2022年冬期は1本の再放送を含む15本のアニメを見た(途中切りはなし)。この2では4月以降に放送が終了した作品についての私自身の感想と評価。なお掲載は五十音順で、評価はA~E。
『ヴァニタスの手記(カルテ)』2期
第1期は2021年秋アニメとして放送され、私は今期『進撃の巨人』と並んで毎週、最も楽しみにしていた作品だったが、1期同様なぜかネットではあまり話題になっていなくて、それが悲しい。
かつてのヴァンピール(吸血鬼)と人間の大戦争の後、両者が何とか共存するようになった世界で、なぜか「呪い持ち」となって人間を襲うヴァンピールが現れる。その「呪い持ち」から、伝説の「ヴァニタスの書」によって呪いを解き放つ青年、ヴァニタス。彼の真の目的とは?(ちなみに主人公、ヴァニタスのCVは花江夏樹で、『鬼滅』では偽善的な主人公、炭治郎を演じているが、この作品ではそれとは正反対の偽悪的なキャラを演じている。)
登場人物それぞれの持つ物語が作品の核心とリンクしていて、彼らの運命が交錯する中で浮かび上がる重層的で謎めいて耽美的なストーリー、そしてそれをボンズによる美しい画面構成と梶浦由記の劇伴が彩り、見ていてワクワクが止まらない。
最大の問題は、アニメが連載中の原作マンガに追いついてしまったということである。評価はB+~A。
『進撃の巨人』ファイナルシーズン2期
当初は人食い巨人が出現する異世界ものかと思わせておいて、話が進むとともに物語自体が全く違う様相を見せ、ついにファイナルシーズンの2期では主人公が世界を相手に戦うところまで来てしまった伝説の作品。個人的にはファイナルシーズン2期は1期に比べてやや気持ちが盛り上がらなかったのだが、それでも凡百の作品とは段違いであることは言うまでもない。しかもこの作品を放送している間に、現実世界でもロシアが突然、ウクライナに侵攻して市民を無差別に殺傷するなどの残虐行為を行うという、アニメと現実とがリンクするような事態が起こっている。もちろんアニメ放送とウクライナ侵攻が重なったことはただの偶然なのだが、「優れたアーティストはまた優れた予言者である」というテーゼを示すような出来事である。
物語としては、第1シーズンの1話「2000年後の君へ」の伏線が回収されたりと、いよいよ終わりに向かって進んでいるのがひしひしと感じられる。とはいえ、その進度から「『進撃』はこの2期で本当に終了できるのか?」という疑問をさまざまな人たちが表明していた通り、今期も"To be continued"で終わってしまい、ファイナルシーズンの完結編が2023年に放送予定であることが発表された。「ってことは全然“ファイナルシーズン”じゃないじゃん!」と突っ込みたくなるが、それでも「続きは映画館で」にならなかったのはよかった。
これまでの放送分のトータルとしての評価はA~A+だが、ファイナルシーズン2期に限定した評価はA-。
『東京24区』
東京湾上に建造された人工島、「極東法令外特別地区」が舞台のオリジナル・アニメ。この通称“24区”が東京都に組み入れられることが決まった2021年のある日、24区で生まれ育った幼馴染み、シュウタ、ラン、コウキの3人のケータイに、1年前に事故で亡くなったはずのコウキの妹、アスミから助けを求める電話がかかり、その直後、彼らの持つ能力が一時的に超人的なレベルにまで向上する。そしてこの出来事を境に、彼ら3人とその周囲の人々は、24区に隠された秘密と対峙することになる。
『AKIRA』と『デュラララ!!』と『キズナイーバー』を混ぜ合わせたような作品だが、作品の持つスケールは『AKIRA』に、群像劇としての物語の密度は『デュラララ!!』に、明らかになる真相の衝撃は『キズナイーバー』に遠く及ばない。決してつまらなくはないが、かといって面白いとも言えない、この中途半端さは一体何なんだろう?
放っておくと、どんどんとっ散らかって収拾がつかなくなりそうなこの物語を、何とか1クールに破綻なく収めた制作陣の手腕はさすがと言える(とはいえ最終回は一見非常にキレイに大団円を迎えたように見えて、実は問題は何一つ解決してないのだ)が、逆にそれが、この作品が本来持っていたであろうダイナミズムを殺してしまったのかもしれない。
評価は本当に可もなく不可もなしの、C。
『リーマンズクラブ』
スポーツものというと高校生の部活動ものかトッププロものかどちらかかになってしまいがちだが、この作品は企業の中堅クラブチームもので、しかも競技はバドミントン。
この作品はサラリーマンもしているバド選手を描いたものと取るか、バド選手もしているサラリーマンを描いたものと取るかで評価が分かれるかもしれない。私がバドという競技について無知なせいもあると思うが、見ていてバドのエピソードより仕事のエピソードの方がずっと面白いと感じた(もちろん、制作(ライデンフィルム)がバドのシーンで手を抜いている、というわけではない)。主人公の白鳥尊(みこと)とダブルスを組む宮澄建(たつる)が、自分たちのことを誇りを持って“バドリーマン”と呼ぶシーンがあるが、やはり彼らは「バド選手もしているサラリーマン」なのだ。
個人的には、トッププロチームから戦力外通告を受けて図らずもサラリーマン兼バド選手になってしまった尊が、商品企画のコンペを通してサラリーマンとして仕事の面白さに目覚めていくエピソードが好きだが、作品全体としては突出したものがなく盛り上がりに欠ける印象。ただオリジナル作品で1クールにまとめる必要があったことを思えば、やむ得ないか。評価はC~C+。
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