読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
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柚月裕子著「暴虎の牙」

2021-06-17 | や・ら・わ行
警察小説「孤狼の血」「凶犬の眼」シリーズ・完結編、「暴虎の牙」。博徒たちの間に戦後の闇が残る昭和57年の広島呉原。愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、ヤクザも恐れぬ圧倒的な暴力とそのカリスマ性で勢力を拡大していた。広島北署二課暴力団係の刑事・大上章吾は、沖と呉原最大の暴力団・五十子会との抗争の匂いを嗅ぎ取り、沖を食い止めようと奔走する。時は移り平成16年、懲役刑を受けて出所した沖がふたたび広島で動き出した。だがすでに暴対法が施行されて久しく、シノギもままならなくなっていた。焦燥感に駆られるように沖が暴走を始めた矢先、かつて大上の薫陶を受けた呉原東署の刑事・日岡秀一が沖に接近する・・・。沖虎彦という愚連隊リーダーの男を主役に置くことで、大上章吾と日岡秀一、それぞれの時代を楽しめ読める。作品の前半(大上の時代)と後半部分(日岡の時代)では、暴力団を取り囲む状況があまりにも違う。現代では暴力団排除条例が施行され、暴力団という存在自体がもはや風前の灯。ヤクザ小説でもあるが誰が警察の”エス”なのか?というミステリー部分もあり、登場人物たちが生き生きと描かれ取り巻く女性たちも鮮やかだ。破滅へ突き進む人間の執念・業の深さに恐ろしさを感じたものの全体としてはたっぷり楽しませて貰った一気読みの物語でした。映画化が楽しみです。
2020年3月角川書店刊


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