なにげな言葉

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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章9節「心」

2021-02-07 | 迷宮・緑柱玉の世界
僕は、床に散乱する道具の中から、鞭を拾い上げ、雛美礼の前で、振り下ろしてみた。
「ビュン」空気を切る音に雛美礼の体が反応し、萎縮した。

「いやぁー」

椅子の中で、膝を抱え込み、小さくなりながら、こちらの気配をうかがっていた。

「雛美礼、お前は、感情をもっと素直に出すべきだと僕は思う。試してみないか?」

雛美礼は、無反応だった。
鞭でたたかれてみるか?と問われ、はいという者など居ないだろう。
違う鞭に持ち替え、雛美礼の膝をばらばらと軽く打ってみる。
音の割には痛くないはずである。
雛美礼の表情にも、変化は見えなかった。
膝、腕、太もも、徐々に打つ場所を変化させてゆくが、雛美礼は拒否の言葉を発しなかった。
雛美礼の反応を窺いながら、少しづつ進めていくことにした。
逃げ出さなかったことを受け入れてと解釈し、先ほどより強めに叩くと、体を反応した。
座っていた椅子から、滑るように落ちた。
 
「痛い!いや~」

初めて、聞く声の大きさだった。叩かれたことが痛いのか、椅子から落ち痛いのか、分からないが、雛美礼が叫び始めた。

「声を出しなさい、もっと、声を出しなさい。泣いてもいいんだよ。
 我慢しない。すべて吐き出しなさい。僕が、雛美礼の感情を、引き出してあげるよ」

僕は、滑り落ちた体に、バラ鞭を打ち込んだ。
初めは、恐怖か我慢かわからないが、口をぎゅっとつぐみ我慢しているようだった。
僕は、休まず鞭を振ってみた。
痛いと叫ぶ声を出すようになった。
次第に拒否の声も発するようになってきた。
そして、雛美礼は叫び、大声で泣いた。
初めて見る雛美礼の叫びと涙は、僕の心を釘付けにしてしまっていた。
 
 
首輪に鎖が付いた時、とてもずっしりしました。
鎖の冷たさを肌に感じながら、この鎖の重さが私の自由を奪うのかと思いました。
先生でなかったなら、生死にかかわる恐怖を感じたと思います。
鎖で繋がれる事など初めてでした。
好奇心と先生との関係に何か期待をしていたのかもしれません。
最初は、何が始まるのかさえ分らず、ただただじっとしていました。
手首を拘束されることが初めてなら、鞭で打たれることも初めてです。
恐怖がなかったといえば嘘です。
それでも、何処かで先生を信じています。
そのためか、音の割りには、痛くないと、何処か、余裕があるのです。
声を出しなさい?
泣いてもいい?
我慢しない?
すべて吐き出す?
感情を、引き出す?
先生が繰り返し言う言葉の意味が分かりませんでした。
先生が何を求めているのか、その真意が全く理解できないのです。

しかし、そんな余裕は、直ぐに吹き飛んでしまいました。
私は驚きと、戸惑いと、恐怖に叫んでいました。
今まで、自分の発するSOSに近い声など耳にすることなどありませんでしたから
自分の声を聞く事で、より大きなパニックになってしまいました。
何がどう進むのかわからない。
先生のしたいとしている事が、理解できない。
分らないが増えるたびに、パニックになってしまうのです。

私が首輪をしてことでこうなったのか?
先生を好きと言ったからこうなったのか?
もう理解できませんでした。
なぜこうなった?
なぜ、やめてくれない?
私にできることは、叫び、暴れる事だけです。
叫びを聞き入れてくれるかどうか、そんな事は、分りません。
助けてくれるのか、それさえ、分りません。
打たれる事が痛いのではありません。
打たれるなんて、屈辱です。
初めてのことで、何がどうなっているのかさえ分からない・・・

理不尽な行為に、心が張り裂けそうなほど、叫びました。
何故、私が・・・・
何のために・・・・
次第に、打たれる場所も体も、熱くなっていました。
叫んでいるせいなのか、打たれているせいなのか体から汗が吹きさすのが分かりました。
意識がトランス状態に近くなっているのが分かりました。

「赤くなってしまったね。」

意識が遠のくかと思った瞬間、先生は、抱きしめ声をかけてきました。
そして、首輪の鎖を外してくれました。
体中から、熱気が溢れていたと思います。
体が汗ばみ、声は枯れ始めていました。
 
打たれた場所は、真っ赤になり、体の内部には、火かついたように熱くなっていたのです。
噴出す汗のように、私の感情は、表へと向かって叫ぼうとしていました。

「いい子だったよ。」

その言葉を聞いたとき、体中の力が抜けてしまいまいました。
鼻の奥が熱くなり涙があふれてきました。

「いやだぁ・・・・・
 ごめんなさい・・・
 ごめんなさい・・・・。」

「謝らなくていいんだよ。
 素敵だったよ」

自分で自分が何を言っているのかよく分らないのですが、怒りにも似た感情が噴出すかと思った瞬間、
自分でも予想していなかった事ですが、感動した時のような涙が、溢れました。
その涙は、怒りではなく、心が熱くなるよう涙でした。
心に何か違うものが芽生えたのです。
 
なぜ、感動するように涙があふれてきたのか、自分で自分が分りませんでした。
打たれることは、理不尽で、縛られ自由を奪われる事が、屈辱です。
何に、なぜ・・・・不思議でした。
そんな私の心の変化を見逃さない先生は、私を縛りたいといい始めました。
喜んで受け入れたわけではありませんが、拒否もしませんでした。

どこかで、先生が望む姿を受け入れてみても良いかな、と思っていたのです。
分らない感動が、どこから来るのか、知りたかったのかもしれません。
もしも、騒いで、とがめられれば、その方が怖いとも思っても居たのは、本当です。
この怖いと言う思いは、それまでのお付き合いの中で幾度となく経験してきました。
怒りが向けられた時の恐怖は、親、教師、友人、できれば、避けていきたいと思ったからかもしれません。
 
真っ赤なロープが、私の体を幾重にも周る間、とても冷静に先生を見ていました。
先ほどまでの涙は、ありませんでした。
泣いていた先ほどの私は、まるで別人のように、先生のすることを見ているのです。
とても不思議な時間です。
 
先生が、何をするのか、興味はありました。
「合成写真、見ただろ? ああいった姿、見たいんだよ。
 誰でもいいってわけじゃないんだ。
 雛美礼の体に縄を巻く、それがしたかった。
 ばかげてると思ってるかもしれないが、とても綺麗に見えるんだよ。
 想像するだけで、僕は興奮したよ。
 今、こうして、雛美礼の体に、縄を締めていくだろ。
 どんどん僕の心は、高揚してくるんだよ。
 どれだけ、僕が喜んでいるかを、見せて上げられないのが残念だよ。
 肉体的興奮は、見れば分るだろ?
 心だよ。もう僕の心のメーターはMAXだろうな。」
 
私には、性的な喜びに繋がっているということは、理解できませんでした。
今の私は、先生が望むことを、同じように感じて受け入れていないという事だけは、はっきりと分かりました。
しかし、
心のどこかで、先生が喜ぶなら、喜ぶ先生を見ていたいと思いました。
肉体的ではなく心が興奮する。
私には理解できない世界でした。
部屋を玩具や写真で散らかした先生の行為や鞭を振っていた先生は、
学校で見たことのない先生です。
優しい言葉使いであっても、学校での先生の言葉ではありません。
縄で、私の体を縛って行く先生の仕草、言葉に、先生の興奮と、喜びを感じ取れました。
今まで付き合ってきた男性にもあった一面かも知れませんが
これ程、言葉や行為を楽しむ付き合いをした男性はいませんでした。
好きだからキスをしてセックスをする。
間違ってはいないと思いますが、楽しむと言う事が含まれているように感じました。
紳士と思っていた先生の真の姿が、少しずつ分かってきました。
本当の姿を見ることで、今までの意味不明な行動が、点から、線へと繋がって行くように感じていたのです。
 
動き回る先生の表情は、とても生き生きとして素敵に見えます。
学校でも見たことの無い顔を、私に向けているのです。
そんな先生を見ていると、
先生にとって、私が居ることが喜びに成ってくれるのならば、それは、嬉しい事です。
このまま、お付き合いしてもいいかぁと思い始めていました。

「恋は盲目、惚れた弱みは、すべてを見失うよ。」

そういってくれた友人の忠告など、私の耳には届いていなかったのです。
一つの感動が、いくつもの理不尽と、屈辱を忘れさせてしまっていたのかもしれません。
 
僕は、雛美礼を縛り上げ剃毛した。
僕のものになった印とでも言うように、雛美礼の白い肌を覆っていた黒い毛を剃り落とした。
雛美礼は、私のすることを、どのように受け入れたのだろう。
本心は、分からない。
私は、全てを見せた。
今度は、雛美礼の全てを見せてくれというように、再び鞭を手にした。

「僕が、分ったかな?雛美礼の全てを見せてくれ。」

雛美礼の足が震えていた。
どこまでを許し、どこから拒むか?
僕は、その無数の境界線を探し、雛美礼の感覚を目覚めさせたいと思った。
きっと僕の精神は狂っているのだろう。
順序だてて説明することだって可能だろう。
子どもが友達を自分の家に誘い有りっ丈のおもちゃを見せ自慢して強制的に遊ぶようだ。
自分に都合の良い理由をいくつ並べたところで、雛美礼にとっては、納得いくものではない。
好きだという感情と、独占した強い欲求を押し殺して待った雛美礼。
長い間、手に入れたいと願った少女を手に入れた瞬間、僕は、残酷になった。
雛美礼はかわいい。
大切にしたい。
それなのに、雛美礼は私をいらだたせ、興奮させる。
判っているのだ。
僕がしていることは独りよがりで自分勝手。
雛美礼を解放させる?
論点も視点も狂っているだろう。
だが、雛美礼が苦しんで悩む姿をみて癒される。
助ける事で、救われる。
雛美礼のがやさしさが僕の救い。
僕は、雛美礼の悩み苦しむ姿に、愛おしさを感じている。
僕の欲望を満たそうとしているだけなのだが・・・・・
誰でもよかったわけではない
雛美礼に出会ったことに意味がある

 
蛇が、本性を隠し、イブを誘惑したように
蛇はアダムを誘わなかった。
イブを誘ったことに意味がある。
僕の口は、雛美礼を誘惑しようとしているのだ。
多弁になり、言いくるめる。
僕の本心を、雛美礼が全て受け入れてくれるまで、絶対に離さない。
もう何があっても、自分の心を騙して、納得させるような恋はしたくない。

「欲望のままに・・・」

心に誓った。
 


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