上野城は滋賀県甲賀市甲賀町油日にあります。甲賀郡中惣の城館で城主は上野主善正と伝わりますが城歴等は不詳とされます。崩落により失われた部分と、近年のバイパス道路(県道4号線)の敷設工事によって削られた部分が一部にありましたがましたが、ほとんどの城郭遺構が良い状態で残存していました。甲賀の城の多くが単郭方形の場合が多いようですが、上野城は周囲にいくつもの曲輪が設けられた規模の大きな城郭でした。興味深い遺構が多数見られましたので2回に分けて紹介したいと思います。
今回の参考資料は (1)「甲賀市史 第七巻 甲賀の城」甲賀市史編さん委員会編2010 と (2)「図解 近畿の城郭 Ⅰ」城郭談話会編2014 です。両資料には縄張図が掲載されていますが、遺構の表現にかなりの差異が見られました。
上野城 南から延びる尾根の先端部それぞれに城が築かれている
上野城は五反田川、青野川、杣川が三方を流れる防御性の高い尾根の先端部に築かれていました。旧地図を見ると県道4号線のバイパスが敷設されるまでは城域の東側には道がなかったようです。西側には甲賀の雄族・和田氏の城郭群がありました。※和田城は→こちら
上野城 見学路入口は ア 往時の城道もこの付近と思われる 今回は イから
今回の見学では、アの入口にに気付かなかったので、路肩スペースに駐車が出来たイからエィヤッ!と主郭まで登りましが アからの見学路をたどるのがお勧めです。資料によるとⅣ郭の西側は崩落で原形が失われているようでした。Ⅴ郭の東側はバイパス道路工事の際に削られましたが、工事前に発掘調査が行われて原形が確認されいるそうです。
上野城 帯曲輪地形を横切る虎口状地形① 南から
4号線バイパスのイからⅠ郭(主郭)に向けて登ると東側斜面に帯曲輪状の平場が何段も伸びていました。その帯曲輪状の地形を横切るように虎口状の掘り込み①がありました。写真左側の山側に溝地形が延びていますので排水口なのかもしれませんね。
上野城 Ⅰ郭 虎口A 東下から 見どころです!
上野城のⅠ郭の土塁は幅広で高さも高いので、そこに設けられた虎口の規模も大きくて見どころでした。写真の虎口に立つ人物と比較するとその大きさがわかりますね。
上野城 Ⅰ郭の虎口A 奥に土塁b 南から
Ⅰ郭虎口Aには、北側から帯曲輪を通って西に折れて入ります。
上野城 Ⅰ郭内部と土塁 ここも見どころ!
Ⅰ郭の土塁は高いところでは5~6mほどあり圧巻でした。人物が小さく見えますね。曲輪内の削平が丁寧に行われていましたが、ここに建物があったかどうかは地表面からでは確認できませんでした。
上野城 Ⅰ郭 北西隅の土塁開口部 郭内から
Ⅰ郭北西部の土塁には一段下がった幅の広い開口部がありました。開口部にはさらに掘り込まれた虎口状の地形がありましたが、外側は急な地形で、資料(1)では虎口かどうか不明となっていました。
上野城 Ⅰ郭北西隅の開口部B 外側の北側下のⅢ郭から見上げる
Ⅰ郭の北西隅の開口部の外側にはⅠ郭西辺から続く堀Cと土塁Fがあった可能性があるのではないかと想像しましたが、現況は削り取られたような地形となっていました。山仕事などによる後世の改変があったかもしれないと思いましたが、どうでしょう。
上野城 Ⅰ郭 土塁b 北東隅付近 南から 分厚く幅も広い
Ⅰ郭の土塁bは分厚く、高いものでした。北東隅は土塁bが幅広の平場となっていました。
上野城 Ⅰ郭 南-西土塁a 南辺 北から
Ⅰ郭は、四周を分厚く高い土塁で囲まれていますが、写真のあたりが最高所でした。Ⅰ郭の南側は尾根続きですので、土塁を高くして備えていたのではないでしょうか。
上野城 Ⅰ郭南辺の切岸と堀C 東から ここも見どころ!
Ⅰ郭は土塁だけだけでなく、急峻な切岸と三方を囲む堀で厳重に守られていました。守りの要の見事な切岸は見どころの一つでした。
上野城 Ⅰ郭北東下のⅧ郭 東から 左手にⅠ郭切岸
往時の城道はⅧ郭のⅠ郭沿いを巻く堀を通って虎口Aに向ったようで、Ⅷ郭は切岸を削りだすために設けられたのではないかと思いました。
上野城は見事な土塁と切岸に守られた主郭が見どころで、楽しく見学出来良かったです。さらに城域北側に展開する曲輪群も見どころが多かったです。 ※北側の城域については、その2 にて。