日々進化し続ける人工知能。AI裁判官が実務を行うようになったら、裁判官の倫理と英知、正義とはなにかを考えさせられるというミステリー。東京地方裁判所の新人裁判官・高遠寺円は、公判、証人尋問、証拠や鑑定書の読み込み、判例等の抽出、判決文作成と徹夜が続き日々の業務に忙殺されていた。ある日東京高裁総括判事の寺脇に呼び出された円は、中国から提供された「AI裁判官」を検証するという任務を命じられる。「法神2」と名付けられたその筐体に過去の裁判記録を入力する。果たして、「法神」が一瞬で作成した判決文は、裁判官が苦労して書き上げたものと遜色なく、判決もまた、全く同じものだった。業務の目覚ましい効率化は、全国の裁判官の福音となった。しかし円はAIの導入に懐疑的だった。周囲が絶賛すればするほどAI裁判官に対する警戒心が増す。そんなある日、円は18歳少年が父親を刺殺した事件を担当することになる。年齢、犯行様態から判断の難しい裁判が予想された。裁判長の檜葉は、公判前に「法神」にシミュレートさせるという。データを入力し、出力された判決は――「死刑」。やがて、その審理が始まる。罪は、数値化できるのか。裁判官の英知と経験はデータ化できるのか。目前に迫るあり得る未来に、人間としての倫理と本質を問う。被告の旧友を訪ね歩くアナクロな刑事とソフトウエア検証会社の女性が、新事実を発見すると、中国がAIを通じて日本人の思考を支配しかねない思考ロボット且、AIスパイであったのだ。AIの頭脳が人間化し、人間を凌駕し、指図することによって人間を支配することがないよう活用の在り方に警鐘。
2024年2月小学館刊
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