上野城は滋賀県甲賀市甲賀町油日にあります。その１では方形単郭の甲賀特有の主郭を見学しましたが、その２では北側に付随して広がる興味深い曲輪群を見学したいと思います。
今回の参考資料も (1)｢甲賀市史 第七巻 甲賀の城」甲賀市史編さん委員会編2010 と (2)「図解 近畿の城郭 Ⅰ」城郭談話会編2014 です。 ※上野城 その１は→こちら
上野城 その２ではⅠ郭（主郭）の北側の曲輪群を見学 ※図1：上野城と周辺城址はその1をご覧ください
資料(2)によると、図２ Ⅱ郭の⑬には小社が祀られいたようで、図示されていました。国土地理院の地図にも鳥居マークがあります。資料(1)には描かれていませんでしたので、案外最近になって遷座されたのかもしれません。昔のままに見える遺構も時間の経過で変化している可能性も感じました。
上野城 Ⅱ郭 南から 「油日駅を守る会」の立てた道標がある
Ⅱ郭は尾根を削り残し、天端を削平して土塁状の曲輪としたようで、長さが100m近くありました。土塁上には「油日駅を守る会」によって立てられた道標がありました。このⅡ郭によって上野城の東側に比べ、西側の守りは厳重になっていました。西隣は和田氏の領域ですが、上野氏が和田氏に脅威を感じていたあらわれでしょうか。 ★なお、近くの草津線・油日駅は、住民らが駅を寂れさせまいと「油日駅を守る会」を発足し、住民が駅員を務める珍しい駅で、上野城の道標も駅の利用客を増やす活動の一環だと思われます。
上野城 Ⅱ郭 地点⑬付近の瓦と水盤
資料(2)の縄張図に描かれた小社の跡でしょうか、瓦が折り重なり石の水盤らしきものが地点⑬付近に残されていました。資料(2)の縄張図には参道も表示されていました。
上野城 広大なⅢ郭 南から 左手にⅡ郭 見どころです！
尾根を削り取って削平したと思われるⅢ郭は、丁寧に削平され城内で最も広い曲輪でした。Ⅲ郭の西辺にはⅡ郭が土塁状に連なり見ごたえ十分でした。ここまで広く平坦だと多くの山城では後世の耕作地利用が考えられますが、地表面からは確認できませんでした。
上野城 Ⅲ郭南辺の虎口状地形② 北下から 奥にⅠ郭
Ⅲ郭からⅠ郭を取り巻く堀に登る虎口状の地形②がありました。Ⅰ郭下を取り巻く堀Cと土塁ＦがⅠ郭開口部Ｂ下付近で途切れているため、現状では虎口地形②の役割が明確ではありませんが、往時に堀Cと土塁Ｆが途切れずにⅠ郭を取り巻いていたとすれば、虎口状地形②は「虎口」だったと思われ、Ⅲ郭からⅧ郭経由でⅠ郭の虎口に至る城道が想定できそうでした。
上野城 Ⅲ郭からⅠ郭を見上げる なかなかカッコイイ眺め
左手に虎口状地形②、中央上奥にⅠ郭土塁と開口部Ｂが見えて良い眺めですが、左側の地形は後世の改変の可能性があるかもしれません。
上野城 Ⅴ郭からⅢ郭への虎口G 北下から
Ⅴ郭はⅢ郭よりも一段低い曲輪で、Ⅲ郭との間は坂になっていました。この付近の地形はとても複雑で、Gは単なる通路のようでもあるので、虎口と呼んで良いのか少し疑問が残りました。なお、資料(1)によればⅤ郭の東側は4号線バイパスで削られる前に発掘調査が行われ、大小の柱穴や陶磁器類、石臼などの生活遺物が検出されたそうで、往時は住居が建っていたようです。そうしてみるとⅠ郭やⅢ郭なども掘ってみると、色々出てきそうですね。
上野城 方形土塁で囲まれたDと堀⑤ 北西から
虎口地形Ｇの東側には方形の土塁で囲まれた平場Ｄが在りました。土塁の南西辺の中央部には開口部が設けられていて、掘り込まれた堀地形⑤とつながっていました。堀⑤の両端はふさがっていましたが、その役割は不明でした。堀⑤の南西辺の外側には土塁④もあり、複雑な地形でしたが、その用途も？？でした。資料(1)では平場Dは武者だまりの可能性を記していました。
上野城 Ⅲ郭とⅦ郭の間の土塁⑪ 東から
写真ではわかり難いですがⅢ郭とⅦ郭の間には削り残しと思われる仕切土塁⑪が設けられていました。城道はこの土塁を回り込んでⅢ郭に入る様になっていたと思われます。
上野城 Ⅱ郭北端部の堀切⑧ 堀底道はⅣ郭へ通じる切通道でもある 南東から
堀切⑧はⅡ郭の北端部を断ち切る堀切ですがⅣ郭への通路としても使われたようでした。
上野城 城域北端の小曲輪 Ⅳ郭 曲輪の西側は崩落があり原形の確認ができない
Ⅳ郭の西側は切岸の崩落があったようで、原形は確認できないとされます。北と東には土塁が設けられていました。資料(1)では、Ⅱ郭で遮られた西側の川筋を監視する役割の曲輪の可能性があると評価していました。
上野城は、甲賀郡中惣の城館としては規模が大きくて興味深い多数の遺構があり、往時の役割を想像しながら楽しく見学出来て良かったです。