宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

ビア・ボーイ その4

2006-07-28 18:18:22 | 本のこと
さて、いよいよ本題に入る。

痛快なトレンディードラマを観ているような気にさせる筋立てについ引き込まれる。
おまけに、フィクションとはいえ、その内容はかなり事実に即した節があり、興味深く読み進むことが出来る。

そして、その中のセンテンスに、考えさせられるもの、なるほどと頷かされるもの、元気をくれるもの等が潜んでいて、私には自己啓発本といっても良い本である。


では、実際にどんなセンテンスに赤線を引いたのだろう。
おさらいしてみる。

そもそも酒の会社に入るつもりなんてなかった。宣伝の仕事がしたかっただけなのだ。

左遷を言い渡された主人公が冒頭の部分でこぼす本音である。
これが、最後には、

酒の光と影を伝える。それが俺の仕事です。

と、かくも見事に180度のコペ転的転回を見せるのである。
そして、最後にそうなるべく、主人公が揉まれて成長してゆく中に読者は光を見いだす仕組みになっていると感じる。


サウナにまつわるくだりで、正に同感といったことを述べる。

慣れてくると、サウナというのは実は水風呂の気持ちよさだ、とわかってきた。
今まで犯した悪行やつまらない悩みなど、きれいさっぱり流されていく。自分が新品になっていく気がする。


そうなのだ。
よく、「汗かいてもビール飲んだら元の木阿弥じゃん」という人がいるが、痩せようと思ってそうしている訳ではない。
体に溜まったアクを出しているだけだ。
それが、また気持ちいいのである。


問屋のセールスと一緒に酒屋を回る「置きまわり」で主人公が聞かされる話。

「家庭用でやってる分はよかったけど、三、四軒スナックに入れるようになってから、業務店のタイアップ条件で、おたくの会社ともめたんじゃ。なんせ、ずうっと家庭用でやってきた酒屋さんじゃ。業務用に乗り出すのは難しいわ。」

これが、ボーダーラインの話である。
やはり、大きな商いを目指すなら業務用ははずせない。
我が国の酒消費における7割が業務用で、家庭内消費は3割程度と言われている。
そして、それに関わる酒屋の数はちょうどその逆くらいになるのではないだろうか。
すなわち、3割の市場を7割の酒屋が分け合って、7割は3割の業務卸が牛耳っているといった格好なのである。

どう考えても後者の方が効率がいい。
百も承知だが、なかなか参入出来ない、といったことを改めてだめ押しされている感じなのである。


かと思えば、こんな辛辣な表現も。

●田舎によくいる、自分はクリエイティブだと錯覚してる野郎
●広告づくりの苦労も知らぬ、クリエイター気取りの田舎者に、そんなこと言われたくもない。
●田舎に居がちなクリエイター気取りの、ただのコンプレックス野郎


よくもこれだけと思えるほど立て続けにこうした表現が出てくる。
過去によっぽど厭な酒屋に神経を逆撫でされたのだろう。

しかし、なんだか身につまされる気がするのは・・・


だが、そう思った相手は、実は本物だったというくだりなのだが、

店内を見て、さらに驚いたのは、宣伝部時代につくったポスターが切り張りされていたことだ。ロゴは商品説明用に使われ、グラス付きキャンペーンのポスターはグラス写真だけカットされ、普通のポスターに変身させられている。こんな風にもポスターは使えるのか・・・
中略
無造作を装いつつ、センス良く酒が並べられ、商品一つひとつに手書きの説明カードが添えられていた。


この辺りの努力を怠るようになって幾星霜
抜本的な見直しが・・・




いつまでたってもブラインドタッチを覚えようとしない私が、文章をうつすなんて作業は、論外の時間と気力を要する。

てなわけで、今日は電池切れ。


またまた続きます・・・




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