仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

「陰の季節」 横山秀夫

2006-03-25 19:23:49 | 讀書録(ミステリ)
「陰の季節」 横山秀夫

お薦め度:☆☆☆☆
2006年3月24日 讀了


表題作を含む4つの短篇からなる短篇集。
それぞれが獨立したストーリーだが、舞臺は同じD縣警本部。
それも刑事部ではなく警務部の人間が主人公になつてゐる。
つまり、企業で云へば花形の營業部ではなく、縁の下の力持ちである總務部が主役になつてゐる。
しかも、それでゐてミステリーが成立してゐるのである。
さういふ意味で、これは「異色の警察小説」と云へるだらう。

いずれの作品も面白く讀むことができた。
特に表題作は秀逸。
この作品は1998年に第5囘松本清張賞を受賞してゐる。
その際に、「まつたく新しい警察小説の誕生!」といふ激賞を浴びたさうだが、それも納得できる。
「黒い線」に登場する婦人警官の瑞穗はなかなか魅力的。
「鞄」の柘植には心から同情する。


「陰の季節」
警務部警務課の調査官、二渡眞治が主人公。
二渡は40歳で警視に昇任したD縣警の「エース」で、現在42歳。
D縣警の「人事パズル」を擔當してゐる。
人事異動の季節、「ところてん」でポストの割振りをやうやく完成させやうかといふ時に、やつかいな出來事が發生した。
天下り先の理事長となつてゐるOBが、任期が終はらうといふのに退任しないと云ひだしたのだ。
なんとか説得して退任させないと次のOBの行き先が無くなつてしまふ。
それにしても何故、退任しないなどと云ひだしたのか。
二渡の懸命な探索の結果、意外な事實が明らかになつた。

「地の聲」
警務部監察課監察官の新堂隆義が主人公。
「D縣警鑑察課御中」といふ宛て名で、Q署の生活安全課長がパブのママと出來てゐるといふタレコミ文書が屆いた。
Q署の生活安全課長は新堂より5つ年上の55歳で、警部在任期間の長さで話題となる人物。
宛て先に「鑑察課」と誤字が使はれてゐるところを見ると、タレコミしたのはどうやら内部の人物らしい。
いつたい、誰が何のために・・・

「黒い線」
警務部警務課、婦警擔當係長の七尾友子はD縣警の婦人警官たちの取りまとめ役である。
その友子のもとに、鑑識課機動鑑識斑の平野瑞穗巡査が無斷缺勤してゐるとの情報が屆いた。
その前日、瑞穗の描いた似顏繪のお蔭で犯人が逮捕されてゐた。
その記事が朝刊に掲載されたばかりなのだ。
お手柄を立てたばかり瑞穗が、いつたい何故?

「鞄」
警務部祕書課の課長補佐、柘植正樹の職務は「議會對策」だ。
その柘植のもとに、縣議會での一般質問で議員のひとりが、警察に「爆彈質問」をするらしいとの情報が入つた。
質問内容を事前に確認して、囘答を用意しておくのが柘植の仕事なのだ。
その議員に會つて質問の内容を尋ねるが、議員は答へやうとしない。
いつたい、どんな質問をしやうといふのか。
その内容を柘植は事前に知ることが出來るのか。


2006年3月24日讀了。


陰の季節

文藝春秋

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2 コメント

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Unknown (あな)
2006-03-26 06:22:25
TBありがとうございます!

読んでいるジャンルが似ていますね。

これからも宜しくお願い致します~
返信する
こちらこそ! (仙丈)
2006-03-26 08:42:36
あなさん



コメントありがたうございます。

こちらこそ、ヨロシクお願ひしますね~!



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