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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章6節「魔物の目覚め」

2019-10-10 | 迷宮・緑柱玉の世界
雛美礼を自宅に送っていくことにした。

本当は、帰したくは、なかった。

今直ぐ、抱きしめて、押し倒すことだって可能だろう。

だが、それをしてしまえば、この瞬間、すべてが終わりかねない。

一夜の相手を探しているのではない。

今、この瞬間を大切にしたいと考えた。

もどかしいが、そんな時間も楽しめる確信が出てきていた。
雛美礼の心が、僕のほうを向くまで、焦らない。
もう、手の届かないところにいる訳ではない。
直ぐ傍で私のほうをじっと見てくれているのだから、どこに、焦る必要があるだろう。

頭の中で、あれこれ考えた。
そんな時、
雛美礼は続けてくれると言った。
私の心を見透かしているのか?
私を喜ばせようとしているのか?
いずれにしても、その一言に、心から安堵した。

なぜだか分からないが、雛美礼と話すと、私の心が騒ぐ。
寄り添っていたい心と、激しく波打つ心。
それは、昨年のあの時からそうだったのかもしれない。
彼女の言葉すべてが、私の心をくすぐる。
あの喋り方か?
あの声か?
はっきりとは分からない。
私は雛美礼と会話の中に、喜びを共有できる何かを感じ惹かれたのだ。
あの時も、私は、雛美礼の声を聞き惹かれたが、彼女が何を話したか、それは覚えていない。

そうなのだ!

何時もの私なら、相手の話を聞き漏らすことなどない。
なぜか、雛美礼に関しては、おかしいのだ。
そんな自分が、許せない。
それは、雛美礼のせいでもあると決め込んでいた。
雛美礼の何かが、私の心を騒がせるのだ。

今日話してはっきりしたことがある。
雛美礼の、困る顔を見ると、私は心が躍った。
衝撃のように、私の心と脳を刺激したのだ。
頭の芯が痺れるような、感覚を覚えた。
その感覚に、酔いしれてしまいそうだった。

今日の部屋の散らかり様は尋常ではなかったはずだ。
雛美礼にとっては、見たくなかっただろう。触りたくなかっただろう。
だが、
私は、見せたかった。
どうしても、触って欲しかったのだ。
ずっと雛美礼が手にしている姿を、想像していた。
雛美礼を知ってから、日々道具を探し廻った。
手にしては雛美礼の様子を想像する。
手にして手に触れて欲しいと想像する。
探し物、買い物がこれほど楽しいと思ったことはなかった。
仕事帰りのひと時・・・・
休日の過ごし方となっていた・・・・
最高の時間の過ごし方だった。

私の精神は、尋常ではなくなっているようだろう。
現実と妄想の間を行き来している間に、境界線がぼやけてきている。
そのうえ、
雛美礼に対して、教師ではなくなっている。
雛美礼は、教え子ではなく、一人の女性となってしまっている。
そこが最大の問題でもある。
もう此の所ずっと雛美礼を性の対象として見続けている。
危険だと分かっていながら、止められない。
妄想でとどめなければ、いくら何でも危険すぎるとわかってはいる。

だが・・・・

後ろめたさを抱いた思いの中
不意に見せた彼女の涙は、なんと美しかったことか・・
しかも、
雛美礼は、声を出して、私にすがって泣いた。
私の心を蕩けさせてしまうのではないかと思う怖さ・・・
私の求めるものを、彼女は私にあたえてくれるのではないだろうか?
確信めいたという心が沸いていた
もう誰であろうと、私の心を止めることができはしない。

戸惑いの顔
悲しむ顔
反抗的な顔
泣き顔
怒りの表情
悔し涙・・・
全てが、私に向けられる。

思いだけは、どんどん大きくなるばかりだ。

その夜またしても、一睡もしないまま朝を迎えてしまった。
雛美礼を思う瞬間
私の中でふつふつと湧き上がるもの
抑えようもない・・・
彼女の触れたものに、手をやる
私の妄想が一人歩きする。


それにしても今日聞いた、初体験の話が気になった
幼い雛美礼を私は知らない。
中学一年といえば、子供が少女へと変化するとき、雛美礼の成長は、早かったのだろうか?
幼さが残っていたのだろうか?
あの話の中の教師は、雛美礼に何を求めたのだろう?
誰でもよかったのだろうか?
雛美礼だからそうなったのだろうか?
幼児性愛者だったのだろうか?
疑問は、どんどん沸いてくる。
あの教師が、変わり始めた雛美礼に女を見たなら、私とおなじだ
きっと、雛美礼に漂うものを感じ取り、惹かれたのだろう。
中学一年の雛美礼の肉体の成長がどうだったのだろう。
想像できない。
しかし、
今の雛美礼から想像するなら、男を惹きつける何かがあっても、不思議ではない。
雛美礼にとってそれは、意図したものではないだろうが
男にとっては、たまらない部分を持っているはずだ
い美礼は、男が怖いといいながらも、まっすぐに見つめるように話す。
見つめ合う事で、心を晒しているのだろう。
その素直な姿勢に惹かれるだろう

ハスキーな声で、少し鼻にかかった話し声
仕草も優しく甘えてくるようだ。
勘違いしてしまうのも無理ない。

「お前が悪いんだ・・」

となるのも、分らなくもない。
男のわがままを受け入れてくれると誤解してしまうところがある。
今までどれだけの男が、雛美礼とかかわったのだろう
ハッキリしていることがある
私は、過去の男ではないということだ。
雛美礼の過去・・・気になる
興味があるが、聞くことは許されない
男たちは、雛美礼をどこまで分かっていたのだろう。
きっと彼らは、雛美礼を知ることなく抱いたのだろう。

雛美礼の、「いい思い出じゃないから・・」といった言葉にこそ、男の態度が見える。
雛美礼に対して優しさを見せることなく、捨て台詞のような言葉を投げつけたのだ。

何故、
もっと大切にしないのだ
何故、
労わってあげないのだ。
なぜだ・・・・

どうしようもないことだが、過去の男に腹が立つ。
雛美礼にしてみたら、哀れである。
もっと早く、
もっと早く
雛美礼と知り合い、雛美礼の最初の男になりたかった。
雛美礼を愛したかった。
届かない時間がもどかしい。

if・・・・

中学生の雛美礼が、私をまっすぐ見つめ
私が雛美礼に恋をしたならもっと大切にしている
私の全てで愛してあげるだろう
手を差し伸べ、エスコートできる事に心躍るのではないだろう

雛美礼を抱くとき、幼い体と心に、喜びを味あわせてあげたい。
小さな体で、破瓜の傷みに耐える時、
私にしがみつき泣く姿を全身で包み込んであげただろう。
痛みが治まるまで、抱き寄せているだろう。
時を戻してでも、その場に居たかった。
雛美礼の最初の経験を幸せな思い出に変えてあげたい。
切に願う事だ。
痛かっただろう。

破瓜の出血を、したのではないだろうか?
苦痛だっただろうか?
抱きしめてあげたい。
苦痛で、どんな表情を見せたのだろう?
どんな声を出すのだろう・・・
雛美礼の姿を想像しながら、どうして、私ではなかったのかと悔しくなる。
不可能を可能にする力が手に入るなら、時をさかのぼり、雛美礼に出会いたいと思った。

其の時、
私の鼻腔に血の香りが漂った。
記憶の中の血の香が、充満した。
舌の先に、鉄の味の記憶が甦った。
雛美礼の破瓜の血を思った瞬間、僕の血が沸騰するように沸きあがってきた。
吐く息までもが熱く感じるようになっていた。
全身に、汗が吹き出した。
私は、雛美礼を大切にしたいと言いながら、全く正反対の心が目覚めてしまった。

私は、最低な男だ。
雛美礼の苦痛を思った瞬間、興奮している。
雛美礼の出血の話をもっと知りたい。
道具を使い出血したという話も聞いた。
どのように使ったというのだ。
出血するほど、何をしたのだ?
出血は、どうだったのだろう?
雛美礼の白い肌に真っ赤な血が、流れたのだろうか?
興奮が止まらない。
この興奮を収める方法があるだろうか?

私は、血に飢えた、吸血鬼のように雛美礼の血を求め始めていた。
鼻孔に残る血の香り
流れる真っ赤な血を舌先で舐めとる記憶
とめどなく欲求の記憶が流れたしてきた

手に入れることの出来ない物への欲求を紛らわせるため、
クローゼットから、長い一本の鞭を取り出した。
力いっぱい、振り下ろす。
ビュン・・・・・
空気を切る音がする。
鳥肌が立つ。
私は、我を忘れ、鞭を振った。
打つ物の無い鞭は、虚しいが、それ以外、私の欲求を鎮火してくれない。
振り下ろす度に、鞭の先が巻きつくであろう雛美礼の身体を想像した。

燃えるもの
遣る瀬無いもの
入り混じった感情
何処かにぶつけるしか無かった。

手が汗ばみ、鞭が手から抜けてゆくまで振り続けた。
全身に汗が流れ、疲労感に包まれていた。
これほど何かに期待したことがあっただろうか?
軽い疲労感と目まいを感じた。

ソファー深く座り、飲みかけだった水割りを口にする。
溶けた氷で薄くなって味気なくなっていた。
今の自分の心の様だ。
飲み干したグラスにブランディーを注ぎ一気に喉の奥に流し込んだ。
喉を焼き、体の奥へと流れ込んで内臓に染み渡る感覚を感じた!

レースのカーテン越しに差し込む朝日
私は眩しく感じながら、私の心の奥に住み着いている魔物が微笑みだした。
久しく感じることのなかった感情
止めることができなかった。

何時の頃からか、私の中に魔界を持っている。
魔界の扉が開いた瞬間、私の周りに血の香りが漂い始めるのだ。
現実と切り離されていた世界が繋がった瞬間に、私の中の現実と妄想の境界線がぼやけ始める。
空想もすべてが現実に変わる。
魔界の扉は、私が私であるために開かれる。
そのとき、
私は悪魔になる。
魔界の住人が、私の本当の姿。

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