ヤクザの仁義なき戦いと警察小説が融合した「孤狼の血」シリーズ続編。平成二年、前作で広島県警呉原東署暴力団係として活躍した日岡秀一巡査は、僻地の駐在所勤務になっている。懲罰人事だ。田舎の駐在所の日岡は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく。
前作が広島抗争なら、今度は暴対法成立前夜の山一抗争がモデル。正義とは何か。仁義とは何なのか。国光は裁判で、「敵対組織の幹部を殺したのはヤクザとしてやらなければならない当然のことをやったまでだ・・・ただ、亡くなった人たちの冥福は祈ります。それが仁義というものだ。」(P310)。日岡は「捜査のためなら、俺は外道にでもなる。」とある決心をする。日岡の成長物語として面白かった。週刊誌の記事やマスコミの報道は、すべてを伝えるものではないのでこの小説は、その見えない部分のドラマを堪能できる。警察vsヤクザの意地と誇りを賭けたドラマでした。
2018年3月KADOKAWA刊
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