読書備忘録

私が読んだ本等の日々の
忘れない為の備忘録です

安東能明著「蚕の王」

2022-06-08 | あ行
二俣事件、幸浦事件、小島事件、そして現在もなお審理が続く袴田事件。「冤罪なんて簡単に起きる」。・・・警察と司法が手を組んで行われた犯人捏造の実態とは怖い。戦後の静岡県で、過酷な拷問により自白を引き出し、様々な冤罪を生み出した刑事の悪行がリアルに描かれている。著者の地元である二俣市で起きた二俣事件について、過去の関係者を訪ねる形で、小説が展開される。昭和25年(1950年)一月。静岡県二俣町にて一家殺害事件が発生した。のちに死刑判決が覆った日本史上初の冤罪事件・二俣事件。捜査を取り仕切ったのは、数々の事件を解決に導き「県警の至宝」と呼ばれた刑事・赤松完治。だが彼が行っていたのは、拷問による悪質な自白強要と、司法さえ手なずけた巧妙な犯人捏造であった。拷問捜査を告発した現場の吉村刑事、赤松の相棒であった城戸元刑事、昭和史に残る名弁護士・清瀬一郎。正義を信じた者たちが繋いだ、無罪判決への軌跡。そして事件を追い続けた著者だけが知りえた上の推理で、「真犯人」の存在を描いている。冤罪の怖さ、取り調べの可視化の必要性を感じる小説でした。
2021年11月中央公論社刊

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