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油日城 近江 遺構がよく残るが後世の道路で城の向きが紛らわしい甲賀の城郭

2024-03-22 | 歴史

油日城は滋賀県甲賀市甲賀町油日にあります。有名な油日神社が北東約300mにあり、この地域の中心的な城郭だったとされ、北側に杣川、南側に心教田川が流れる尾根上に築かれています。付近には多数の城郭が点在し、西からの侵入に対して油日城を守る体制がとられているようにみえました。今回の参考資料は「甲賀市史 第七巻 甲賀の城」甲賀市史編さん委員会編2010 などです。

油日城 近江から伊賀へ抜ける主要な街道の結節点にある
 近江から伊賀へ抜ける道は後世のJR草津線や車の道の開発によって旧街道は目立たなくなりましたが、今もほぼ残されているようでした。

油日城 後世の道路街道イ 旧街道ア   杣川の旧河道ウ などを考慮して遺構を見る
 油日城は城址の西側を通る道路イを抑える役割があったように一見思われますが、明治期の地図などで確認すると道路イは後世に敷設された道路で、古い街道はアのようです。今も痕跡が残る杣川の旧流路ウなども考慮すると、油日城の城域や向かっていた方向、役割などは今見る姿とは異なっていた可能性があるかもしれません。

油日城 大手道は北側にあったとされるが現況でははっきりしない
 資料によると主要進入路は油日神社のある北側からとされます。道Aと道Bを想定してみましたが、いずれも明確な進入路として確認はできませんでした。

油日城 虎口aへの道A 西から
 道Aは西側が大きく削られている為、原形が失われていますので城道ではない可能性もありそうでした。

油日城 道⑬は削られて途中消滅している
 西側崖下の建物用地造成のため大きく削られ道は途中で断絶していました。ヒョットすると虎口aへの道だったのかもしれないと思いましたがどうでしょう。

油日城 虎口a 北西から
 虎口への道は西側から上り一度折れて虎口に入るようになっていました。小規模な虎口に見えますので、いわゆる搦手かもしれません。

油日城 虎口b 南東外側 Ⅱ郭から
 虎口bはⅡ郭から入ります。写真のように土塁の掘り込みは浅いもので、虎口の守りは馬出し状のⅡ郭に委ねられていたのではないかと想像しました。

油日城 土塁の開口部⑭ 南西内側から
 油日城のⅠ郭土塁の北東辺と北西辺には深さは異なりますが複数の開口部がありました。開口部⑭は一番深い開口部ですが、外側は切岸となっていますので、資料では「曲輪内の排水機能があったのだろうか」と疑問
を呈していました。高低差を見ると、開口部が多少埋まっているとしたも排水はむずかしそうに思いました。

油日城 Ⅰ郭土塁 北西辺の土塁開口部⑮
 伊賀の城郭では同様の開口部を「石落し」としていますが、甲賀でも開口部は同様の機能かもしれませんね。※土塁に開口部がある伊賀の城郭 壬生野城は→こちら

油日城 Ⅰ郭土塁① 北西から 開口部はない
 Ⅰ郭の南西辺の土塁①には開口部が見当たりませんでした。開口部が「石落し」だとすると、西側と北側の防御が意識されていたように感じました。

油日城 Ⅱ郭南東片の地形⑥ 崩落?土採り?
 Ⅱ郭の地形⑥の部分は崩落または土採りによって欠落しているように見え、往時は土塁が巡って馬出し状のⅡ郭を守っていたのではないかと想像しました。

油日城 Ⅲ郭 東から 右に土塁⑪
 Ⅲ郭は北東の支尾根を削った二段の平場になっていました。上段の平場の北辺には土塁が設けられていました。下段の先端部には削り残しの低い土塁地形が見られました。この状況からも油日城が西と北向きへの備えが厳重だったことが伺えるのではないでしょうか。

油日城 南尾根の堀切⑦ 南西から 
 Ⅱ郭の南側には、南尾根を断ち切る堀切⑦が設けられていました。道Bもここを通って西側へ抜けていました。尾根を断ち切る堀切としては、浅い印象でした。

油日城 堀切・土壇⑧ 南から 珍しい形の遺構
 Ⅰ郭の南西辺の切岸を造り出す目的だと思える珍しい堀切が設けられていました。削り残しの部分はⅠ郭への侵入を防ぐ土塁の役割があったかもしれません。同様の遺構⑨が堀切⑦の西側にもありました

油日城 ため池⑩ 西から 右上にⅣ郭
 Ⅳ郭北辺下にため池があり、今も水を湛えていました。城郭遺構のため池か後世の農業用かは確認できませんでした。Ⅲ郭とⅣ郭の間にありますので往時のため池と考えても良さそうでしたがどうでしょう。なおⅣ郭はⅢ郭に似た二段の削平地ですが、土塁等の守りの設備はみあたりませんでした。
 
油日城はこの地区の中心的な城郭として、伊賀に見られる「石落し」を備えた西及び北からの侵入に備えた城郭だった可能性を感じながらの見学となりました。後世の道路や杣川の流路変更などの要素もあり、あれこれ想像を膨らませながら楽しく見学できて良かったです。