検事佐方シリーズ。孤高の検事の気概と執念を描いた、心ふるわす4つの連作ミステリー。任官4年目の検事・佐方貞人は、亡くなった実業家の書斎から高級腕時計を盗んだ罪で起訴された男の裁判を担当していた。被告人は実業家の非嫡出子で腕時計は形見に貰ったと主張、それを裏付ける証拠も出てきて、佐方は異例の無罪論告をせざるを得なくなってしまう。なぜ被告人は決定的な証拠について黙っていたのか、佐方が調べ辿り着いた驚愕の真相・・・「裁きを望む」。他に佐方貞人という人物がどのように生まれ、育ったのか、なぜ信義にこだわるのかきめ細かく描かれている、「恨みを刻む」広島北署の日岡巡査や暴力団が登場する・・・「正義をただす」。認知症の実母を殺めた介護殺人を扱った・・・「信義を守る」。『人には感情があります。怒り、悲しみ、恨み、慈しみ。それらが、事件を引き起こす。事件を起こした人間の根底にあるものがわからなければ、真の意味で事件を裁いたことにはならない・・・なぜ、事件が起きたかを突き止め、罪をまっとうに裁かせるそれが私の信義です。』(P215)。人生・人間を考えさせてくれる人間ドラマともいえるミステリーでした。
2019年4月角川書店刊
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます