平成4年(92年)死去の「社会派推理の祖」と称された作家。財閥系に伍して業界の中堅までのポジションに至った損保会社の戦後の混乱期に阿漕な手段まで駆使して成り上がった男たちの裏の顔を描いた話。損保会社の独裁社長の長年の秘書が、海外出張先で海に転落死。大学同窓生で、別会社での左遷直前に拾ってもらった主人公が出張直前の酒の席での彼の言動を思い出して不審を感じ・・・表題作(1973年)。無尽会社から発祥して地域の有力金融機関の地位にある相互銀行の裏の顔を暴くようなストーリー・・・「よごれた虹」(1962年)。他に短編、元警察官の冤罪がらみの・・・「雨」(1966年)の3編と資料編・社会派推理とは何か対談エッセイ・インタビューが収録されている。死んで暫くたつのに新刊出る作家は流石。どの作品も未完の感が強いが「上から見ないで底辺からみあげること。・・・まず疑ってかかるという姿勢」(P294)作家姿勢が解る作品でした。
2024年4月中央公論新社刊
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