「蜻蛉始末」 北森鴻
お薦め度:☆☆☆☆
2006年5月16日読了
北森鴻がかういふ歴史小説を書いてゐるとは知らなかつた。
主人公は藤田觀光などの創始者・藤田傳三郎と、その幼馴染の「とんぼ」こと宇三郎。
宇三郎は、傳三郎の家の使用人の三男で、
「まるで剥き出したやうな大きな眼にいつも愚鈍な光を宿してゐる」ために「とんぼ」と渾名されてゐる。
傳三郎に馬鹿にされ、毆られたり蹴られたりしながらも、いつもひつそりと傳三郎に寄り添ひ、傳三郎の役に立たうと陰で頑張つてゐる。
長州出身で、高杉晉作の創設した奇兵隊の一員であつた二人は、幕末から明治維新の激動の時代に飜弄されつつも、
ともに人生を歩み、別れ、再會し、擦れ違ひ、對決し、決別する。
かういふ人がゐたといふことを初めて知つた。
明治11年の「藤田組贋札事件」からこの物語は始まるが、かういふ事件があつたことも初めて知つた。
この作品を讀んで、幕末から明治への移り變りには、大きな變革があつたのだといふことを改めて感じた。
明治の元勳といはれる伊藤博文、山形有朋、井上馨なども登場するが、國を動かす熱意といつたものを感じさせられた。
主人公は二人と書いたが、嚴密には宇三郎である。
彼の傳三郎への友情といふか愛情といふか、その思ひにはこころ打たれるものがある。
ほんのちよつとした擦れ違ひから、二人が對決してしまふことになるのは、哀しいことだ。
宇三郎の最期のひとこと、「六さん!」には感動した。
ミステリーではないが、北森鴻の作品の中では獨自の輝きを持つた、好感の持てる作品である。
2006年5月16日讀了
お薦め度:☆☆☆☆
2006年5月16日読了
北森鴻がかういふ歴史小説を書いてゐるとは知らなかつた。
主人公は藤田觀光などの創始者・藤田傳三郎と、その幼馴染の「とんぼ」こと宇三郎。
宇三郎は、傳三郎の家の使用人の三男で、
「まるで剥き出したやうな大きな眼にいつも愚鈍な光を宿してゐる」ために「とんぼ」と渾名されてゐる。
傳三郎に馬鹿にされ、毆られたり蹴られたりしながらも、いつもひつそりと傳三郎に寄り添ひ、傳三郎の役に立たうと陰で頑張つてゐる。
長州出身で、高杉晉作の創設した奇兵隊の一員であつた二人は、幕末から明治維新の激動の時代に飜弄されつつも、
ともに人生を歩み、別れ、再會し、擦れ違ひ、對決し、決別する。
かういふ人がゐたといふことを初めて知つた。
明治11年の「藤田組贋札事件」からこの物語は始まるが、かういふ事件があつたことも初めて知つた。
この作品を讀んで、幕末から明治への移り變りには、大きな變革があつたのだといふことを改めて感じた。
明治の元勳といはれる伊藤博文、山形有朋、井上馨なども登場するが、國を動かす熱意といつたものを感じさせられた。
主人公は二人と書いたが、嚴密には宇三郎である。
彼の傳三郎への友情といふか愛情といふか、その思ひにはこころ打たれるものがある。
ほんのちよつとした擦れ違ひから、二人が對決してしまふことになるのは、哀しいことだ。
宇三郎の最期のひとこと、「六さん!」には感動した。
ミステリーではないが、北森鴻の作品の中では獨自の輝きを持つた、好感の持てる作品である。
2006年5月16日讀了
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