仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

2/23_「割烹 なかじん」でワイン會

2010-02-27 19:08:50 | 仙丈放浪記
 
 
今囘の京都ひとり旅のメインイベントは、 「割烹 なかじん」 でのワイン會。

わづかにカウンター8席といふ小さな店なので、無理だらうと思ひつつ申込んだのだが、幸ひなことに參加出來ることになつたのである。
日頃自宅で1本1千円程度のワインしか飮まない(飮めない)私には、正直なところ「猫に小判」のやうなイベントではある。
しかし、私にはなかなか飮めないワインが味はへるといふのは、やはり大きな樂しみだ。

寫眞は、 「割烹 なかじん」 の外觀。







河原町六角にあるホテルを出て、六角通りを西に。
時間に餘裕があつたので、高倉三條にある「京都文化博物館」に寄つてみた。
中に入るつもりはなかつたが、外觀寫眞を撮つておかうと思つたのだ。
煉瓦の外壁にライトがあてられてゐて、風情がある。

「割烹 なかじん」 は高倉六角にあるので、ここからは一筋南に歩くだけ。
徒歩2分程度で 「割烹 なかじん」 に到着。



18時45分入店。
ワイン會は19時開始なので少し早過ぎたかと思つたが、すでに2人の先客がゐた。
私の席は、先客の男性の右側。
このかたは常連らしく、店主の中村さんと氣輕に話してをられた。
「一見」の私にとつては少々氣詰まりな時間だつた。

遲れて來られるかたがゐるとのことで、開始は19時15分頃になつた。



<この日のコース内容>

・Champagne  Maurice VESSELLE 2000 RM
 シャンパーニュ モーリス ヴェッセル

・北海道産くも子と北海道産うにの天ぷら

・MONTES ALPHA  Chardonnay CHILE 2004
 モンテス アルファ  シャルドネ  チリ

・昆布森産 殻つき生がき 熊野産無農薬レモン

・Chablis Etablissements Cruse 1983
 シャブリ

・春野菜のサラダ 自家製 鯖のへしこのバーニャカウダソースがけ

・CHOREY LES BEAUNE  DOMAINE TOLLOT BEAUT 2002
 ショレイ レ ボーヌ  ドメーヌ トロ ボー

・麦切りの和風ペペロンチーノ 冷たい暴君ネロ

・CHATEAU GRAND MAYNE  SAINT-EMILION GRAND CRU 2000
 シャトー グランメイヌ

・京丹波瑞穂町産 村田農場地鶏のオーブン焼き ジュのピラフ

・CHATEAU LA PIERRIERE  BORDEAUX COTES DE CASTILLON 1987
 シャトー ラペリエール

・山形県蔵王産 島崎牧場放牧豚のチーズ巻きフライ

・自家製プリン  コーヒー
 Flip upの全粒粉パン、イチジクのチャバティ









最初はシャンパーニュ。
・Champagne  maurice VESSELLE 2000 RM
 シャンパーニュ モーリス ヴェッセル

リンゴに入つた蜜のやうな香りが、いやがうへにも食慾をかき立ててくれる。


料理は、
・北海道産くも子と北海道産うにの天ぷら
で、これがまた美味い。
雲子のネットリしたクリーミィな味はひに雲丹の香りがアクセントを添へ、渾然一體。
天婦羅にしてしまはうといふアイデアが素晴らしいと思ふ。

皿が出されて料理を見た瞬間に食べたいモードに入つてしまひ、寫眞を撮るのを忘れてゐた。
食べ終つてから氣づいて、思はず、「あ!」と聲をあげてしまつた。
「どうしました?」
と中村さん。
私:「あ、いや、寫眞を撮るのを忘れてしまつたもので・・・」
中村さん:「すみません、云へば良かつたですね」
中村さんの所爲ではないのに、あくまでも優しい氣遣ひをして下さる中村さんなのであつた。









1本目の白ワイン。
・MONTES ALPHA  Chardonnay CHILE 2004
 モンテス アルファ  シャルドネ  チリ







・昆布森産 殻つき生がき 熊野産無農薬レモン

牡蠣だ、牡蠣だ!
おいしい牡蠣は生で食べるのが好き。
もちろん、牡蠣フライも好き。
つまり、牡蠣なら大抵好きなのだが、この牡蠣はふつくらと身も厚くて、旨味が凝縮された最高の牡蠣。
白ワインでも勿論よいのだが、日本酒が飮みたくなつてしまつた。
ワイン會に來ておきながら、なんといふことを!









ここで登場したのが、ワクワクドキドキの白ワイン。
・Chablis Etablissements Cruse 1983

ヴィンテージは1983年。
27年前のワインである。
中村さんのお知合ひのかたの土藏から發見されたさうで、ボトルはカビだらけだつたとか。
もちろん、飮める状態であるかどうかは開けてみないとわからない。
もしダメだつた時のために別のワインも用意されてゐた。

27年の歳月で、コルクがとても脆い状態になつてゐた。
中村さんが愼重のうへにも愼重にコルクを引拔きにかかる。
緊張感が漂ひ、中村さんの額にはうつすらと汗が浮び始める。
見てゐる私も手が汗ばんでしまつた。

コルクが途中で千切れてしまふといふアクシデントを乘り越え、無事に拔栓。
ギャラリーから盛大な拍手が起つた。

グラスに注がれたワインは、トパーズのやうな色。
上記の白ワインの寫眞と見比べると、その色合の違ひがわかる。
ここまで深い色合の白ワインを、私は見たことがない。

さて、肝腎の味についてはどうなのか。
不安と期待で、恐る恐る口に含むと、これがじつに複雜な力強い味はひ。
私にはこのワインの味と香りを表現することが出來ない。

中村さんからは、「ゆつくりと飮んでください」と聲がかかつた。
その意味がわかつたのは1時間以上經つてから。
かたく凝縮したやうな味はひから、ふつくらとした優しさを感じる味はひに變化したのである。
これは赤ワインでは經驗することだが、白ワインでもこれだけのヴィンテージになると同樣のことが起るのだ。
こんな經驗が出來ただけでも、このワイン會に參加して良かつたと思つた。







・春野菜のサラダ 自家製 鯖のへしこのバーニャカウダソースがけ

自家製の鯖のへしこを使つて、それをソースにしてしまふ。
料理といふのは創作そのものだと思つた。
一皿目の料理(雲子と雲丹の天婦羅)とともに、私にとつては忘れられない料理となりさうだ。








麥きり製作中。
もともと中村さんは蕎麥屋であつた。
それが、蕎麥アレルギーとなつてしまひ、蕎麥屋を辭めたといふ經歴の持ち主。
麥きりが蕎麥の代用品だといふわけではないが、麥きりを作る姿にかつての蕎麥屋時代の中村さんに思ひを馳せた。

光量不足のなかで、比較的まともな寫眞が撮れたのは、中村さんが寫眞撮影のためにゆつくり作業をしてくれたから。
中村さんはご自身でも寫眞がお好きなやうで、暗いなかで動きのある寫眞を撮るのは難しいことをよくご存じなのだらう。


ここから先、ワインは赤ワインが供されたが、寫眞は割愛。
といふより、私が1枚しか寫眞を撮つてゐなかつた・・・
飮む方が忙しくて。







・麦切りの和風ペペロンチーノ 冷たい暴君ネロ

麥きりを食べるのは初めてのこと。
材料が麥なのでもちろん蕎麥のやうな香りはないが、食感はうどんよりもむしろ蕎麥に近い。
麥で作つた蕎麥(變な表現だけど)といふ感じ。
世の中でもつと作られて良ささうなものだが、見掛けないといふことは、きつと作るのがたいへんだからなのだらう。


「なんで暴君ネロ、なんですか?」
當然出る質問だ。
中村さんがなんとなく照れ臭さうに答へた。
いろいろ前置があつたが、要するに唐辛子(鷹の爪)を使つてゐるからといふことだ。
齒切れよくないなあ。
私は祕かに「ハバネロ」とかけてゐるのではないかと思つたが、さういふ説明はなかつた。
もしかしたら、中村さん、照れてほんとうのところを云へなかつたとか。
いや、これは私の勝手な推測・・・







・京丹波瑞穂町産 村田農場地鶏のオーブン焼き

味の濃い鷄肉。
噛みしめると、鷄の味が口の中に廣がる。
上品な味ながら、鷄肉の旨味をひきだした、野太さを感じた一皿であつた。






・山形県蔵王産 島崎牧場放牧豚のチーズ巻きフライ

サクサクした衣と、しつかりとした豚、さらにとろけるチーズ。
食感だけでも樂しめる。
豚はもちもちとして、美味しかつた。
でも、猫舌の私には危險な一皿。
危ないと思つたので、少し時間をおいてから食べたのだが、それでもチーズにやられてしまつた。
融けたチーズには氣を付けよう!








・(京丹波瑞穂町産 村田農場地鶏のオーブン焼き)ジュのピラフ

中村さんがにこやかにプレゼンして下さつた。
チーズをたつぷりかけて頂く。
ピラフといふよりはパエリア(パエジャ)といふ感じ。
米の芯が殘つてゐて、齒ざはりが良く、米の味がよくわかる。
ジュのピラフ、手間がかかつてゐるのだらう、味がしみてゐて美味しかつた。








こちらは、私の左に座つてをられたHさんの差入れ。
グラッパまで頂けるとは、嬉しい限りだつた。

このHさん、「タダモノではない」オーラが出てゐて、こちらからは話し掛け辛かつた。
でも、Hさんから話し掛けて下さつたので、樂しく食事をすることが出來た。
半分引退、半分現役と仰つてゐたが、これまでの人生の年輪を感じさせるかただつた。
人として、男としての厚みを感じた。
これがダンディズムなのだらうと思ふ。
はたして私はHさんのやうになれるだらうか?
自信はまつたくない。







プリン、美味しかつた!
ふだんあまり食べないのだが、美味しいプリンは美味しいのだ。







食後のコーヒーの準備をしてゐる中村さん。
眞劍な表情。
たかがコーヒーと云ふなかれ。
コーヒーは淹れかたひとつで、美味くも不味くもなるのである。



コースが終つたのが22時半頃だつたと思ふ。
おほむね3時間半。
あつと云ふ間に過ぎた、至福の時間だつた。

美味しい料理と旨いワイン。
素晴らしい料理をつくつて下さつた中村さんと、同じ時間と空間を共有した皆さんに心から感謝する。
食事は、料理とその場の雰圍氣、どちらが缺けても樂しめない。
さういふ意味で、このワイン會は最高だつた。

また是非參加したいものである。





<參考>

中村さんのブログ : 「なかじんのブログ」


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2 コメント

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ありがとうございました! (なかじん)
2010-02-28 10:44:05
仙丈さん、こんにちは。
先日はどうもありがとうございました。
早速ブログを拝見させていただきに参りました。
また機会があればご参加下さい!
返信する
なかじんさん (仙丈)
2010-02-28 11:07:44
コメントありがたうございます!

素晴らしい料理と旨いワイン。
そして、なかじんさんの温かいおもてなしで、樂しい時間を過すことが出來ました。

また伺ふのが樂しみです。
その節はまたよろしくお願ひ致します。

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