読書備忘録

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香能諒一著「砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌」

2024-12-20 | か行
シリーズ第5弾。事件の謎に挑む警視庁捜査一課強行犯係のベテラン刑事の活躍を描く3篇「砂時計」「日和見係長の休日」「夢去りし街角」。切なさと救い溢れる3つのラスト。マンションの一室で三十八歳の女性が死亡。大量の睡眠薬をアルコールとともに服用したことで昏睡状態となり死に至ったようだ。テーブルには「疲れました。ごめんなさい」と印字された遺書らしきプリントも。自死と思われたが、所轄は警視庁捜査一課の大河内茂雄部長刑事に現場への臨場を依頼した。不自然なことが多かったのだ。部屋のパソコンからはここ数カ月のメールが消去されていたし、死の前日にスーパーの宅配サービスに注文を入れていることもわかった。マンション住人からの聞き込みから、複数の男の出入りが確認され、事件当夜には男女の言い争う声も聞かれていた。大河内刑事は、被害者が中学生のときに父親が殺人を犯していたことをつきとめる。また被害者は二年前にも大量の睡眠薬を服用し病院に搬送されたこともわかった。捜査を進めるうちに、被害者のまわりでうごめく黒い影に存在に気づく・・・。小林係長が、浅草で妻と娘と家族三人で休日を楽しんでいたところ、若かりし頃の元寮長と渾名を冠せられていた懐かしいお婆さんに出会うことから、このストーリーは始まる。元同僚であった刑事の隅田川での不審な自死を伝えられ、事の真相を調べるように依頼されたのだ。小林係長は、家族との休日を楽しんでいたのだが、舟遊び・食事・買物などの最中に、ひょいと抜け出してはこの事件を調べてゆく。急に舞い込んだ私的捜査と家族との団らんという大切な行事の二つを同日にこなす、というアクロバティックな物語が見事に展開してゆく。『夢去りし街角』は、音楽を志す者たちの夢と日常を背景に、目黒川の花見で賑わう時期の殺人という難事件が切なさと救い溢れる3つのラスト。
2023年10月徳間書店刊



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