絵本作家として活躍する賀川真帆。真帆の父は十五年前、「出張で九州に行く」と言い置いたまま、富山で病死を遂げていた。父はなぜ家族に内緒で、何のゆかりもないはずの富山へ向かったのか。長年の疑問とわだかまりを胸に、真帆は富山へ足を向ける。滑川駅の前に残された一台の自転車。亡き父の足跡を辿ると、出会うことのなかった人々との縁が広がりはじめる。一方東京の暮らしに疲れ、仕事を辞めて、故郷の富山に帰ってきた脇田千春。実家でふさぎ込んでいたが、親戚の中学生・夏目佑樹と触れ合ううち、自分らしさを取り戻していく。父のいない子として生まれた佑樹は、不思議な懐の深さを持つ青年へと成長していた。
美しく豊かな富山の地を舞台に人々の絆で富山・京都・東京、の家族の運命が交錯する物語。魅力的な善人キャラがたちが織りなす物語です。著者の何時もの事ですが、ある程度裕福な人々で善人の群像ドラマ。船見城址からの見る富山湾の夕陽・ゴッホの星月夜の風景・愛本橋の赤いアーチ・旧北陸街道、ゴッホの星月夜に似た風景。この本に出てくる風景を見に、鱒寿司・鯖の棒寿司など食べに旅立ちたくなります。著者の「人間関係の螺旋状の仕組み」にのっとった展開や広がりに妙に納得させられる。
「苦労も心配も悲しみも来ることでしょう・・・どんな家でもそれを閉め出すわけにはいきません・・・愛と信頼をとりそろえて打ち向かえば、先方に勝をとられることはない・・・・この二つを羅針盤と水先案内人にすればどんな嵐でもきりぬけられる」(下卷P172)
2015年4月集英社刊
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