宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

これでおしまい

2006-05-04 06:53:39 | 本のこと



その昔、私が大学生だった頃、「ポパイ」という雑誌が世に出た。
これまでにない斬新なそのスタイルは、少なからず私に影響を与えた。
「気分はもう夏!」などというコピーを引っ提げて、5月くらいに夏の特集を組んだりするところが好きだった。

それを追随するように出たのが「ホットドッグ・プレス」だった。
こちらの方がややカタログ色が強かったかも知れない。

いや、今日はそれらの雑誌について語りたいのではない。
その「ホットドッグ」に連載されていたコラムのひとつが、もうその題名すらも覚えてないが、妙に楽しかった。
(調べてみた。多分、それは東京デート漂流。)
ウィットに溢れたその文体は、いつも明るい笑いを提供してくれたことを覚えている。

そのコラムニストが永倉万治だった。
ちょっと変わった名前なもので、新井満と並んで、なんとなく覚えている作家の一人である。

図書館であてもなく背表紙を眺めていて、その懐かしい名前を発見。
複数あるその蔵書の中から選んだのがこの本である。

どうやら改名(1998年)して、後年は、「永倉萬治」と名乗っていたようだ。
あとがきと、プロフィールを読んで、氏が既にこの世に存在しないことを知った。
2000年に脳幹出血で亡くなったらしい。(52歳)

そんな訳で、氏の最後の本となったのがこれである。

六つの短編から成るそれは、中年のペーソス溢れる一冊に仕上がっている。
先の、軽妙洒脱なコラムしか知らない私には、意外ではあったが、その底に流れる「どうにかなるさ」的な天性の明るさは変わってないように思える。

特に最後の「人蕩(たら)し」は、多分今後の私の生き方に影響を与えたと思う。
主人公の「長太郎」という響きも近しいものを感じる(笑)し、クリフォード・ブラウンが出てくるところなんざ、実に共鳴出来る。
「そうか、商売も、人生もそういうことさあね。」
湯船に浸かりながら何度頷いたことか。

20数年ぶりに再開した永倉万治は萬治となって進化していた。
惜しむらくは、この先その進化を追跡出来ないことだが、済んだことは仕方がない。



この20数年のブランクを、今後は、彼が残した本に接することで埋めていきたいと思う。
さて、あと2年で私も彼が逝った歳になる。
私はちゃんと進化しているのだろうか?・・・・・



「これでおしまい」

集英社

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2 コメント

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Unknown (じゃじゃ)
2006-05-04 11:17:33
タイトルからの続きで

「それらの雑誌について語りたい・・・」となっていたのに

記事を開いたら「語りたいのではない。」



文字の切れるところで含みが変わるんですね(笑)
返信する
ほんとだ (チュー太郎)
2006-05-04 11:40:18
ちょうどのところで切れてますね。



でも、その前にある「いや」がその先を匂わせてるでしょ
返信する

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