8/18に愛知県刈谷市でキネシオロジー初級・中級セミナーの第2回を行った。テーマは筋力テストだったが、ビデオを見直していたら筋肉の促通と抑制について説明に一部誤りがあったのと、補足すべきことがあることわかり、いい機会なので一度、それについてまとめておくことにした。
まず解剖・生理学的な事柄として…
骨格筋には錘外筋線維と呼ばれる通常の太くて長い筋線維と、錘内筋線維と呼ばれる細くて短い特殊な筋線維がある。錘内筋線維は数本が1単位となって皮膜に包まれた筋紡垂を形成する。
骨格筋の収縮状態はⅠ群求心性線維を介して中枢に伝えられる。Ⅰ群求心性線維には、筋紡垂からの情報を伝えるⅠa群求心性線維と、腱紡垂からの情報を伝えるⅠb群求心性線維とがある。
筋肉に対する中枢からの出力は、運動ニューロンを介して行われる。
運動ニューロンには、錘外筋線維に終末するα運動ニューロンと、錘内筋線維に終末するγ運動ニューロンがあり、γ運動ニューロンは更に、筋肉の急激な伸張に反応する核袋線維と、筋肉の持続的な伸張に反応する核鎖線維とに分かれる(これにより筋力テストもγ-1ニューロン・テストとγ-2ニューロン・テストとに分かれる)。
骨格筋には屈筋と伸筋があり、そのうちの一方を主動筋とすると他方は拮抗筋となる。
主動筋を収縮させようとすると、中枢からその筋を支配するα運動ニューロンを介して促通命令が出されて、主動筋の収縮が起こる。
その際、その筋内の筋紡錘に終末するⅠa群求心性線維は脊髄内で抑制性介在ニューロンを興奮させ、その結果として拮抗筋を支配するα運動ニューロンが相反的に抑制され、拮抗筋が弛緩する。
また、随意運動の際にはα運動ニューロンとγ運動ニューロンは上位中枢からの命令を同時に受け、両者は同時に興奮したり抑制されたりする(α-γ連関)。
そこで主動筋の筋腹を寄せて筋肉を収縮させようとすると、Ⅰ群求心性線維が興奮し、α運動ニューロンからの主動筋への促通命令が弱まり、よって主動筋の筋力は弱まる。
もしそうならないとしたら、主動筋の促通過剰(OF)が起こっている。
次に主動筋の筋腹を引き離してて筋肉を収縮させようとすると、Ⅰ群求心性線維は興奮せず、α運動ニューロンからの主動筋への促通命令が強まり、よって主動筋の筋力は強まる。
もしそうならないとしたら、主動筋の促通低下(UF)が起こっている。
主動筋の筋腹を寄せるとα運動ニューロンからの拮抗筋への抑制が弱まり、拮抗筋を収縮させようとすると拮抗筋の筋力は強まる。
もしそうならないとしたら、拮抗筋の抑制低下(UI)が起こっている。
次に主動筋の筋腹を引き離すとα運動ニューロンからの拮抗筋への抑制が強まり、拮抗筋を収縮させようとすると拮抗筋の筋力は弱まる。
もしそうならないとしたら、拮抗筋の抑制過剰(OI)が起こっている。
これらUF、OF、UI、OIがない状態をクリア・サーキットという。
キネシオロジーで筋反射テストを行う際に指標(インジケータ)となる筋肉(インジケータ筋)は、何においてもまずクリア・サーキットでなければならない。スイッチング云々はその先の話である。
と同時に、通常の筋力テストを行う際もUF、OF、UI、OIが起こっている可能性を必ず考慮しておく必要がある。
よくあるレベルの低い(失礼!)筋力テストでは、「テストしたら強かったからオッケー
」みたいなものも多いが、もちろんそんなことはない。
筋力テストして、結果、強かったとしても、その筋肉はOFを起こして強くなっているのかもしれない。
あるいは促通側に異常がなくても、抑制側では異常があるかもしれない。
そこまで見られなければ、(とりわけキネシオロジーでは)筋力テストをする意味はないのではないか、と私は思う。
正直、私もまだまだ道半ばだけど。
そのくらい筋力テストは、キネシオロジーの基本中の基本であると同時に奥が深いものなのだ。
ひとつ質問なのですが、筋肉を離す、寄せるという表現がイメージがつきにくいのですが、どのような感じで動かせば良いのでしょうか。
宜しくお願い致します。
ブログを読んでくださって、またコメントをいただき、ありがとうございます。
ご質問の件ですが、筋腹つまり筋肉の最も膨らんだ部分に2本の指(通常は母指と示指)を少し離して軽く当てます。
そして、筋腹の部分の皮膚と皮下組織を集めるように2本の指の間を狭めたり、その部分の皮膚と皮下組織を引き伸ばすように2本の指の間を広げたりするのです。
この時、強い力は使いません。2本の指の間に皮膚と皮下組織を挟んで、ごく軽い力でその距離を狭めたり広げたりするだけです。
やってみてください。