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迷宮・緑柱玉の世界の独り言

迷宮・緑柱玉の世界 1章12節 「 意思 」

2021-02-27 | 迷宮・緑柱玉の世界
私は子供のように泣きながら数時間寝ていたようです。
目が覚め、ベットの中で、考えました。
正直、アルバイトはしたいです。
お金欲しいです。
それに、先生と付きあってみたい。

私利私欲、私が欲しいものだけ手に入れる事が出来るなら、いくらでも素直になれる。。
でも、もう今の私は素直に先生を見ることが出来なくなっていました。
疑心暗鬼、先生のしようとすることが、分らない。
予想できない以上、夢も、希望も持てません。
良い所取りなんて都合よくいかないのは、判っている。
お付き合いできない時は、アルバイトも止めると決めていた。
はっきりしないといけない。
寄り添って、好きですと言うような恋を望んでいた。
告白をしていなくても、夢は見ていました。
告白する前に、夢は壊れてしまいました。
私は、弱い心の持ち主です

「付き合いません」と強く言えないのです。

「付き合いたい。」そうはっきりとも言えないのです。

「終わりにしたくないよ。」本音です。

ベットの上で、幾度も寝返りを打ちながら呟いていました。
「付き合いたいよぉ・・・でも、解んない。怖いのは嫌だもん・・・。」
 
その時、ベット脇のチェストの上に、紙の挟まった雑誌を見つけました。
雑誌を手に取ると、数枚の紙がばらばらと床に落ちました。
急いで、ベットから飛び降り、数枚の紙を拾い上げ見ると、アルバイト契約書と書いてありました。
直ぐに戻すごとが出来ず、手を止め契約書を読んでいました。
そこには、アルバイトの詳細と、支払い予定額が書いてありました。
アルバイトの内容が、細かく記されていました。
「部屋の掃除、食事、洗濯、家事全般を行う。」など、記してあり、注意事項も書いてあった。
少しだけ、ホッとしました。
先生はやっぱり先生です。
この細かい指示は、先生が、私に向けてい書いた指令書
何も知らないで、アルバイトの話を聞いたのなら、私は、直ぐにでもサインしていたと思いました。

2枚目の注意書きを読み進めると、プライバシー項目がありました。
互いのプライバシーを尊重するため、互いの得た情報は、外部に漏らさない。
当然のことですが、今までのことを考えれば、この項目が一番重要なのではないかと思いました。
そして、最後の項目はバイト代の内訳が書いてありました。
最初に聞いた金額よりも高い金額でした。
時給換算してみました。
とても、料理して掃除するだけのアルバイトの金額ではありません。
時給より高い金額が書いてありました。
よく見ると、但し書きとして、
「別紙の条件による。」
と書いてありました。
私は、別紙を探しました。

別紙は、重なってはいませんでした。
どこかにあるような気がして、探してみました。 
一緒に落ちた数枚の紙は、先生の仕事の資料のようでした。
私は、その別紙というのが、とても気になってしまいました。
「別紙の条件って何?」
ベットの下まで覗き込み探しましたが見当たりません。
約束の金額よりも多く書いてある事の理由が別紙にあると言う事ははっきりわかりました。

1度気になると、もう、どうしようもないのです。
金額に見合うだけの条件が書いてあるのですから、その内容を、どうしても知りたいのです。
私の中で、少しの焦りが生まれていました。
 
手元の、雑誌のページをぱらぱらと捲って中も見ましたが、それらしき紙は見つかりませんでした。
チェストの引き出しの中も見ました。
もう、勝手に見ているという事など忘れていました。
枕の下、シーツの下に手を入れてみましたが、見当たりません。
見つからないので、諦めようかと思いましたが、納得できないのです。

直接先生に聞いてみればいいと思いましたが、内緒で見つけた契約書です。
なんと聞き出せばいいのか迷います。
部屋中を見渡しましたが、それらしい書類が置いてある場所を見つけることが出来ません。
「ここには無い。」
そんな確信が、私の中に沸いてきました。
やっぱり諦めようか・・
書斎?
きっと書斎!確信にも似た閃きでした。
書斎探してだめなときは、諦めよう。
ベッド脇にあった先生のガウンを羽織り、スリッパを履き、先生の書斎へと向かいました。
「ここにある。」
そんな確信がありました。
 
書斎は、東側にある大きな窓に向かって机が配置されている。
背面いっぱいに書棚。
他の部屋と違う香りのする書斎
重厚な革張りの椅子

椅子に座り、机の引き出しに手をかけました。
罪悪感から、動きを止めました。
今、私はいけないことをしている。
分かっています。
先生の秘密を見ようとしているのです。
偶然見たとかではなく、探そうとしているのです。
見てはいけないものを、覗き見をしようとしているのです。
罪人手前です。
私は罪の意識で、引き出しから手を離しました。
それでも気持ちは、知りたいでいっぱいになっていました。
胸の前で、十字をきりました。

「神様ごめんなさい。私は、誘惑には勝てません。」
 
罪の意識から、違うものに視線をやり、引き出しに向かう意識を逸らそうとしました。
机の上にあった数枚の紙の端をめくってみました。
それらしいものはありませんでした。
やはり引き出しが気になって仕方がありません。
再び、胸で十字を切りました。

「やっぱりだめです。ごめんなさい。確かめないと・・・・許してください。」

一番上の鍵の付いた引き出しが気になります。
そこには手を持っていくと、やはり、鍵がかかり、開けることは出来ませんでした。
もちろん鍵など無いのですから、無理です。
引き出しが開かなかったことで、少しだけほっとしました。

「罪を犯さず済んだ。」

と言う気持ちがあったのかもしれません。
ほっとしても、やはり、気になって仕方がありません。
もうひとつ手をかけてしまうと、二つ目も同じです。
鍵の無い机の正面の引き出しを開けてみました。
整理された引き出しの中に、透明ファイルがいくつか入っていました。
泥棒のように、息を潜め、そっと、ファイルを引き抜いてみました。
手にしたA4の紙を恐る恐る見ると、《契約書》と書いてありました。

「これだ!」

思わず、声が出てしまいました。
誰もいないとは思いながらも、あたりを見回していました。
 
内容を確かめる前に、奴隷という文字が私の目に飛び込んできました。
昨夜、先生は私に向かって、「僕の女になれ」とか、「僕の女だ」といいました。

「お前は奴隷になれ、僕の奴隷だ」とう事だったのでしょうか?

奴隷、信じられない。
どういう事?
奴隷と言う意味が分かりません。
中世のヨーロッパでもないのに、奴隷とはどういうことでしょう。
聖書にある奴隷のことでしょうか?
奴隷とは、人としての権利を認められず、道具や物のように売買される人のことです。
所有者が、全てを支配するということです。
そのような人に私がならなければいけない理由など無いのです。
契約書の金額が大きかったのは、奴隷売買?
しかし、私に支払う金額なら、売買ではないわけです。
私に支払われる金額ということですから、売買とは、意味が違います。
 
私は、机の上のコンピューターの電源を入れ、ネットで「奴隷」と言う言葉を検索しました。
表示される意味合いは、やはり、労力となる働き手のこととありました。
家政婦が奴隷とは・・・やっぱり意味合いが違うと思います。
モニターの文字を読むうち、「マゾ奴隷」という言葉が目に飛び込んできました。

「マゾ奴隷?」

検索して、目を疑いました。

<肉の試練を目的とした契約・主従関係を金銭で手に入れる契約を含む>

とあったのです。
労働のための奴隷とは少し意味が違いました。
肉欲に関してだけの奴隷ということなのだということが分かりました。
嫌な予感の中、ファイルから紙を取り出し確かめると、
 
『契約書』
 私、大下雛美礼は、一之瀬正隆の奴隷となることを誓います。
 マゾ奴隷としてご主人様の喜びとなるよう尽くすことを誓います。
 ご主人様の望む奴隷になることを心から誓います。 
 但し、
 主人、一之瀬正隆とは、2年の期限付き契約とする。
 契約期間は、賃金つきとし肉体の賃貸契約を同時に結ぶこと。
 生命、個人的時間に踏み込むようなことは無い。
 以上の条件を承認した場合は、それに見合う保障をする。
 奴隷からの契約違反は認めないものとする。
 いかなる理由があろうと、解約は認めず、主人の罰を受け入れることを誓います。
 ○月○日 _____印
 
 
私は、このとき初めて、先生が言っていた奴隷という意味が分かりました。 
 
「奴隷ではなく、マゾ奴隷」のことをさしているのだとことがわかりました。
ソファーで話しかけられていた時、「奴隷になりなさい。」「奴隷にする。」と言われたのは、覚えている。
でも、何気に聞き流していました。
意味が分からないし、ぼーっとした頭で理解などできませんでした。
今、全ての言葉の意味がわかった瞬間、先生がしようとしていることの全体像が、見えてきました。
インターネットで知ることのできる知識は、どれほどかわかりません。
でも、知らないでは済まないこともあるのだとわかりました。
私なりに解釈してみると、少しですが、解かるところがあるのです。

解からないのは、先ほどの契約書の金額が、お話したときの3倍以上になっていた事です。
なぜ、金額が変わったの?
これって・・・閃きのよう沸いた思い。

「お金で、自由にされる?買われた?」

意味が分かりました。
私は、お金で先生のものになれということなのだ。
お金で私が買われるということが、アルバイトの但し書きなのだと思いました。
 
一昨日からの先生の行動と、言葉の意味がはっきりと分かってきました。
私を褒めた言葉が、聴きなれない言葉だったことも、なんとなく理解しました。
先生が優位に立ち命令した言葉が意味したこと、それぞれ全てに先生の目的と意思があったということです。
「自由にしてあげる。」「言葉にしなさい。」「話を聞け!」
あのやり取りの中に、全てが凝縮されていたという事です。
今、私の中にはっきりと飛び込んできたのです。


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