池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

オーケストラ・プロジェクト2009

2009-10-15 | レビュー/作曲

東京芸術劇場で「オーケストラ・プロジェクト2009」を聴く。小鍛冶邦隆指揮、東京交響楽団

小鍛冶邦隆/オーケストラのための〈ドゥーブル・レゾナンスⅢ〉
ブロック作法。音響のプランを構成する職人的作曲法。現代のヨーロッパ音楽語法をなぞる。持続音やスキップ音型、トリルなどが不協和音の帯となる…音色重視。ダイナミクスの変化は少ない。
序、ピアノのトリガーをオケが受ける。弦のピッチカートの背後に木管のクラスターとチューブラ・ベルが加わる箇所は、自分が芸大に入学した年に初めて書いたオケの習作と同じアイデアで嬉しい。ビブラフォンとマリンバの音型が金管に刻印され、終わる。

中川俊郎/〈曲率〉オーケストラのための
演奏が始まり間もなく中川氏が協奏曲のソリストの席に着く。水平にセットされた譜面台には数多のおもちゃ。それを鳴らしたり、紙をくしゃくしゃにしたり、金管の弱音器を転がしたり、電気髭剃りで髭を剃ったり…電池式の携帯オルガンをナンセンスなソロで2分以上も弾く度胸にはただ呆れる。ただしオケの書法は研ぎ澄まされ振幅が大きく、おもちゃ類の雑音も驚くべき調和を遂げている。
終盤、前衛作品でよくある指揮者の身振りを氏みずから諧謔的に演じるなどは、旧き前衛への批判的デモンストレーションか。

法倉雅紀/〈炎(かぎろひ)の祭禮〉オーケストラの為の
換言すれば「韓国に帰化した日本人作曲家」の作品。室内オケ「延喜の祭禮Ⅱ」と同じ出だし、ただ大太鼓は2つ。これもブロック作法の一つだが音楽言語は韓国。左端にピアノ、右端にハープを据え、マイルドな微分音の和音。
中間部は弦の浮遊する和音にオーボエが絡み、オーボエの微分音ずれたA音で終止。同じA音をトランペットがフォルテで受け、カオスの終盤に突入する。その背後にA音が見え隠れする巧みさ。クライマックスで弦が3度音型を執拗に反復する。クレッシェンドの途中で曲は閉じる。

小坂直敏/〈驥尾(きび)焚き火(たきび)キビタキ、ユビキタス逆引き〉コンピュータとオーケストラのための
長三和音も排除しない19世紀言語にコンピュータを導入した事で現代の証しを得る。語法に比べ構成は長大で晦渋。
冒頭、コントラバスのハーモニクス・グリッサンドから弦が立ち上る。コンピュータがピッチのある銅鑼のような音や鳥のさえずりで加わる。
やがてタタタタ…という等価リズムがコンピュータやオケに受け継がれ、「タイトルの言葉の音響化か」と推測した矢先、オケの男性メンバーが「ユビキタス…」と唱える種明かし。
長大な中間部は管打のみ。ホルンのフランク風コラール。次いで弦のみになりクライマックスは壮大なトゥッティ。しかし終わらず、序を逆に辿る。



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8 コメント

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先生おひさしぶりです。 (norisuke)
2009-10-18 00:48:41
石川県の西田です。
最近はArabesqueだけでなくMusicLibrary も拝聴させてもらっています。
現代音楽はまだ苦手ですが、少なからず興味があります。よく聴いているとロマン派の音楽以上にすばらしかったり美しいと感じることもあります。
それにしても先生、辛口ですね。でもぼくの持っているヒンデミットの和声学の巻末には「作曲するすべて人の中のごくわずかな割合だけが、真に才能ある作曲家であって、しかも常にきびしい批判を受ける危険がある」と書かれているのでそのことを思い出しました。このことについてどう思われますか。
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norisukeさん、 (I)
2009-10-18 04:46:57
ご愛読、ご愛聴ありがとうございます。
ヒンデミットの言葉は全くその通りです。
相手が素人なら本音などだれも言いません。
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貴紀(タカノリ)と申します (島村平井の松瀬)
2009-10-19 00:06:51
池田先生お久しぶりです。
島村ミュージックサロン平井で池田先生からの受講が他の先生になってから
約6年たった頃でしょうか
ブログの方も頻繁に更新されていて、
元気のようですね。
私の初めてのピアノの先生でしたね。
少し辛口な思い出があります(笑
今もピアノは同じ場所でレッスンを受けており、かれこれ9年目に入ると思います。
学校でも伴奏をする機会が多くあり、合唱曲などで伴奏をやっております。
今は池田先生のように個人的に自分で作曲をして楽しむこともありますし、
エレキベースをかなり前に趣味の一環としてやっております。
私はバンドリーダーでもあり、リズムとして重要な役割を担っていたりもします。
当たり前のようですがなかなか難しいものですね(笑
エレキベースを初めてから、いろんな曲のベースを弾くために譜面を書くことが多く
譜面(TAB)を書き込む技術も少し向上したかな? なんて思ってるんですけど
池田先生ほど すらすらっとは書けませんよ・・・。
レッスン中にささっと数分で書いてくれる池田先生にスキルに脱帽です。

ああ、そういえば池田先生からのレッスンについてですが、
先生のおかげで相対音感ではなく絶対音感がついたようです(笑
習い始めはピアノを弾くより ド ミ ソ などの和音を聞いて書き取りとかしてましたよね。
先生が覚えていらっしゃるかはわかりませんが・・・。
今思うと 「ああ・・Cコード G ... 」 とかふと思ったりして 今やっているエレキベースやギターなどに
とても役立っています、実はたまにバンド友達から「あの曲の譜面書いてくれない?」 なんて言われることもしばしば。
みんなできることなのかなぁとは思っていたのですがそうでもないようですね。
この譜面作成能力 絶対音感 全て先生のおかげです 本当に感謝しております。
今では言いたくても言い切れないほどです・・・。

私は現在受験生です、勉強も音楽も頑張るので
先生も頑張ってください。

おおっと・・過去を思い出して泣いてしまった。



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貴紀君、力作のコメントありがとう。 (I)
2009-10-19 02:35:32
君の事はこのブログ;2005年12月9日の記事「千夜一夜Lesson」に書いたように、よく覚えています。
一般的にまず男の子が珍しいし、長く通っていた生徒ほど覚えているし、20年レッスンした中で、最初の時期や最後の生徒は忘れ難いです。
そしてそれ以上に君の場合は…
レッスン前はトイレに行き、石鹸の匂いをさせて入室する。
しばしば友達とロビーでひと暴れしてからレッスンに入る。
「ラーニング・トゥ・プレイ」の「ホッピング」が好きで、合格してもずっと暗譜で弾いていた。
割とメランコリックで、「今日は一つもいい事が無かった」と夕方のレッスンに来るので、「じゃあこれからレッスンでいいこと作ろうよ」と僕が言ったりした。
君がとんまなことをしたとき僕が大口開けて笑ったら、「やっと先生、心を開いてくれた…」とかえって喜ばれた。
血液型が同じ。
まだまだいくつも書けるけど、この辺で。
高校受験、しっかりやれ!
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先生、いつもお世話になっております。norisukeで... (norisuke)
2009-10-27 00:11:36
和声の原理と実習(音楽之友社)には七音は二度下行するとか、強拍の七音は基本形や五六の和音ではソプラノに置くとかが書かれているのですが、例えば
Asの調でⅥ6(Ⅵの五六の和音)→Ⅴ6
       5               5
(Ⅴの五六の和音)の時、ソプラノの動きはどうなりますか。楽譜で説明できないので誠に申しわけございませんがとりあえず下から順にヘ音譜表第一間にバスのAs、第四線にテノールのF(ヘ音記号の:の間)、ト音譜表下第一線にアルトのC、第一線にソプラノのEsと置き、次にⅤの五六の和音なのでヘ音譜表第一線にバスのG、第三間にテノールのEsを、ト音譜表下第二間にアルトのB、下第一間にソプラノのDesという風に置きました。
すると見事にアルトとテノールで平行五度が、さらにソプラノとバスの外声にも平行五度ができてしまうのです。
この場合はソプラノの二度下行は避けた方がいいのでしょうか?ちなみにヒンデミットの和声学(音楽之友社)には副七の和音を使う時は平行五度の禁則を守らなくてもよいと書いてはあるものの外声部間の平行五度は絶対に避けなければならないと書かれています。
その課題には和音記号が書かれているのでバスの音は変えることができません。とりあえずソプラノの音を変えてみます。
非常にわずらわしいコメントを書き申し訳ございませんでした。
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norisukeさん、 (I)
2009-10-27 00:37:01
だんだん高度な内容になってきましたね。
第7音は保留しても良いのですよ。

台風は今夜通過するようです。
ではまた、レッスンで。
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こんにちは、先生。norisukeです。 (norisuke)
2009-10-28 12:14:45
コメントありがとうございます。

そうですか。保留ですか。その手があったんですね。
わかりました。さっそく見直してみます。
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少し時間が経ってますね。 中川俊郎氏の作品 非... (Amicizia)
2009-11-17 22:36:14
少し時間が経ってますね。 中川俊郎氏の作品 非常に気になります。 ぜひそのコンサート見たかった。 非常に悔やまれます。 どこにもそのコンサートの情景をつたえるものが無いのでわかりませんが・・・・・・私の好きな作曲家だけに。
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