お薦め度:☆☆☆☆+α
宮部みゆきの「模倣犯」を讀んだ。
以前から氣になつてゐたのだが、私は文庫になるまでは手を出さないと決めてゐる。
通勤途上やベッドの中では、文庫や新書版でないと讀み難くて仕方ないのだ。
宮部みゆきの最高傑作との評價もある本書。
期待に胸を膨らませて讀みはじめた。
實は不安も少し。
といふのも、以前、同じやうに「宮部みゆきの最高傑作」と云はれた
『理由』
は、私にはとてもさうは思へないものだつたからだ。
さて、では本書はどうか?
この作品は「推理小説」ではない。
廣い意味では「ミステリ」の範疇に入るかもしれないが、
むしろ、我々がいま生きてゐるこの日本の社會の病巣を描き出した、といふ觀點からは、
單なる「ミステリ」の枠を遙かに超えてゐると云つて良い。
かう書いてしまふと、なにやら堅苦しくて讀み難いものを想像してしまふかもしれないが、
そんなことは決してない。
主に通勤途上と就寢前のベッドの中で讀んだにも關はらず、10日で5册を讀み了へてしまつた。
つまり、讀んでゐて、次は?その次は?と心が逸るのだ。
それほどに本書の描き出す世界には吸引力がある。
ここでは、ストーリーについての詳細は書かない。
ひとことでいへば、連續誘拐殺人事件について書かれてゐる。
被害者の家族の視點。
犯人の視點。
事件を受け止める世間の視點。
犯人が誰かは書かれてゐる。
どのやうに犯罪が行なはれたかも書かれてゐる。
だから「推理小説」ではない。
しかし、犯行の動機は・・・・
題名が『模倣犯』であるといふ意味は、最後にわかる。
私はこの作品のラストシーンが好きだ。
「風は、また靜かに通り過ぎていつた。」
この一文が、作者の書きたかつたことを暗示してゐる。
確かに、これは「宮部みゆき」の最高傑作である。
「模倣犯」(一) 宮部みゆき
2006年1月23日讀了
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(二) 宮部みゆき
2006年1月24日讀了
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(三) 宮部みゆき
2006年1月27日讀了
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(四) 宮部みゆき
2006年1月29日讀了
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(五) 宮部みゆき
2006年1月29日讀了
お薦め度:☆☆☆☆+α
宮部みゆきの「模倣犯」を讀んだ。
以前から氣になつてゐたのだが、私は文庫になるまでは手を出さないと決めてゐる。
通勤途上やベッドの中では、文庫や新書版でないと讀み難くて仕方ないのだ。
宮部みゆきの最高傑作との評價もある本書。
期待に胸を膨らませて讀みはじめた。
實は不安も少し。
といふのも、以前、同じやうに「宮部みゆきの最高傑作」と云はれた
『理由』
は、私にはとてもさうは思へないものだつたからだ。
さて、では本書はどうか?
この作品は「推理小説」ではない。
廣い意味では「ミステリ」の範疇に入るかもしれないが、
むしろ、我々がいま生きてゐるこの日本の社會の病巣を描き出した、といふ觀點からは、
單なる「ミステリ」の枠を遙かに超えてゐると云つて良い。
かう書いてしまふと、なにやら堅苦しくて讀み難いものを想像してしまふかもしれないが、
そんなことは決してない。
主に通勤途上と就寢前のベッドの中で讀んだにも關はらず、10日で5册を讀み了へてしまつた。
つまり、讀んでゐて、次は?その次は?と心が逸るのだ。
それほどに本書の描き出す世界には吸引力がある。
ここでは、ストーリーについての詳細は書かない。
ひとことでいへば、連續誘拐殺人事件について書かれてゐる。
被害者の家族の視點。
犯人の視點。
事件を受け止める世間の視點。
犯人が誰かは書かれてゐる。
どのやうに犯罪が行なはれたかも書かれてゐる。
だから「推理小説」ではない。
しかし、犯行の動機は・・・・
題名が『模倣犯』であるといふ意味は、最後にわかる。
私はこの作品のラストシーンが好きだ。
「風は、また靜かに通り過ぎていつた。」
この一文が、作者の書きたかつたことを暗示してゐる。
確かに、これは「宮部みゆき」の最高傑作である。
「模倣犯」(一) 宮部みゆき
2006年1月23日讀了
模倣犯1新潮社このアイテムの詳細を見る |
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(二) 宮部みゆき
2006年1月24日讀了
模倣犯2新潮社このアイテムの詳細を見る |
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(三) 宮部みゆき
2006年1月27日讀了
模倣犯3新潮社このアイテムの詳細を見る |
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(四) 宮部みゆき
2006年1月29日讀了
模倣犯〈4〉新潮社このアイテムの詳細を見る |
お薦め度:☆☆☆☆+α
「模倣犯」(五) 宮部みゆき
2006年1月29日讀了
模倣犯〈5〉新潮社このアイテムの詳細を見る |
お薦め度:☆☆☆☆+α
コメントありがたうございます。
宮部作品で1番といふのは決められないですね~
私にとつて、最高傑作はたくさんあるやうです(笑)
その時の氣分で決るかも!
長編ながら、しばらくたつとまた読みたくなり、その度に犯人の心理や読み落としていた点など新たな発見がありますね。
自分にとっては1番がたくさんありますが、これも1番に加えたい作品です。
再度のコメントありがたうございます。
仰るやうに、作品の評價は、それぞれの讀者によつて違ふのでせうね。
人生觀や價値觀の異なる個人がそれぞれのベースに照して讀んで行くのですから、むしろ一致するはうが珍しいでせう。
さらに云へば、評價の前に讀者の嗜好(好き嫌ひ)といふこともあるでせうし。
結局のところ、讀者がその作品から何を得、何を感じたのかといふことが一番大切なことなのではないかと思ひます。
確かにそのように考えると、非常に納得がいきます。やはり『模倣犯』はすごいんだと、改めて思いました。
『理由』について、おしゃっていることは最もだと思います。ぼく自身も「物語世界」に入り込むことに抵抗感を感じました。ただ、ぼくはドキュメンタリー的手法、構成を非常に高く評価しています。これはぼくにとって今まで経験したことのない〈読書体験〉になっています。
物語は様々な捉え方、考え方ができることを改めて感じました。
コメントありがたうございます。
終局の呆氣なさは私も同感です。
私なりに考へたのは、以下のやうなことでした。
「模倣犯」の題材にしてゐる「劇場型犯罪」は、人間の持つ「自己實現慾求」が歪んだカタチで現はれたものだと思ひます。
「自己實現慾求」は人間の持つ慾求のうちで最高度のものだと云はれてゐますが、その他の欲求が滿たしやすい今の世の中にあつて、これだけは依然として充足することが難しい。
なので、たとへば生活のためになされる犯罪が減つて來ても、その分、自己實現のための犯罪が増加してゐるのでせう。
犯罪の動機が自己實現である以上、その犯罪そのものが犯人にとつて自分の分身のやうになります。
奇妙なことですが、犯罪の完成度を否定されることは犯人自身を否定されることと同義になつてしまふのでせう。
從つて、あれほど頭腦明晰な犯人でも、そこを衝かれると脆いのではないかと。
私は宮部みゆきの描きだす「物語世界」が好きなので、「理由」の「ノンフィクションの手法」といふものが、彼女の「物語世界」と相いれないのではないかと感じました。
ぼくは宮部さんの作品がそれほど好きというわけでもないですが、『理由』については佳作であると、それなりに評価しています。『模倣犯』にしてもですが、非常に社会的なテーマを盛り込んだ作品は、佳作傑作になっていると思います。
『模倣犯』に関しては、やはり「劇場型犯罪」を題材にしているだけあって、読みごたえが十分にあったと思います。ただどの作品にも共通かもしれないけど、やはり終局が呆気なかったとは思います。しかし、僕の読んだ彼女の作品ではこの『模倣犯』が最高傑作だと思っているので、そのことは全くもって同感です。
あれから、木村多江さんをネットで調べました。
なるほど、和風の顏立ちですね。
最近は、かういふ古風な顏立ちの人はTVでは見掛けないやうな氣がします。
私としては殘念な?風潮です。
「天人五衰」のラストシーンは、恐ろしい。
『豐饒の海』の世界がひつくりかへります。
どうして『豐饒の海』なのか、考へさせられますよ。
「天人五衰」まで読破していないのがつくづく悔やまれます。
それにしても、夏目雅子さん→八千草薫さんとは!
さすが仙丈さん、正統派の王道、あっぱれ日本男児でございますね(意味不明)。
木村多江さんはあまりメジャーではないかもしれません。
「大奥」では、公家のお姫様で、家光の正室になる役を演じていて、これも古風な顔立ちの彼女によく合っていました。
rookieさんのコメントで気づきましたが、ここはそう言えば「模倣犯」のカテゴリーでしたね(笑)。
「模倣犯」は確かに長大です。
讀みはじめるまでに勇氣が必要です(笑)
でも讀みはじめると、結構短く感じますよ~
犯人がはやく墓穴を掘らないかとじりじりします。
rookieさんもかなり宮部ワールドがお好きなやうですね!
今年のタイガースは若手の成長に期待したいです。
林威助とか喜多とか・・・
あとは濱ちやんの完全復活!
今年も樂しみですね~
宮部さんの小説って、いつも「思わぬ方向からボールが飛んでくる」ような感覚なので、読み始めると止まらない、止められないんですよね(笑)
「模倣犯シリーズ」良かったですか。
別の本を探すためにこの前本屋に行った時、あまりにも長そうなんで逃げたんですけれど(笑)、少し読む気になりました。
財布の話は「長い長い殺人」で正解だと。
私、その本持ってますんで。
かくいう私も、最近までこの本のタイトル名を思い出せませんでした。。。
野球、そろそろですね。
オープン戦が始まるのが待ち遠しいです。
木村多江という女優さん、なんとなくあの人かな?といふイメージはあるのですが自信がありません。
ふと思つたのですが、剃髮して佛門に入るといふイメージが頭のどこかにあつて、それで三藏法師=夏目雅子といふ聯想だつたのかもしれません(笑)
さういふイメージから思ふと、なかなかこれだ!といふ女優さんが浮ばないですね。
「天人五衰」のラストシーンでの聰子。
あれを演じられるのは・・・
これは難し過ぎです!
八千草薫さんまでいつてしまふかな?
あの髪型(といえるのか)にしても、少しも美しさが損なわれなかったのはすごいですね。
何より頭の形もよくなくては。
ところで今、唐沢版「白い巨塔」が昼間に再放送されていますが、
末期のがん患者を演じる木村多江という女優さんに聡子的なものを感じました。
製薬会社の押しの強い営業ウーマンという役どころなのに、優雅な雰囲気が漂っています。
以前夜に放送していたときはあまり気に留めませんでしたが、
今は聡子役のキャスティングが頭の中にあったので、印象強かったのかもしれません。
夏目雅子さんといふと、私は三藏法師を思ひ出します。
三藏法師役を女性がやるといふので吃驚しましたが、なんとも似つかはしい。
夏目雅子さんの清らなイメージのなせる技でした。
佳人薄命とはよくぞ云つたものです・・・
単に美しいというにとどまらず「佳人」の表現がふさわしい人だと思います。
彼女が○○女学館の学生だったころ、
私もそこから遠くない女子校に通っていたため、
勝手に親近感を抱いていました。
それだけに突然の死は衝撃的で、
見ず知らずの人なのに心から悲しいと思ったものです。
「春の雪」の評判もさほどではないのですね。
それは殘念です。
ああいふ透明な結晶のやうな文學作品は、やはり映像に向いてゐないのかもしれませんね。
私の頭の中にあるイメージを、直接的な映像でこはされたくないといふ思ひもします。
聰子役はそれだけに難しいですね。
私の初戀の相手が私のイメージにはぴつたりなんですが(笑)
それとても、私が勝手に作り出した虚像なんですけど・・・
あへて云へば、夏目雅子さんなんかがよかつたかな?
でもこれも、いまとなつてはかなはぬ夢ですね。
私は観ていません。
聡子役の竹内結子は清楚な感じがするし、
超美人でないところがかえってリアルな伯爵令嬢になるのではと思ったのですが。
うちの夫に言わせると、聡子は
「原節子しかいない!」(昭和ヒトケタですか?)のだそうです。
読者(特に男性)は、聡子を理想化しているので、
キャスティングは難しいでしょうね。
「長い長い殺人」、確かに讀んでゐます。
たぶん、お財布が主人公のはそれでせう。
自信はありません・・・
映畫「模倣犯」は惡評サクサクですね(笑)
私はどちらも觀てゐませんが、「模倣犯」は映畫にするには勇氣が要りさう・・・
もしかすると無謀な試みだつたかもしれませんね~
映畫といへば「春の雪」が氣になります。
三島ファンの私としては、ひどい出來榮えだつたら、スクリーンにものを投げてしまひさうです(笑)
ワードは「宮部みゆき」と「お財布が主人公」。
答えは「長い長い殺人」で合っているでしょうか。
私はこの作品は読んだような、読んでいないような。
「理由」も「模倣犯」も映画をDVDで見ましたが、映画は「理由」のほうがよかったと思います。
「模倣犯」はかなり辛抱強く見ていたのですが、
最後のシーンでは思わずブーイングをしたくなったほどです。
コメントありがたうございます。
「登場人物のお財布を中心にしたお話」、ありましたね~
私も讀んだのですがタイトルを思ひ出せません。
なんだつたつけ・・・
あ~、氣持ち惡い!
最近、年の所爲か、人の名前とか、言葉とかが出てこないのです。
認知症への道を歩きはじめたのかもしれません。
私のブログはどちらかというと
読書録というより覚書に近いので
なんだか気恥ずかしいです。
コメントを呼んでいたら
「理由」は皆さんあまりお好きではないのですね。
私もそれほどまでおもしろいとは思いませんでしたが
あれはなんだか試作品のような。
それ以前に登場人物のお財布を中心にしたお話がありましたが
(タイトルは忘れました)
それを財布ぬきで書くとあんな感じになるのかなぁと。
どちらもずいぶん前に読んだのでうろ覚えの感想です。
都筑道夫の「なめくじ長屋」シリーズですね。
ありがたうです。
e-Book Offで搜してみやうかな~
お薦めされると讀んでみたくなりますね!
これからもよい本をたくさんご紹介くださいね。
ちなみに、古いですが、都筑道夫の「なめくじ長屋」シリーズは個人的におすすめです。もう絶版かもしれません。
「ぼんくら」もよいですね~
やはり、宮部みゆきは人情を描かせたら最高です。
それも、たとへば淺田次郎のやうな激しい感動?といふよりも、じんはりとした感動とでもいひますか、ほんのりとした手觸りが素晴らしいと思ひます。
あ、ちなみに淺田次郎の激しい感動も大好きです!
長編では、なんと言っても「ぼんくら」「日暮し」が
一番好きです。
もちろんミステリーでは「火車」かしら・・・
これからも読者をわくわくさせる作品を期待したいですね。
宮部みゆきは私の好きな作家のひとりです。
「時代もの」も好きですし、ミステリーも好きです。
いまのところ、『理由』以外は、すべて讀んでゐて惹きこまれました。
一番好きな作品はと聞かれると、さんざん迷つた揚げ句、『蒲生邸事件』を擧げたいと思ひます。
「二・二六事件」を扱つた作品です。
宮部みゆきの最高傑作だと思っていました。
「模倣犯」、文庫では5冊ですか!
これだけ長いにもかかわらず、
冗長な部分がまったく感じられないのはすごいです。それに、陰惨な事件を描きながら、
おどろおどろしいところがない。
実は、宮部みゆきの文体が
「すっごく好き」というわけではないのですが、
こういうところはさすがだと思います。
轉居のご聯絡ありがたうございました。
さつそくRSSリーダーに登録させて頂きました。
けふからキャンプインですね。
今年もぐゎんばつてタイガースの應援をいたしませう!
阪神と僕@しんです。
2月1日キャンプイン!!
今年は日本一を信じて挑戦者として
阪神タイガースを応援していこうと思っております。
初心に戻るという事で阪神と僕を
ブログ人元のスペースに戻したいと思っております。
阪神と僕
http://shin.blogzine.jp/
今年・・おはつのコメントが
移転連絡となります事深く、お詫び申し上げます。
link等を頂いております場合はお手数をお掛け致しますが
お手透き時に訂正頂ければうれしく思っております。
今年も阪神の試合が見れる時期が近づいて参りました。
o(^^o)(o^^)o わくわくどきどはらはら・・
本当に楽しみです。
今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
追伸、皆様のサイト巡回の為に
コピペであります事深く申し上げますm(_ _)m
コメントありがたうございます。
「理由」は何故あれほど評價が良いのか、私にはさつぱりわかりませんでした。
端的に云つて實驗作、それも失敗したと思つてゐます。
大ざつぱな言ひ方になりますが、「模倣犯」はひとつの事件を複數の視點から描いてゐます。
文庫で云へば、1卷で事件の大筋は被害者の家族の視點から語られてゐます。
第2部ではそれを犯人の視點から描き、そして第3部では、1部2部を踏へて、いはゆる世間の視點で統合してゐます。
なかなか一筋繩ではゆきません。
映畫は觀てゐませんが、觀た人のブログを覗くと、酷評されてゐるやうですね。
原作はいはば犯罪心理が主人公ですから、映像化することでこぼれ落ちる部分が多すぎると思ひます。
よほど巧く料理しないと・・・
観ましたか?
私は宮部みゆきの「江戸物」が大好きです。でも現代物はイマイチ。というかどちらかと言うと嫌いです。仙丈さんが仰るように「理由」は、いつ面白くなるかと期待しながら読み続けましたが、結局最後までつまらなかった。この話のどこが傑作なのか?未だに理解できません。
ですから「模倣犯」も手を出そうか迷っていました。でも仙丈さんの推薦により(?)読んでみたくなりましたよ。
ありがとうございます。