なにげな言葉

なにげない言葉を あなたに伝えたい
迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1-章-4節-2 「衝撃の告白」

2016-10-25 | 迷宮・緑柱玉の世界
私は、いつしか、心の中で雛美礼と呼んでいることに気が付いた。
自分の家に入った頃からだろうか、やはりここでは、今までのように、雛美礼と呼べる。
肩の力が抜けている。
もう雛美礼に対しては、見えない壁を作る必要が無いのだ。
私という必要はない。自然体で行こう。

それを雛美礼は許してくれるだろう。

腕の中に居る雛美礼は、もう僕のものだ。
雛美礼と声に出したい

だが・・・まだ、そこまで出来ない僕がいた。
時間をかけ、ゆっくり話そう。
そうすればもっと分かり合えるはずだ。


私は、悔しくて泣けてしまいました。
話したことが悔しいのか、思い出して悔しいのかわかりません。
複雑な感情で、涙が止まりませんでした。

一之瀬先生は、私の初体験を聞きたがったのです。
確かに他人の初体験は興味があると思います。
私も、なぜ、話したのか、わかりません。
はじめて人に話しました。
私の中で、あの時が初めてだとは信じたくありませんでした。
誰にも言わなかったし、忘れようとしていたのです。
忘れてなかったんですね。
誰にも言えず、心の奥に仕舞い込んでいても、話している内に、私の記憶だと言うことが、はっきりわかりました。
体が震えるほどの恐怖と、屈辱的光景が蘇ってきてしまいました。
手足が震えてくるのを感じました。

暑い夏の日の午後の出来事。
小学校のプールの監視員。
プールで泳ぐ子供たちを見守ること。
時間が来たら休憩させて、時間が来たら終わりの合図を出す。
大人の人の補助になっている立場。
難しくない仕事です。

プールに児童がいなくなったのを確認し、プールサイドの掃除をし、着替えをして、
事務所で一日の記録整理し日誌に書けば終わり。
後は、鍵を職員室に返し帰宅する。そんな繰り返しの毎日。

その日は、事務処理を先に済ませましたが、着替えてはいませんでした。
プールサイドの掃除を後にして、掃除後、プールを借りて泳ぐ予定でした。
更衣室に向かい、競泳用の水着に着替えました。
水泳部に入っていたのですが、学校のプールでは、人数が多く思うように練習ができないので、小学校のプールを使わせて頂く条件として、監視員することになっていました。

25メートルプールを往復し1キロ程泳いで、その日の練習を終わりにしました。
着替えようと、更衣室に向かい、水着を脱ぎ、シャワーを浴びていました。
タオルを取ろうと振り向いたとき、カーテンが開き、小学校の当直の先生が、手を伸ばして来たのです。

その後の恐怖は、言いようがありません。突然の出来事で、動けないのです。
怖い、何とかしなければと、頭ではわかっているのですが、身動きできませんでした。
声も出ないのです。
恐怖で悲鳴をあげると言いますが、本当の恐怖に声など出ません。
つかまれた腕を振りほどくことも出来ないのです。
されるがまま・・・・声を出すことさえ、恐怖に思えるのですから、何ができるでしょう。
とにかく、時が過ぎてくれれば、何とかなるのではないかと思ったことは覚えています。

口をふさがれ、押さえ込まれた耳元で、先生が言ったのです
「声を出したって、誰も来ないさ・・・ 君がいけないんだ・・・・」
信じられない一言です。私が何をしたというのですか?
先生の声と、あの言葉は、忘れない。

冷たいコンクリートの床。
すのこの上に敷かれたタオルを掴んだ感触
何があったのか、自分で理解できなかった。
再びシャワーを浴びると、水がしみたのです。
体を拭いて、早く帰ろうと思いました。

その後、日誌を返しに職員室に向かい、再び当直の先生と会ったときの恐怖は、それまで経験した恐怖の中で最強だったと思います。
私も油断していたと思います。

目を合わさず、やらなければいけない事を済ませておけば、いいと思っていた。
もしも先ほどのことをすまなかったと謝ってきたなら、「もう、いいです。」とでも言えばいいと考えていたのかもしれない。
でも、違ったのです。

当直の先生は、私を抱き寄せ、
「僕に逆らって困るのは、君だよ。」
先ほどの痛みがまだ残って居る私に、再び、腰を押し付けてくるのです。
足が震えました。怖さで、歯が、カチカチなっていました。
嫌という声さえ出せず、涙だけ流す私を見て、先生は、微笑んだのです。

今度は、必死に身をよじって逃れようとしました。
でも、所詮、少女の力です。逃げようがありません。
再び、男の力に抑え込まれてしまいました。
着ていた服をたくし上げ、小さな胸を、わしづかみにして握ったのです。
唇を固く結び、耐えようとしたとき、唇が近づいてきました。
机の上から、身をよじって逃げようとして、床に落ち、背後から、馬乗りになるように押さえ込まれました。
必死に抜け出そうとしました。逃げれば床を這うように追い立ててきました。
男の欲望は、理解できません。
分かるのは、体に押さえつける、男の固くなったもの・・・

泳いだ後の体は、これ以上逃げられないというほど疲労していました。
逃げ込んだ校長室の、ソファーに押さえ込まれたときは、抵抗することもできないほど、疲れていました。
下着を片足だけ脱がし、上着をたくし上げ、あらわになった胸に手が触れ、舌が触れていました。
私の上で、上下に動く先生の額から、汗が落ちてくるのを見つめていたのを、はっきり覚えています。
終わった後に、キスしてきた生暖かな唇の感触は、忘れません。
得体の知れない生物に舐められえているような気持ち悪さを覚えています。

逃げるように帰りました。自転車をこぐたび、体に、痛みを感じました。
悔しくて、涙が、止まりませんでした。
筋肉の痛みなのか、初めての痛みかわかりません。悔しくて、でも怖くて、ハンドル握る手が震えていたのも覚えている。
ペダルをこぐ足が震えていたことも覚えています。

帰宅して、母に指摘された真っ赤な目も、水泳のせい・・・と
とても大きな嘘をついたのです。
何も無かったように振る舞い家族と食事をして、独りになった部屋で、布団に潜り込んで声を殺して泣きました。
幾ら洗っても綺麗にならない体を呪いました。
泣いても泣いても、元には戻らないのです。後悔と悔しさに、泣きながら寝てしいました。

あの時の事は、誰にも言わなかった。言えなかったのです。悪夢の夏休みは、しばらく続きました。
私は、大きな弱みをつかまれ、されるがままになりました。
先生のお詫びなのか、当直とアルバイトが重なる日は、必ずプレゼントをくれました。

でも、少しも嬉しくなどありませんでした。
終わりは、突然やってきました。野獣のような先生は、夏の終わりに事故に会い、入院をしたのです。
数ヵ月後、長い手紙ときれいなガラス細工の置物が届きました。
手紙には、あの夏の出来事の言い訳と、私に対する気持ちが書かれていました。
どんな理由があっても、どれだけ好きだとか、望んでいたと書かれても、私の気持ちが、野獣のような男に向くことは在りませんでした。

どんなに嫌な思い出でも、時は記憶をあやふやにしてくれます。
先生も私もお互い、触れたくない話題となり、誰も知らないこととなり、
あれは、夢だったのではないかと思えるようになっていたのです。
いつしか、私の心は、平穏を取り戻し、いつもと変わらない日常を、過ごすようになっていました。

本当は、あの忌まわしい過去を、忘れてはいなかったのかもしれません。
嫌な記憶と思いながらも、私はあれ以来、先生と呼ばれる人に、惹かれていました。
先生・・・・、
嫌いな先生は思い出せないのです。

誤解を招くほど見つめていた中学の先生。
近所で、毎朝一緒に学校へ行った中学の英語の先生もいました。
放課後に補修して欲しいとお願いした理科の先生。
理科室で、先生といる時間が嬉しかった事もある。
高校では、内緒で、体育の教師と付き合った。
内緒の恋は、長くは続かなかったけれど、好きだった。
同じ道で通う先生が来るまで送ってくれることもよくあった。
偶然入ってしまった柔道部の顧問の先生も、よく送り迎えをしてくれた。

そして、学校見学で、一之瀬先生に恋をした。
私の好みは、極端なのかもしれません。

なぜ、今日一之瀬先生に、話してしまったのだろう。本当に、不思議です。
同じ教師という職業でも、安心したのかもしれません。
どこかで、私は、一之瀬先生に話すことで、楽になれると思ったのかもしれません。

先生は、生徒の話を聞き入れてくれ!
そう信じているのかもしれません。

ぎゅっと抱きしめられた時、涙があふれて、止まらなかった。
どんどん出てくる涙は、一之瀬先生のシャツを濡らしてしまいました。
一之瀬先生にしがみつき、声を出して泣いてしまいました。
人前で泣いたのも初めてだと思います。なぜなのだろう。
とても安心したのも本当です。
ソファーに座り、体を、傾け肩を抱かれているだけなのに、とても、安心しました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿