ホストを殺した女刑事。無実を信じて奔走する若き弁護士・持月凛子。しかし、その証言は全て嘘だった。凶悪事件の犯人に、果たして弁護士は必要なのか。「弁護士の使命と苦悩」を描いたミステリーサスペンス。父親は人権派弁護士であったが、極悪人を弁護することを逆恨みした被害者の身内に殺されてしまったという過去がある刑事弁護に使命感を抱く持月凛子が当番弁護士に指名されたのは、埼玉県警の現役女性警察官・垂水涼香が起こした加納怜治ホスト殺人事件。凛子は同じ事務所の元刑事の変わり者西大輔と弁護に当たるが、加害者に虚偽の供述をされた挙げ句の果て、弁護士解任を通告されてしまう。一方、西は事件の真相に辿りつつあった。経験の浅い女性弁護人、クセモノ感ある元刑事の弁護人、”殺人犯”の現職刑事と、登場人物が魅力的でそのこと自体がミステリーな展開。犯人の女刑事が何かを隠していることは最初から明らかで、それを少しずつ暴いていく展開は面白かった。「相手の言うことが真実だと思えなければ、本当の弁護なんかできやしない。」という西弁護士が影の主役だね。納得できない点も多々あるが重いテーマだが考えさせられた。「罪を犯した者に自分がやってしまったことを深く考えさせ、事件と向き合わせ、二度とこのような過ちを起こさないよう諭せるのは、被疑者や被告人の言葉に必死になって耳を傾けた、最も身近にいる弁護人だけ」(P497)
2022年3月新潮社刊
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