上中下巻の長編の上卷です。
東京の離島・神生島に生きたある一族の150年の大河ドラマ全17部の明治大正編。神生島 にイチマツが帰ってきた。神か仏のような人間離れした美貌の一ノ屋松造に、島の女 たちは例外なく魅入られていく。イチマツの子供には、みな体のどこかに同じ徴が あった。またその子供たちにも・・・。全17部の基本的には歴史小説だが、各章ごとにラブストリー・コミック小説・ユーモア小説・冒険物・人情物・パニック物・教養小説・スポーツ物・政治小説・フェミニズム小説・ジェンダー小説風と色々特色があり全1700頁長編であるが、楽しめて読めました。
上卷は明治維新から関東大震災後まで。イチマツから孫の世代まで。第1部 神の帰還・・・一ノ屋一族の当主イチマツが島に戻り、数多くの女性を愛人にして、13人の子供を作り、島を去っていく。イチマチが女性の体に接吻すると、そこが唇形の痣になり消えなくなる。この痣はイチマツの子孫に受け継がれ、この痣のあることがイチマツの子孫の証しとなる。第2部 人間万事塞翁が馬・・・息子の一人の平太が、本土で学問をして島に帰り、油工場を作り、日清日露を背景に発展していく。第3部 一ノ屋の後継者・・・息子の一人がくじ引きで当主に選ばれた晋松。女性にモテない苦悩と、洞窟冒険物語。第4部 「君死にたまふことなかれ」・・・娘で与謝野晶子信奉者の容子による島の女性の反戦教育が、次第にエスカレートして性交為拒否の煽動に至る。第5部 夢に取り憑かれた男・・・徳川ご用金探しの夢に取り憑かれた孫世代の小五郎。悲しいラブストーリー。第6部 お医者様でも草津の湯でも・・・孫世代清楚で美貌極致の鈴子を巡って、男子生徒たちが求婚合戦を繰り広げ、どんどんエスカレートして、存在自体が島の男を狂わせる物語。第7部 才能の使い道・・・芸術家才能のある孫世代の良太郎の未来選択。悲恋ロマンチック・ラブ。
2021年8月新潮社刊
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