宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

ネクタイ

2010年08月30日 11時55分13秒 | 徒然
けふのBGM

「ANAK(息子)」 杉田二郎








ちょうど先週の今日、宝島で店番をしていたときのこと。

そろそろ看板にする時刻に、ある若者がやってきた。

「お、長男の親友のHくんだ」


彼は、それ以前に、チュー太郎にガールフレンドと一緒に寄ってくれて、
「おいちゃん、判りますか?悠太の友達のHです」と自己紹介をしてくれた。

長男と一番うまあいの友達の存在は、細君から聞くとはなしに聞いていて、その名前くらいは記憶があった。

なので、「ああこの子が」と思ったものだ。


でなきゃ、不出来な父親故、息子の友達の顔なんて全然覚えてない・・・というよりも、
ほとんど触れ合った記憶すらないのだから、判る筈もない。


そんな体たらくだから、そのチュー太郎の一件がなければ、当然、彼の顔を判別出来よう筈もなかったところだが、お陰で直ぐに思い出すことが出来た。




聞けば、これから結婚の申し込みに行くと言う。
そして、何か美味い焼酎はないかと言うのである。

「あのときの?」と訊けば、「そうです」と言う。


そうか、それで寄ってくれたのか、嬉しいじゃないか。




これはと思う焼酎を勧めて、それに決めた後、

「おいちゃん、ネクタイの締め方わかりますか?」と。



フムフム、着慣れないスーツの下はノーネクタイだわい。
今時のことだから、その格好で行くのかと勝手に解釈してたのだが、どうやらネクタイを持参しているらしい。

やおらポケットからネクタイを出しながら、
「親に教えてもらおうと思うとったんやけど、時間になっても帰ってこんかったもんで」と。


「ほうか、そりゃネクタイの締め方くらいは判るけんど、人様のを締めたことはないけん、うまいこといくかどうかわからんぞ」




やはり、対面では難しい。
大剣を回す方向がピンとこないのである。



なので致し方なく、彼の背後に回って自分がするのと同じ向きでしてみることにする。


すると、自然に彼の体を抱きかかえる姿勢になる。

その途端に、「生命」と「息吹」を感じたのである。

一瞬、我が子を抱きかかえている錯覚に陥る。



言葉を交わすだけでは感じなかったであろう「何か」が伝わってきたのである。




それと同時に、なんとも形容しがたい不思議な感情が湧いてきた。

どう云えばいいのか、愛おしいというのか、何というのか。




「頑張れよ!」
と心から応援したくなる、そんな心持ちとでも云おうか。




ほとんど、我が子に抱く感情だったのだろうと思う。


その事実に、我がことながら吃驚したり、また嬉しかったり。


「俺も取り敢えず人の親だったんや」と思った次第・・・






後日、その焼酎を名指しで(どうやらネットで検索したページをプリントアウトしてきたみたい)求めるお客さんが来られた。


実はその焼酎、最近やっと特約店として仕入れることの出来た代物(しろもの)で、彼が初めてのお客さんだった。









「宝島に行けばあると聞いてきた」と、そのお客さん。



気になったので訊いてみた。

すると、「いただきものだが気に入ったという、知人の焼酎好きの方から薦められた」とのこと。


Hくん、気に入ってもらって良かったのぅ・・・





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2 コメント

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今日の事! (りんママ)
2010-09-11 15:33:47
その男の子?が焼酎持って行った先のお母さんと出会ったんです。
なんと、チューさんの息子さんと同級生の娘さんがいて、その娘のところへ結婚の挨拶に行くためにチィーさんちで焼酎を求めた訳です。
お母さんは私だけど繋がっているマイミクさんで、私を通してチューさんのブログに飛んで行ったみたいです。
とにかく、幸せな事っていいですね♪
こちらまで幸せ気分になります。
ではまた~♪
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遅くなりました (チュー)
2010-10-08 17:12:24

レスをしたつもりが、出来てなかったみたい。

日常ではそうそう体験することのない、ある感動を覚えて、心が震えたのであります・・・




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