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浅谷城 三河 その2 遺構の残りが良く絵図と対比してたっぷり楽しめる城郭

2022-09-23 | 歴史

浅谷(あざかい)城は愛知県豊田市山谷(やまがい)町にあります。城主は梁瀬道悦と伝わりますが築城の年代等については不明とされ足助七城の一つに数えられています。その1では 広島市立中央図書館蔵の浅野文庫 諸国古城之図「三河加茂 浅谷」の絵図を参照しながら現況の城郭遺構を見学しました。その2でも絵図を参照しながら現代の縄張図とも比較しながら見学したいと思います。今回の参考資料も (1)「足助の中世城館」足助町教育委員会2001 と (2)「愛知県中世城館跡調査報告2」愛知県教育委員会1994 などです。なお、広島市立中央図書館蔵の浅野文庫 諸国古城之図「三河加茂 浅谷」の絵図は 浅谷城その1でご覧ください。


浅谷城 南西に延びる尾根の先端部を堀切Aで断ち切って城を構築している
 浅谷城は堀切AだけでなくⅠ郭(主郭)から派生する各尾根に堀切を入れ厳重な守りの態勢となっていました。南側は100mを超す絶壁で侵入は考えにくい地形ですが北側は道が通りますので竪堀Fで回り込みを防いでいるようでした。


浅谷城 Ⅳ郭から堀切Bを見上げる  北西から案内板が立つ
 Ⅳ郭は見学路(大手道?)が通る広い曲輪でした。見上げるとⅠ郭と北東側の尾根上の曲輪③を区切る堀切Bが設けられていました。地元の区民の方によって随所に遺構の表示板が建てられていましたがここにも「堀切」の案内板がありました。


浅谷城 堀切B 尾根上には小平場⑥と右手に小さい堀⑦が設けられて主郭を守る 北から
 北東尾根からの侵入に対する備えは厳重で、大きな堀切Aと堀切Bと⑦が設けられていました。


浅谷城 堀切⑦   北から 手前に左に小平場⑥   奥に堀切B 北西から
 小平場⑥を挟んで堀切⑦と堀切Bが配置され、いわゆる二重堀切となっていました。
 

浅谷城 Ⅰ郭の 城山八幡宮の石碑  二つの案内板、石仏などが有る
 石碑は「武士の守護神である八幡宮が明治になって地元の村人によって立てられ、往時の戦いでの落命者を弔って毎年祭典を行ってきた」と案内板にありました。


浅谷城 案内板から図を抜粋 
 浅谷城のⅠ郭には二つの案内板が地元区民の方々によって立てられていました。その一つにはデフォルメされた遺構の図が描かれていました。諸国古城之図にも描かれている白山神社は現存していました。万昌院は戦いで落命した人々の菩提を弔って、城主梁瀬氏が建立したと伝わります。諸国古城之図に描かれた白山神社の南に隣接して「寺」の文字があり建物が描かれていますので、当初の万昌院はここに在ったのかもしれないと想像しましたがどうでしょう。


浅谷城 Ⅴ郭 北から 奥上にⅡ郭  左手の坂虎口⑨
 Ⅴ郭へは、図3の折れを伴う大手道⑧で登った可能性がありそうでした。Ⅴ郭からⅡ郭へは⑨の坂虎口で登ったのではないかと思いました。Ⅴ郭は小屋などの建物が建てられそうな広さでした。


浅谷城 Ⅴ郭の井戸地形の土坑a 倒木跡? 奥上にⅡ郭  北から
 Ⅴ郭のⅡ郭寄りに、いかにも井戸跡のような土坑a がありました。各所の山城で見られる根こそぎ倒木の跡かもしれませんが、地表からの観察では井戸状土坑でした。


浅谷城 北西尾根の曲輪③ 東側と北側を土塁が囲む 西から
 大きな堀切Aで断ち切られた城域東端部を守るように、図3の土塁を備えた曲輪③がありました。土塁で囲まれた曲輪の平場の面積は狭いですが、堀切Aを渡ってくる敵を狙撃する兵を籠める役割があったのではないでしょうか。曲輪③の南側は切れ落ちた断崖なので、土塁等は不要だったのではないでしょうか。


浅谷城 平場② 西端部の土坑a 北東から
 曲輪③ の北側下の平場②には井戸地形の土坑がありました。付近の地形などから考えると、井戸があったと考えてもよさそうでした。水は見えませんでした。


浅谷城 平場① 東から
 堀切Aが北西に下る部分には平場①と②がありました。堀切A方向に向けての土塁等の防御施設は在りませんでしたが、堀切Aを渡って侵入する敵に備え兵を配置する曲輪だったのかもしれませんね。


浅谷城 Ⅰ郭西下の平場⑪ 北から  奥にⅢ郭
 見学路(大手道)はⅤ郭の北下で分岐して、Ⅰ郭の西側下の曲輪群に向います。図3で平場⑪とした部分は、いわゆる「削平が甘い」地形で、輪郭が不鮮明な3段程の帯曲輪状地形でした。


浅谷城 Ⅲ郭北部の炭焼窯⑩
 Ⅲ郭の北部分には炭焼窯⑩の跡がありました。石積などのない小型の炭焼窯で、城郭遺構ではなく後世のものと思われます。
 浅谷城その2 では主郭と北側、東側の遺構を見学してきました。その3では西側の興味深い遺構を見学したいと思います。  ※浅谷城その1は→こちら