なにげな言葉

なにげない言葉を あなたに伝えたい
迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章13節 「サイン」

2022-02-05 | 迷宮・緑柱玉の世界
奴隷とは
<肉の試練を目的とした契約・主従関係を金銭で手に入れる契約を含む>

契約書を盗み見ただけでも罪と感じたのに
奴隷契約書などという契約書まで作っていた先生

訳の分からないショックを受けました。

ネットから少しでも知識を手に入れたいと思いました。
リンク先を注意深く見るうち、先生が望む姿が見えてきました。
ネットの中の告白する女性は、男の欲望を、縋る様に受け入れています。
男の欲望のはけ口が女。
まるで、道具です。
ネットの女の告白は、どれも同じに聞こえ、知性なく、馬鹿げています。
どの女の言葉も、取ってつけたようで、本心には聞こええません。
言わされている?
本当に望んでそんなことが言える?
私が知らないだけ?
口先だけなら何でも言える
もしも本心で縋るように言えているなら、精神がおかしいはず。
男も男でただの欲望だけで攻めている気がする。
自分の欲望を満たすだけの道具なら、女を愛する必要はないはず
見ているのは、遊び?
恋愛ではないの?
セックスの延長?
快感?
そうしないと興奮しない?
意味が分からない。

先生は、
私に、そのような女に成れというのでしょうか?
それとも、
私は、そのような女に見えているのでしょうか?
馬鹿にされているようで腹立たしく思えてきました。
女は、道具?
怒りにも似たものがこみ上げてきました。
怒りに似ていたのではなく、怒りです。
初めてわいてきた感情です。
この怒りの出先と収拾できる場所を探したくて、ネットの情報をむさぼるように読みました。
真実か虚偽かはわかりません。
女の告白は多いですが、主という男の声は少ないのです。
主人は、どう思っているのだろう?
そこが知りたいのです。

本当の主が求めるものを女は、受け入れているのでしょうか?
されるがままされて、ありがとうございますと言っているのだろうか?
何故、ありがとうと言える?
馬鹿じゃない?
だから、女は道具と断定されるんだよ!!
心の中で、反発心だけが大きくなっていました。

しかしその内、僅かですが、反発心が生まれてきました。
所詮、男が主人になり、指示したことに答えれば男は、満足するじゃないの?
男なんて・・・・・

私の知らないことが多すぎたということです。
それでも、
私なりの理解が出来ました。

ネットの中の情報をむさぼすうちに、好きな姿と嫌いな姿が、はっきりとあるということです。
好きなものに対しては、心が騒ぎました。
嫌と思うものは、はっきりと軽蔑していました。
なぜそこまではっきりと、区別できるのか分かりませんでした。

その時、書斎のドアが開き、先生が入ってきました。

「あっ」

「ごめんなさい。」

「何をしている?」

近寄ってきた先生に私は、言い訳どころか、返事すら出来ませんでした。
神を裏切った行為には、報いがあります。
神は、私に、その行為の罪深さを知れと言ったのです。
私が、イブなら、蛇の誘惑に、直ぐに負けてしまう。
裏切り者です。
他人のプライバシーを必要以上にのぞき見たのです。
犯罪者です。
現場を見られた先生に対しても、言い逃れできません。

「ごめんなさい。」

謝る言葉しかありませんでした。

「何を謝る? 書類、見たのか?」 

先生は、怒る風でもなく、ゆっくりとした口調で質問してきました。

「何を?」

としらを切って、はぐらかそうと思いましたが、聞き返すことも出来ず、

「ごめんなさい」

とだけ言ったのです。
「ごめんなさい」には、多くの意味が込められていました。
でもそれを説明するだけの、余裕はありません。

「そこにサインして欲しい」

座っている私のサイドに立ち、突然、先生は言いました。
急に罪の意識で、小刻みに、足が震え始めました。
書類を見ていた事
勝手に書斎に入った事
先生の机を使っている事
私は、まるで椅子に縛り付けられたように、動くことが出来ませんでした。
しばらくは体が動かせませんでした。

先生も聞き返しませんでした。
息もできないほどの沈黙の時間
時が永遠にこのままだったらどうしようと思ったぐらいです。

机の上の書類の再び目をやり見ていました。
先生も何も言いませんでした。
長い長い時間。
全て消えてしまえば・・・・・
そんな魔法みたいなことは起こらない。

現実は、変わらない。
私の中にある不安、疑問…消すことはできない。

今聞いたら、怒られる
分かっているけれど、私の中の何かが動きました
ゆっくり、先生のほうを向き、
「奴隷って何ですか?」
恐怖?
緊張?
不安?
怒り?
声が震え、手はじっとり、汗ばんでいました。

先生は、穏やかな口調で、話し始めた。

「僕が雛美礼を欲しいから、奴隷になって欲しいと思った。」

あまりにも、短い言葉に、私は、理解できませんでした。

「私が欲しい、奴隷になれ?」

「奴隷って・・・人を何だと思っているんですか?」

私は、恐怖から怒りに感情が変わりました。
語気荒く聞きました。

「雛美礼だよ。雛美礼が僕のものになってくれたら良いなぁと思ってね。
 つきあいたいと言っただろ?嘘じゃない。
 ただ付き合うよりももっと深い関係を望んでいるわけだ。
 それを、きれいな言葉で表したいが、見つからなかった。
 何とか形にして表すと奴隷という言葉が浮かんだ。
 難しく考えなくていいよ。」

「適当な言葉じゃないですよ。私が、何も知らないと思って、言っていませんか?」

むっとして聞き返した。

「奴隷って、マゾ奴隷の事でしょ?調べました。
 肉の試練を目的とした契約や主従関係を金銭で手に入れる契約って、書いてありました。
 一昨日からのことは、私を試していたんですね。
 そして私が合格したんですか?
 それでお金を払うから、奴隷になりなさいということなんでしょ?
 私にアルバイト代を払うって言いましたよね。
 アルバイトではなく、私の肉体をお金で買うって事ですか?
 お金払って、体を自由にしたいの?
 私の体を買って自由にしたいだけなら、私の体だけでいいってことですね。
 泣いた姿や痛がる姿見たいんでしょ!?
 先生は、そういうのが好きなんでしょ!?」

一瞬先生の表情に険しさが見えました。
言い方が良くなかったと少し後悔しました。
次に先生が言う言葉が、怖くて仕方ありませんでした。
どんな言葉で罵倒されても、今回ばかりは、引くわけにはいきません。
先生は口を開きました。
目を閉じ、身が縮む思いで聴きました。

「よくそこまで調べたね。
 そうだよ。
 君と付き合いたいって気持ちに間違いは無いよ。
 雛美礼のこと好きだ。
 好きだが好きという付き合い以上を望んだ。
 でもそれを、直ぐにはできないだろ?
 僕を信じて任せて欲しいという所から始めたい。
 互いに信じていたら、不安や疑いはないだろ?
 その関係を考えたら、主従関係が一番しっくりくるというわけだよ
 わかるかな
 僕のマゾ奴隷になって欲しいのさ、
 僕は、より深い関係を求めている。
 雛美礼がそれを受け入れてくれるかが知りたくて、試した。
 部屋を散らかしていた事もそうだ。
 間違いなく、雛美礼は僕の望みの女になるって分かった。
 でも恋愛から初めていくには、時間がかかりすぎる
 だから、契約
 僕の言う望みを受けてくれるなら、それなりのお返しはしないといけないだろ。
 それが、条件だよ。
 恋愛は嫌でも金が欲しいといわれれば、それでいい。 
 肉体を期限付きで貸してくれればいい。
 期限は、2年間。強制ではない。
 君の意思で、サインして欲しい。」

気が抜けてしまうほど、穏やかに話してくれたのです。
売り言葉に買い言葉というのはないのでしょうか?
私だけが、感情的になっている。
強引でも、傲慢でもなく、私が決めれば良いと言ったのです。
恋愛より信頼できる関係
今の私には、摩訶不思議な世界観です

私は、即座に「契約書」のサインを断らなかった。
理解できないから、サインしないというのは、逃げるように感じました。
ここまでの内情を知った私が、先生の生徒として学生生活が出来るとは思えませんでした。
それに、私の中にも、私利私欲があったからです。
恋愛でなくても、金銭でつながっていることも可能だったのです。
男の言うままに答えたら喜ぶんじゃない?という男を小馬鹿にする態度です
長い時間をかけ、考えた方が良かったのかもしれないですが
私は、サインすることにしてしまいました。

意地になった部分もあります。
「肉体だけ提供してくれればいい。」
私を馬鹿にしています。
私でなくてもいいじゃない?女ならだれでもいいんじゃない?
私は、その言葉に反発しました。
お金を払えば、なんでも手に入ると思っていることが悔しかったのです。
それなら、最初から付き合いたいなどと口にする必要が無い。
契約してお金を払うといえばいいのです。
パパを探している友人たちと同じように割り切ればよかったのです。
私も割り切ればいい。
恋愛感情抜きで、肉体を提供する事で、大金が手に入ると思えばいいのです。

もう一つ断らなかった理由。
それは、誰にも言わない。
昨日は、経験したことも無いような快感を経験しました。
体の内部から湧き上がる快感に肉体と精神が溶けどす様な感覚を味わいました。
今までのセックスで逝くという経験が、子供だましみたいに感じたからです。
肉体と精神が高揚すると理解できない世界があるのだと知りました。

「僕は何時でもそれを君にあげる」

と先生は、言い切ったのです。
肉体を提供したって、嫌なことばかりじゃないのです。
あの快感をもう一度経験してみたいと思う気持ちもありました。

「先生のおっしゃった約束は守っていただきます。
 其れと、私は、私であるという事を忘れません。奴隷とは呼ばないでください。」

そう付け加え、私は、署名欄に大下雛美礼と名前を書き、母印を押しました。

私はサインしたことで、契約金額のことを聞こうとした時、
「僕は、月40万で君を買ったことになるね。よろしく。」

とても冷ややかな微笑を浮かべていました。
先ほどまでの話し方よりも冷淡に聞こえたのは、気のせいじゃないと思います。
私は、凍りついたように動けなくなりました。
全身の血が、引いていくのが分かりました。
体は重くその場に立っているのがやっとでした。
聞き間違いじゃないのです。

「買った」と先生は、はっきり言いました。
そういっている顔は声のトーン裏腹に、とてもうれしそうな笑顔でした。
そして、さっき盗み見た契約書の数字よりも高い金額を言ったのです。
私は全身の血の気が引いていくのが分かりました。
私は、後悔という言葉よりも、完敗だと思いました。
その微笑には、とても深い意味を持っていることが理解できました。

私は、言葉の表面で受け入れただけです。
私が、反発して、受け入れることも、計算のうちだったのかもしれません。
本当のところは、分かりません。

私は、本当に、馬鹿で無知です。
私の浅はかな考えや知識など、先生の足元にも及ばないことを、痛感しました。
理解できたと思ったこと自体が間違いでした。
先生が見た、私の肉体と醜態など、私の一部ですが、私の浅はかな考えや反発心、全てを見透かされていたのです。
わずかな反抗心、意地など、何の役にも立たない。
それさえ、先生にとっては、承知の上だったと言うことです。
全てを受け止めるという言葉は、本当に全てなんだと知りました。
もう、後戻りできない。
サインしてしまった。
ここで逃げ出しでも契約書がなくなるわけではないのです。
この先にどんな道が続いているのか、想像もできませんでした。

「この契約には、クーリングオフはないからね。」


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