主人公は鑑識課警察犬係に配属されたばかりの岡本都花沙。念願かなって警察犬係に配属となった岡本は、ベテランの警察犬アクセル号とコンビを組んで、捜査をすることになります。元警察官で今は民間の警察犬訓練所で働く訓練士野見山俊二の協力を得て、事件にぶつかっていく。野見山は名警察犬レニーとコンビを組んでいました。しかし、あることがきっかけになって辞職。いまは民間の立場から捜査の協力をしています。警察犬の出動依頼が多いのは、行方不明者の捜査で、最近は認知症高齢者の失踪に駆り出されることが多く当然、そこには認知症を抱える家族の辛さなどもあり、そういう「日常レベル」の捜査の裏側の人間ドラマが描かれています。また、捜査官と警察犬が「心を通わせる」までの苦労が描かれていて、犬と心が通った愛おしいその瞬間がいい。形式は連作集であるが、第一章「手綱を引く」では野見山が主人公であり、しかも意外な人物がある真実を見抜く。また、野見山と都花沙に予想外の接点があることが、後になって判明するなど、いろいろと伏線の多い作品です。
2023年1月文春文庫刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます