拈華微笑 ネンゲ・ミショウ

我が琴線に触れる 森羅万象を
写・文で日記す。

 『ワイルド・ソウル』 垣根涼介著を読んで

2014年08月31日 | 観自在
 『棄民』・・・という言葉、ボクは2011年の3・11の後ツイッターやブログを読むことで 覚えた言葉。
 それが、たまたま今回我が『引越し文庫』に手に取ったのが『ワイルド・ソウル』垣根涼介著で この本の中で『棄民』政策・・・という言葉を
 見つけてボクの目は釘付けになってしまった。

 P85~ ブラジル移民のみでも、1953年~61年までの9年間だけで、約42500人の日本人が海を渡ってきている。
     ろくに現地調査も行わないまま現地政府といい加減な取り決めを交わし、蜜の誘い文句で移民たちを未開の地に送り込んだ後は
     知らぬ存ぜぬを決め込む。
     いったい中南米全体で、どれほど多くの人間が路頭に迷い、虚しく土くれと帰していったのか。目眩を通り越して吐き気さえ覚えた。
     許せなかった。日本政府も外務省も、そしてブラジル政府もクソ喰らえだと思った。
     と同時に、国家などという得体の知れぬものを妄信していた自分が甘かったのだと思い知った。・・・・

  1963年には なんと日本人入植者すべてからパスポートを没収し始める暴挙にで、移動の自由を奪い、死ぬまでその土地に縛りつけるブラジル政府側
  の政策に日本の外務省は了承した。

 P69~ 俺たちは棄てられた民だ。そもそもアマゾンへの移民事業自体が、戦後の食糧難時代に端を発した口減らし政策だったのだ。
     国と外務省が推し進めた棄民プロジェクトだったのだと。

  フラジル移民の話は子供の頃『ほんのちょっと耳にした』ことがある。だから、ブラジルには日本人の二世、三世が住んでいる事も知っていた。
  だけど、この本を読むまで こんなだったとは 全く知らなかった。

  いま、フランスのテレビ番組でも 無人島なんかに10人程度の応募者を連れて行って 何人が取り決められた日まで生き残れるか・・・みたいな
  サバイバルゲーム的 番組があるが、 当時のブラジル移民はまさに 無期限のサバイバルゲームにその事を知らされず言語道断な超過酷な環境に
  有無も言わされず放り出される・・・という信じられない事が1950~60年代、実際にあったと言う事に 今更ながらショックを受ける。

  この本を読むと『棄民政策』というのは実に今に始まったことではないことがよくわかる。
  政府、外務省がいかに いい加減であるか、この本の随所に記載されていて、そのたびにボクはこの本が書かれた年度2003年を確認したものだ。

  そして、いかに自分が 自国の歴史、政治そして経済を含めた社会について 無知であるかを痛感するのだった。
  
  垣根涼介とう名前は初めて聞いたが、ネット調すると、ハードボイルド小説家として大沢在昌ばりで、ファンも沢山いるようで、
  ボクも今回のこの本を読んで 彼の別な本を読みたくなり キンドル版で『月は怒らない』を購入してしまった。
 


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