学習カテゴリーに初めて投稿。ドイツ生まれのハインリッヒ、シュリーマンは、ホメロスの古代詩に魅せられ、貧困の中からインジゴの取引によって財をなし、44歳のとき引退してすべての財をなげうって、少年時代の夢、考古学に没頭。このとき日本は明治維新、そのさ中、横浜と江戸にも来た。そしてトロイ、ミュケーナイ、ティーリュンスを発掘、1890年六十八年の生涯を閉じアテネに永眠。彼が読み書き話せる外国語は実に、英語、フランス語、オランダ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、ギリシャ語、ラテン語、アラビア語など十か国語以上。少年の夢を生涯追い続け、数々の歴史的発見をなしとげた発掘王が自伝に曰く「少年時代の貧困こそが、そして、一生懸命勉強すれば、この貧困から抜け出せるという確実な見通しこそが、何にもまして私をはげまして勉強させたのである。私はこのとき、必要に迫られて、外国語習得法をひとつ見つけたが、この方法を用いるとどんな外国語もひじょうに楽に覚えられる」と。鉄人のやりかたが、凡人にも通用するなら、われら語学留学生にとっても福音。どれどれ、、、。
1.先ず声を出して多読する。
2.短文を訳す。
3.一日一時間は勉強する。
4.興味あることについて、いつも作文を書く。
5.その作文を先生に訂正してもらい、暗誦する。
6.日曜日に教会へ通い、説教の一言一句を小声で繰り返す。
7.出かける時は、手に本を持って、待ち時間には、何かを暗誦する。
こうすると、三ヶ月後には、予め注意深く熟読しておくと、20ページにわたって印刷された散文を先生の前で一字一句間違えずに、らくらくと暗誦できるようになった。
眠れなくて、目がさめている夜の時間は、晩に読んだことを、頭の中でもう一度繰り返してすごした。記憶力というものは、夜の方が、昼よりもはるかに集中される。私は、初めて学んだ外国語である英語に半年で精通した。
強烈な目的意識、並外れた集中力があったとはいえ、シュリーマンのとった方法は、凡人の想像を絶するものではない。不肖、ぼくも6を除き、一応全部試みた。シュリーマンとの差は、強烈な目的意識と持久力。蘇州在住五年経過も、漢語一言語でさえ精通には程遠い。
すべてを従えて夢に向かって力強く前進する人生はまぶしい。シュリーマンの仕事の忠実な協力者だったデルプフェルトは友人として、また、ドイツ学会の代表者として、こう告別の言葉を呼びかけた「安らかに休んでください。あなたは十分に仕事をなさいました!」
半世紀後に生まれたぼくらにも、彼がバトンを渡そうとしているような気がする。気がつくのが遅かったか?まだ、間に合うか?
ついでながら、ねた本は、機上で読んだ角川文庫2466シュリーマン著、佐藤牧夫訳「古代への情熱―シュリーマン自伝」25頁。
題して「日本人が中国語のしっぽをつかまえるには?どうやる?」
●中国語の音素と英語、フランス語の音素はほぼ同じ
欧米人は中国語聴き取り力をすばやく身につける。それは、自分の聞きなれたたネイティブな音が耳に入ってくるので音としてとらえやすいから。しかも、中国語のふりがなであるピインはローマ字なので書きなれている。ただし、表記されたローマ字の読み方の約束は英語読みともフランス語読みとも違うので、その約束事は覚えなければならない。それに、四声も彼らのアクセントとは微妙に異るので、彼らはよく間違える。彼らが一番苦労するのは漢字。これは一から覚えなくてはならない。そこで、ピインで授業があるうちはどんどん先行していた成績が、教科書からピインが消えたとたんついて行けなくなる。がんばる子はいっしょうけんめい漢字へピインを振って読んでいるが、所詮漢字を覚えなければ先へは進めない。漢字を書くに至ってはまるでパズル。書き順のルールが覚えられない。漢字だけの教科書になると、彼等の大部分が、それ以上の学習をあきらめる。従って、上級班は日本人と韓国人だけ。ピインだけでさらに上級をめざすサポートはできないものか?あれだけ聞き、話せる欧米人をおきざりにするのはもったいない気がする。仮に、彼等が帰国して中国語を教えようとしても、母国の生徒は漢字へはついてこれない。いきおい、ピインだけで教えるほかはない。中国語を世界へ向けて普及するには、この言語を欧米においてだけでも、漢字のしがらみから開放するしかないように思う。
日本語のキイを大正琴とすると、中国語のキイはグランドピアノ
日本人は耳に入ってくる中国語の音を正確に捉えられない。しかたなく、視覚の助けを借りて、漢字に音を載せて捉える。漢字を媒体にすることが、一見有利なようで、マイナスにはたらく。音から入るべき語学学習を文字から入ったつけ。とはいえ、漢字を母語の中で常用しているのは、目下、中国以外では日本だけ。中国簡体字と日本漢字に若干の差異はあるものの基になる字は容易に類推できるし、単語の意味は共通するものがほとんど。しかも熟語に共通点が多いので、教材のレベルが上がるほど、日本語の熟語の知識の出番が増える。なかでも、明治時代に福沢諭吉が西洋文明を翻訳する際造語した近代政治、科学、哲学用語は中国に逆輸入されたので、この分野の熟語は日中共通している。この優位さを捨てがたいところが、中国語を学習する日本人の泣きどころ。ハイレベルになったら、この優位性はいかんなく発揮できるのだから、初学時は、暫時漢字を封印して、欧米人と同じように、いやむしろ欧米人の後について、発音に耳を傾けたがよかろう。
音と漢字のいいとこどり
日本人は音と文字の両方のいいとこ取りができる。先ずは、欧米人と同じに、音から入り、ピインが教科書から消えたら、漢字の知識を総動員すればよい。はじめは、耳から入ってくる音をピインで書き留める。早い人で三ヶ月かかる。これが出来るようになって、はじめて漢字解禁。小学生が平かなを書けるようになって、漢字を覚えるのと同じ。発音を正確に聞き取るには、ピインのディクテイションは欠かせない。
文法は聴き取りが出来れば身につく
文法はもともとことばの順序や習慣にあとで理屈をつけたもので、初学時学習の助けにはなるが、文法の先生になる人以外は、身についたら忘れてもいい。どうやって身につけるか? 聴き取りを繰り返せば、自然に身につく。更にリピート。つまり、暗記。中国語の語順は屈折語系で欧米言語に近いが、時制、格、単数複数などで語形が変化する習慣はないし、冠詞もほとんどない。つまり、欧米語に比べて文法として学習すべき要素は少ないが、反面文法的に説明のつけにくい言い回しが多くでてくる。特に、動詞のあとにくる副詞の数はやたら多いし、その挟みかたも多様で、ニュアンスが少しづつ違う。慣れる以外にマスターする方法はない。教室でも老師が解説に困ってしばしば言う。中国ではそう言うんです!文法もくそもない。老師に食い下がっても、きらわれるだけ。割り切ってヒヤリングとトークに力を入れたほうがいい。ほかの初心者が話すのを聞いて、どうも中国の老百姓はそういうふうには言わないんじゃあないか?という感覚が出てきたら、文法というか言葉そのものが身についてきている。あとは、自分がほっといても、老百姓がほっとかない。