,その順番を狂わすと,
「贅沢するんじゃの~」,「銭があるんじゃのー,どこから出したんなあー」
 “ひそひそ話,陰口”の種になります。
我が家が「しるし」を掲げたのは,町内では早い方でしたが,これには訳が有ります。
親戚に電気屋が有ったからです。
「しるし」が遅くなると,「親戚に電気屋が有るのに」と言われそうだからです。
そして「どこの店で買うか」です。
テレビの普及し始めは,町内の電気店は我が家の親戚だけでした。
当然,町内でテレビを買う人は,おおかたその店で買いました。
ですが,数年後町内にもう一店電気屋さんができました。
どちらの電気店で買ったかはすぐ分かります。
使うアンテナのメーカーが違います。
微妙に形と色が違うのです。
そうすると家の屋根に掲げる「しるし」が違う事になります。
「電気屋のしんりいが近くにおるのにのー」
  (電気屋の親戚の家が近くに有るのにその店で買わず,別の店で買った)
「ありゃー,あっちでこうた,なにゅうーかんぎゃとるんにゃー」
  (あの家はあちらの店で買った,何を考えてだろう)
“ひそひそ話,陰口”の種が増えます。
オーバーですが,「しるし」は戦国武将の旗印のようなものだったのです。

我が家近くに,八百屋さんが二店ありました。
その頃家事を受け持っていた祖母は,どちらの店を利用するかにも気を遣っていました。
偏ってはいけません,バランスをとりながらの買い物です。
一方で買い物した時は,たとえ回り道でももう一方の店の前は通りません。

客が大っぴらに店を選べる時代ではなかったのです。
地縁,血縁,地域の目で店を選ぶ時代だったのです。

時代が下り,今,我が家が次に買いたい家電は冷蔵庫です。
親戚は電気屋を後継者難で,随分前にやめました。
先日,開店記念のブランドタオルを貰った「他店」か「折り込み広告の店」か,それとも「ネット通販」か,なにはともあれ選べます。
ですが,肝心なのは「お金がたまったら」です。 
「地縁,血縁,地域の目」うっとうしかったような,懐かしいような。
            やれこら やれこら