読書備忘録

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大沢在昌著「熱風団地」

2022-02-20 | 大沢在昌
外国語が得意でフリーの観光ガイドをしていた佐抜克郎は、外務省関係者名乗る人物から東南アジアの小国“ベサール”の王子を捜してほしいと依頼を受ける。軍事クーデターをきっかけに国王の日本人第二夫人が日本に逃れていたのだ。佐抜は“あがり症”だが、ベサール語という特技があった。相棒として紹介された同国人の元女子プロレスラー「レッドパンサー」ことヒナとともに、家出した王子の行方を求めて多国籍の外国人が多く暮らす「アジア団地」に足を踏み入れる。ベサールの現政権を支持する中国と民主化を支持する組織やアメリカの顔色を伺いながら何もしない外務省外郭団体など団地での攻防で、あがり症の佐抜とズバリ物言うぬ物言うヒナ。 ヒナに影響を受けて、どんどんと大胆に思い切った交渉や行動に出るようになる佐抜。素人然だった佐抜も終盤はまるでエージェントのように見える活躍で面白かった。日本の少子高齢化&人口減が加速すると、古い大規模団地が、外国人に占拠されて熱風化するアジア団地の描写は、匂いや生命力、逞しさまで感じられ、日本の年寄りばかりが住み中国人や外国人に多数住みはじめ占拠されてしまうような団地が出てきているような懸念もリアル感があった。
『のんびりにもほどがある。独裁政権だろうが民主政権だろうが、うすらぼんやりしている国民のほうが為政者はやりやすい。声の大きな政治家がのさばるようになったら、要注意ということだ』(P82)。
2021年8月角川書店刊


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