深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

またまた先を越されてしまいました

2008-07-04 00:37:09 | 業界のウラ事情
実は以前から、合間を見ては少しずつ訳していた本があった。Peter Levineの"Waking the Tiger ~Healing Trauma~"という本だ。この本を知ったのはフランクリン・シルズの"Craniosacral Biodynamics Vol.1"を読んでいた時で、その本だけでなくマイケル・ケーンの『ウィズダム・イン・ザ・ボディ』にも、チャールズ・リドリーの『スティルネス』にも、Peter Levineと"Waking the Tiger"のことが言及されていた。それだけでなく、以前『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVOL.2』を翻訳された森川ひろみさんからも、「Peter Levineと"Waking the Tiger"は、クラニオセイクラル・バイオダイナミクスにおける心理面へのアプローチの支柱になっている」と聞いていた。

そんなこともあって、"Waking the Tiger"は"Wisdom in the Body"に続いて買って日本語訳を作っていた。もちろん、上手く全訳できたら出版社に持ち込もうとは思っていたが、ある日、ネットで"Waking the Tiger"について調べていて、こんなブログの記述を見つけてしまった。「トラウマの正体」というタイトルで

今、日本人の方で、「Waking The Tiger~Healing Trauma~PeterA.Levine(1997)」を翻訳している方がいるそうです。僕のサイコセラピストの友人が、アメリカの出版社にこの本の翻訳を打診したところ、日本人で、Levineのトラウマのコースを取ったある方が、ただ今この本を翻訳中ということでした。僕の友人は、たまたまその翻訳をしている人の知り合いでした。まだ日本での発売時期は未定ですが、出版されましたら興味のある方は、是非ご一読をお薦めします。

ちなみに、この記事が書かれたのは2006.09.28。この記事を読んで、"Waking the Tiger"の翻訳を直ちに中止したのは言うまでもない。で、代わりに訳し始めたのが"Stillness"だったりするのだが、実は自分としては、いつ"Waking the Tiger"の日本語版が出るんだろう、ということはずっと気になっていた。本としては前書き等を含めても270ページ程度なので、ある程度そのための時間を取ってやれば、半年くらいで訳し終えられる。その後、編集作業に約3カ月。ブログの書かれた時点で「ただ今この本を翻訳中」ということからして、遅くともブログの書かれた1年後、つまり2007年9月末頃には出るだろう、と予測したのだが、調べても一向に出た形跡がない。

そんなこんなで、ちょっと時間もできたし、日本語版が出た様子もないので、6月末頃から"Waking the Tiger"の翻訳を再開した。てっきり、件(くだん)の人は翻訳を途中で投げ出してしまったのかと思っていた。が、そうではなかった。ちゃんと日本語版は出ていたのだ。タイトルは『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー』。出版は2008年の2月5日なので、ブログの記事から約1年半後。かなり時間がかかっていたことになる。

日本語版が出ていたことがわかった時は正直、ショックだったが、自分の訳はまだ全体の1/6程度しか進んでいない段階だったので、まだ助かった。さっそくamazonでその『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー』を注文して、入手した。まだ全部を読み終えていないが、非常に丁寧ないい訳文だと思う。版元がエンタプライズじゃないので値段も安いし(2300円+税)。

この本は、Levineがフォーカシングをベースに発展させたと思われる、ソマティック・エクスペリエンス(Somatic Experiencing; SE)について述べられているが、むしろそれ以上に、トラウマの構造についての知見が面白い。トラウマというと、一般的には「それが何によって引き起こされたか」を探ることが重要とされているが、Levineの見解はこうだ。

トラウマ症状は、その「引き金となる」事件そのものが引き起こすのではありません。それは、未解決で未放出の凍りついた残余エネルギーから生じるのです。(中略)しばしば奇怪なPTSDの症状は、この「硬直」あるいは「凍りつき」状態に入り、それをくぐり抜けて出ていくというプロセスを完了できないときに発現します。しかしそうした症状は、私たちの内的衝動に働きかけ、エネルギーの平衡を取り戻すことで和らぐのです。

従って、SEによるトラウマ解決処理も、過去の出来事に遡って、その影響を調べるのではなく、動員されながら上手く処理されずに体に残ってしまったエネルギーをいかにに消し去るかに焦点が当てられる。その鍵となるのがフェルト・センスである。

…と偉そうに書いているが、私も実はSEがどういうものなのかまだよくわかっていない。そういうわけで、これからまた『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー』を読んで勉強したいと思いますです。

ああ、それから、気になっていることが1つある。Levineはどう発音するのだろう。『心と身体を~』を訳した藤原千枝子さんは、リヴァインとしているが、以前、森川ひろみさんは、ラヴィーンと発音していた。藤原さんはLevine本人から教えを受けているらしいので、彼女のリヴァインというのが正しいのだと思うが、森川さんの師匠であるシルズもLevineとは親交があるはずなので…。ま、どうでもいいことなんだけどね。ちなみに、私の翻訳ではレヴィーンと訳しています。

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