あそび心575

 酔生夢死を楽しみたいのですが、与命僅か。遺す未練も後生の楽しみ。 
 交心もらえるとハッピーです。 

あそび心575xtx1901『 青柳 仁 投句掲載作品集 』

2025-02-19 13:05:51 | あそび心575

 

 
★☆★☆★☆★ ★ 青柳 仁 投句掲載作品集 ★ ★☆★☆★☆★

 

 


★★★★★★     一九八九年  一九九〇年   ★★★★★★

 

         一九八九年六月十日

          毎日俳壇・岡本眸選・佳作


  春 暁 や 庭 に 音 し て 父 の あ り             

 


★★★    一九八九年十一月一六日号
      週刊文春・草間時彦選・佳作


  膝 抱 き て 溝 蕎 麦 と 暫 し 戯 れ ぬ   

 


         
★★★     一九九〇年一月二十日
      毎日俳壇・岡本眸選・特選


  掌 に 月 載 せ て み る 寒 さ か な     
         

  【評】 凍夜の月を「月一輪」と詠んだ橋本多佳子の句がある。この掌もまた一輪の花のよう。

 


★★★      一九九〇年四月号
     俳句研究・藤田湘子選・佳作


  山 に 来 て 草 焼 き 遊 ぶ 妻 な り し 
  

 

★★★     一九九〇年七月一二日号
      週刊文春・草間時彦選・佳作


  ど く だ み の 花 や あ つ さ の 夕 ま ぐ れ       

 


★★★     一九九〇年十二月号
     俳壇雑詠・細見綾子選・佳作


  ね こ じ ゃ ら し 露 に 旭 の 戯 れ て     
       

   同・能村登四郎選・佳作


  ク ラ ス 会 物 故 者 を 語 る 夜 の 秋      
     

 

★★★      一九九〇年十二月一日
      毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  遠 く 来 て 四 十 路 ひ と り の 花 野 か な       

 

★★★     一九九〇年十二月八日
      毎日俳壇・岡本眸選・佳作


  五 つ 六 つ 星 数 へ け り 鰯 雲           
     


  ★  俳壇雑詠・井本農一選・佳作


  友 は パ リ 吾 は 柳 川 棕 櫚 の 花         
     

 ★  同・桂信子選・佳作


  竹 落 葉 つ も り て 妻 の 歩 き だ す       
     

 

 

★★★★★★     一九九一年     ★★★★★★

 

 

 


★★★      一九九一年二月号
     俳壇雑詠・細見綾子選・佳作


  遺 さ れ し 身 の 置 き 処 花 野 か な         
   

 

★★★      一九九一年二月七日号
      週刊文春・草間時彦選・佳作


  四 囲 あ は く む ら さ き に 明 け 初 氷         

 


★★★      一九九一年二月二日
      毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  紫 の 僧 衣 目 に し む 雪 催 ひ               

 


★★★      一九九一年二月二八日号
       週刊文春・草間時彦選・佳作


  冬 の 虹 わ れ に も 恋 の 残 り し や           

 


★★★      一九九一年三月一六日
      毎日俳壇・飯田龍太選・佳作


  心 と て 老 い の 形 あ り 冬 三 日 月       
     

 

★★★      一九九一年四月号
      俳壇雑詠・細見綾子選・佳作


 葱 の 香 の に ほ ふ 指 に て 起 さ れ き         

 


★★★     一九九一年三月三十日
      毎日俳壇・岡本眸選・佳作


  退 学 の 子 と 雪 の 庭 歩 き け り      
        

 

★★★      一九九一年六月三日
        西日本新聞・森澄雄選


  参 道 の 雨 に 踏 み 行 く 櫻 蘂          
      

 

★★★      一九九一年五月号
     俳壇雑詠・桂信子選・佳作


  雑 木 の 芽 わ っ と お こ り し 雨 の 後         

 


★★★    一九九一年五月号
    俳句研究・藤田湘子選・佳作


  冬 麗 や 空 席 多 き 列 車 ゆ く        
        

 

★★★    一九九一年六月二十日号
     週刊文春・草間時彦選・佳作
   

  茄 子 南 瓜 ト マ ト ピ ー マ ン 父 植 ゑ き             

 

★★★    一九九一年八月号
    俳句研究・岡本眸選・佳作


  花 栗 の 匂 ひ 来 る 夜 や 書 を 閉 ぢ ぬ         

 


★★★    一九九一年八月三日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


 捨 て 苗 や 里 居 も 長 く な り に け り          

 


★★★    一九九一年九月号
    俳壇雑詠・井本農一選・佳作

 


 早 苗 田 の 鷺 の 辮 髪 靡 き け り             

 

   同・桂信子選・佳作


  枇 杷 熟 れ し 友 は 過 労 に 倒 れ け り         

 


★★★    一九九一年八月一七日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  吹 割 の 滝 に 生 ま る る 夏 の 蝶             

 


 ★★★   一九九一年九月一四日
    毎日俳壇・飯田龍太選・特選


  鮟 鱇 の 如 夏 の 夜 の 滑 走 路     
           

  【評】 この場合は食味と関係のない魚の異形。感覚そのものの句だが、目をそむけるわけにはいかない把握。

 


★★★    一九九一年十月号
    俳句・田川飛旅子選・佳作


  菩 提 樹 の 落 花 一 面 の 朝 か な             

 


★★★    一九九一年九月二八日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  傍 に い る だ け の 孝 行 夜 の 秋       
       

 

★★★    一九九一年十月五日
    毎日俳壇・堀口星眠選・準特選


  装 ひ し 山 や 狐 の お 嫁 入 り        
        

   【評】 狐の嫁入りは日照雨(そばえ)。上五は紅葉する秋山の姿。季節感を巧みに出している。

   同・岡本眸選・佳作


  狐 道 の こ し て 草 の も み ぢ か な           

 


★★★    一九九一年十月一二日
    毎日俳壇・岡本眸選・特選


 あ さ が ほ や 暁 の 火 山 灰 ふ り は ら ひ   
     

   【評】 振りかかる火山灰を払いのけるように身震いして開く朝顔。その可憐で、偉大な力、生命。

 


★★★    一九九一年十一月号
    俳壇雑詠・井本農一選・佳作


  道 の 辺 に 交 ふ や 雀 の 束 の 間 を           


    同・桂信子選・佳作


  翡 翠 の 沢 翔 け て 瑠 璃 残 し け り           

 


★★★    一九九一年
    サンデー毎日・富士真奈美選・佳作


  秋 の 来 て 味 噌 汁 味 の 濃 く な り ぬ         

 


★★★    一九九一年十一月二日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  高 千 穂 の ゆ か し き 落 葉 光 り つ ゝ         

 


 ★★★   一九九一年十一月三日
    朝日俳壇・金子兜太選・


  露 草 の 露 無 頓 着 無 頓 着                 

 

 

 

 

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★★★★★★     一九九二年   ★★★★★★

 

 


★★★    一九九二年一月号
    俳壇雑詠・阿波野青畝選・佳作


  蚯 蚓 鳴 く 正 体 見 む と 屈 み こ む           

 


 ★★★   一九九二年一月号
     月刊カドカワ・角川春樹選・佳作


  い わ し 雲 あ り て は な や ぐ け ふ の 月       

 


★★★    一九九二年一月一六日号
    週刊文春・草間時彦選・佳作


  月 明 に 案 山 子 ぴ ょ ん ぴ ょ ん 跳 ね に け り    

 


★★★    一九九二年二月号
    俳句研究・岡本眸選・佳作


  謙 譲 の 美 徳 と は 死 語 枇 杷 の 花           

★★★    一九九二年二月号
    俳壇雑詠・山口誓子選・佳作


  木 の 実 落 つ そ の 後 息 を 止 め て 聞 く       


   同・能村登四郎選・佳作

  白 鷺 の ま だ 動 か ざ り 菱 紅 葉             

 


 ★★★   一九九二年三月一六日
    西日本新聞・森澄雄選


  さ び 色 の 杉 山 幾 重 雪 降 り つ ぐ           

 


★★★    一九九二年五月号
    俳壇雑詠・桂信子選・佳作


  垣 間 見 し 少 年 の 記 憶 竜 の 玉             

 


★★★    一九九二年五月号
    俳句・星野麦丘人選・佳作

 


  心 病 む 子 と 語 ら ひ ぬ 梅 真 白             

 


★★★    一九九二年六月号
    俳句研究・藤田湘子選・佳作


  夕 月 の か す か に 赤 き 花 あ し び           

 


★★★     一九九二年七月号
    俳壇雑詠・山田みづえ選・秀逸


  山 の 樹 の 根 こ そ ぎ の ま ま ひ こ ば ゆ る     

 


★★★    一九九二年六月一三日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  ま っ す ぐ に 落 ち て い た ま ず ゑ ご の 花     

 


★★★    一九九二年六月一二日号
    週刊文春・草間時彦選・佳作


  ひ と り き て 一 人 静 と あ ひ に け り         

 


★★★    一九九二年八月八日
    毎日俳壇・飯田龍太選・準特選

 


  西 瓜 割 る 子 の 手 不 安 と 恍 惚 と        
    

  【評】 つまり行楽の場合。年齢の想像は読者の自由でいいが、見る側の気持ちもいつか同体。


   同・堀口星眠選・佳作


  一 面 に 咲 い て さ び し や 姫 女 苑           

 


★★★    一九九二年 月 日号
    週刊文春・草間時彦選・佳作


  吾 亦 紅 わ れ も 恋 ふ な り 汝 が 黒 子         

 


★★★    一九九二年八月二十七日号
    週刊文春・草間時彦選・佳作


  捨 て 苗 の 束 の ま ゝ に て 枯 れ に け り      

 


★★★    一九九二年十月号
    月刊カドカワ・角川春樹選・佳作


  螢 出 て 忽 ち 闇 の 濃 く な り ぬ             

 

 

★★★    一九九二年十月号・俳句
     平成俳壇・深谷雄大選・推薦


  暝 想 に 似 て 強 力 の 汗 の 顔             
   

   【評】 第一句。「暝想」と「強力」(ごうりき)は、両極をなすものだが、それを絞りに絞って重ねてみせたところが凄い。念力とでも云うべき一心の力は、こういうものだろうか。反対のものをぶっつけ合って、それをバネにして真実を表す、俳句の骨法に叶う句である。

 


★★★     一九九二年十月号
    俳壇雑詠・桂信子選・佳作


  夏 の 蝶 淡 海 の か な た よ り 来 た る         


  同・井本農一選・佳作


  秋 の 蝶 光 り つ 翳 り つ 湖 渡 る             


   同・神尾久美子選・佳作


  女 郎 花 い か な る 人 の 化 身 か な           

 


★★★    一九九二年一二月一二日
     毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  水 澄 み し 滝 口 に 日 の 当 た り け り         

 


★★★    一九九二年十二月号
    俳壇雑詠・桂信子選・秀逸


  牧 に ゐ て 牛 見 て お り ぬ 秋 の 暮           


   同・中島秀子選・佳作

  父 と 子 を へ だ つ も の あ り 秋 の 風         

 

 

 

 

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★★★★★★     一九九三年     ★★★★★★

 

 

 

★★★    一九九三年一月一六日
     毎日俳壇・鷹羽狩行選・佳作


  朝 寒 や 杖 の 老 婆 の を ら ず な り           

 


★★★    一九九三年一月三〇日
     毎日俳壇・飯田龍太選・佳作

  ま つ さ ら の 日 輪 い づ る 冬 至 か な         

 


★★★    一九九三年二月一三日
     毎日俳壇・飯田龍太選・佳作


  放 た れ て 己 ち ひ さ き 枯 野 か な           

 


★★★    一九九三年四月号
    月刊カドカワ・角川春樹選・佳作


  満 面 の 日 矢 石 舟 の 寒 の 水               

 


 ★★★   一九九三年四月号
     俳句研究・藤田湘子選・秀逸

 


  小 春 日 の 欅 に ち か ら も ら ひ け り         

 


★★★    一九九三年三月一八日号
     週刊文春・草間時彦選・佳作


  寒 林 に ゐ て 風 透 す こ の 身 か な           

 


★★★   一九九三年五月号
    俳句研究・藤田湘子選・佳作


  黙 然 と 牛 食 む 零 下 三 十 度               

 


★★★     一九九三年五月号
     俳壇雑詠・桂信子選・佳作


  春 来 る 弓 張 る 老 の 腕 か な               

 


★★★    一九九三年五月号
     平成俳壇・阿部完一選・秀逸


  奥 美 濃 の 闇 う つ く し き 寒 さ か な         

 


★★★    一九九三年五月二二日
    毎日俳壇・堀口星眠選・佳作


  山 焼 き の ほ む ら お ち こ ち 寝 観 音         

 


★★★    一九九三年九月号
    月刊カドカワ・角川春樹選・二席


  万 緑 の 中 悪 党 と な れ ず 行 く     

         
   【評】 万緑のーー見わたすかぎり緑一色の世界、いかにも夏の生命力あふれる躍動した季節を象徴している。その染まるような緑の中に身を置いている作者、悪の思考、力など入る余地もない。“悪党となれず行く”はまさに実感であった。

 


★★★    一九九三年十月二三日
     毎日俳壇・岡本眸選・準特選


  母 あ ら ぬ こ と の 三 め ぐ り 曼 珠 沙 華   
     

   【評】 時を違えず咲き出す曼珠沙華は、そのころに亡くなった母の忌日の前ぶれでもある。

 


★★★    一九九三年十一月六日
     毎日俳壇・鷹羽狩行選・佳作


  押 し 寄 せ る も の に ひ る ま ず 鰯 雲         

 


★★★    一九九三年一二月号
     俳句研究・岡本眸選・佳作


  む だ ご と の 楽 し き 日 か な 鰯 雲           

 

 

 

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★★★★★★     一九九四年    ★★★★★★

 

 


★★★    一九九四年一月号
    俳句研究・藤田湘子選・佳作


  老 兵 の 夢 く た び れ ぬ 鵙 の 贄             

 


★★★    一九九四年一月号
    俳壇雑詠・野村登四郎選・秀逸


  月 明 に つ ゝ ま れ 森 の 動 き だ す           


   俳壇雑詠・下村梅子選・佳作


  鰯 雲 う す れ そ め た る そ の 絆             

 


★★★    一九九四年一月号
     俳句・黒田杏子選・佳作


  遠 山 に ほ の め き の こ る 秋 の 暮                     

 

★★★    一九九四年一月十五日
     毎日俳壇・飯田龍太選・佳作

 


  枯 庭 や 佇 む 日 矢 の 中 の 父               

 


★★★    一九九四年一月二十九日
      毎日俳壇・堀口星眠・佳作


  寒 星 や 胃 カ メ ラ 呑 む を 憂 し と せ ず       

 


★★★    一九九四年三月二十四日号
      週刊文春・草間時彦選・佳作


  寒 鯉 の ご と ひ そ み ゐ る こ の 身 か な       

 


★★★    一九九四年五月号
     俳壇雑詠・飯島晴子選・特選


  退 学 の 子 と 冬 木 立 見 あ げ ゐ し    
         

   【評】 作者は教師の職にある。余儀ない事情による退学であろう。教師も心痛むがどうしようもない。教師の立場の限界というものがある。そっけない表現に、淡いが複雑な気持ちを読むことができる。

 

★★★    一九九四年五月号
    俳壇雑詠・野村登四郎選・佳作


  う づ も る る ご と き 処 世 や 青 木 の 実       


  阿 蘇 を 焼 く 男 風 神 呼 び に け り           

 


★★★    一九九四年七月九日
    毎日俳壇・岡本瞳選・佳作


  在 る こ と の し み じ み 二 人 静 か な         
   

 

★★★    一九九四年八月二十七日
     毎日俳壇・大峯あきら選・佳作


  源 平 の 戦 悠 長 百 日 紅                   

 


★★★    一九九四年十月二十二日
    毎日俳壇・大峯あきら選・特選
   

  雁 が 音 の 低 き と こ ろ を 渡 り け り    
      

   【評】 雁が渡るのは高いところとは決まっていない。意外な低空を鳴き渡る雁の声を聞いた作者の驚き。


      
 

★★★   一九九六年四月十四日
     毎日俳壇・岡本 瞳選・佳作


  間 近 に 梅 遠 目 に 桃 を 見 て 故 郷           

 

                
★★★    一九九七年三月三日
    毎日俳壇・岡本瞳選・特選


  冬 波 の 低 き も 力 漲 れ る           
       

   【評】 静かに圧倒してくる冬海の底力。対峙する作者の気力の張りが快く感じとれる。

 


 ★★★   一九九七年三月十七日
     毎日俳壇・鷹羽狩行選・佳作


  ま づ 吾 を 磔 刑 に せ よ 冬 薔 薇             

 


★★★    一九九七年四月十三日
    毎日俳壇・大峯あきら選・準特選


  里 山 は 笑 ひ 里 人 歩 き を り          
      
   【評】 里山に春が来ると人々の暮らしも春らしくなる。そんな里の道をゆっくりと歩いている人。
      

 

★★★    一九九七年五月号
   俳壇雑詠・飯島晴子選・佳作


  深 々 と 雪 積 む 闇 や 牛 生 る る             

 


★★★      一九九七年五月号
     俳句研究・藤田湘子選・秀逸


  豪 快 に 落 ち て 突 き 立 つ 氷 柱 か な         

 


★★★    一九九七年五月号
     俳句・和田悟朗選・秀逸


  の ぼ さ ん も 仁 さ ん も み な 冬 の 塵         

 


★★★    一九九七年六月号
   俳壇雑詠・河野多希女選・佳作  

                
  何 事 も 晩 生 で 通 す 花 八 つ 手                               

 

★★★   一九九七年六月号
    俳句研究・大石悦子選・佳作 


  春 の 雷 眠 れ る 父 を 起 こ し け り           

 


★★★   一九九七年五月十二日
    毎日俳壇・岡本瞳選・佳作


  菜 の 花 を 覆 ひ し 桜 吹 雪 か な             

 


★★★   一九九七年八月号
    俳壇雑詠・細見 綾子選・佳作


  白 藤 や 父 逝 く 雨 に 咽 び を り             


  俳壇雑詠・神尾 久美子選・佳作


  告 げ ざ れ ば 苦 し ま ざ る を 花 う つ ぎ       

 


★★★    一九九七年八月四日
     毎日俳壇・岡本 瞳推薦・97年前期 毎日俳壇賞


  冬 波 の 低 き も 力 漲 れ る                 


   【評】 景も色彩も単一化されてその力強さが増している。いうまでもないが川や沼ではない。冬海の波である。ことごとく冬波ならざるはなしといった圧倒的な力と対峙した作者の詩心もまた「力漲りぬ」の感がある。物をよく見たく句というのは気持ちがよい。

 


★★★     一九九七年十月号
     俳壇雑詠・細見 綾子選・佳作

  今 日 夏 至 や 生 徒 居 眠 り し 続 け る         

 


★★★      一九九七年十月号
     俳句研究・中原 道夫選・佳作

  今 朝 よ り を 余 命 と 思 ふ 合 歓 の 花         

 


★★★      一九九七年九月二十二日
      毎日俳壇・岡本 瞳選・特選


  父 も か く さ び し か り し や 夜 の 秋    
      
 
  【評】 人生後半に入る淋しさ。今になって生前の父のことがしきりに思われる。季語が適切。

 


★★★      一九九七年十月十二日
     毎日俳壇・鷹羽狩行選・佳作


  病 棟 の 廊 下 に つ づ く 花 野 か な           

 


★★★      一九九七年十一月号
     俳壇雑詠・能村登四郎・佳作


  永 劫 に 続 く 営 み 蟻 の 道                 

  今 朝 は 早 破 れ て 雨 の 芭 蕉 か な       
     


     同・飯島晴子選・佳作


  只 管 に 働 く 蟻 の 黒 光 り                 

 


★★★      一九九七年十一月号
     平成俳壇・廣瀬 直人選・推薦
     同・黒田 杏子選・佳作


  別 の 顔 誰 に も 見 せ ず 雲 の 峰    
          
 
  【評】 青柳さんの句、その折々の心情は必ず表情に表れるものという。それは単純な場合もあるがおおかたは表裏の両面を持つ。夏空の晴天に湧き上がる、あの「雲の峰」の印象を「誰にも見せない」心情に引き込んだ感受に共鳴する。

 


★★★     一九九七年十月十二日
     朝日俳壇・飴山 實選・6席

  厨 よ り 秋 茄 子 洗 ふ 音 す な り             

 


★★★      一九九七年十一月十日
     毎日俳壇・大峯 あきら選・佳作


  献 身 は ま だ 死 語 な ら ず 帰 り 花           

 


 ★★★     一九九七年十二月号
     俳句研究・藤田 湘子選・推薦


  病 め ば 秋 ひ と り あ そ び を 覚 え け り       


   同・中原 道夫選・秀逸


  虫 し ぐ れ 大 い な る 闇 ほ し と 鳴 く         
     

 

★★★      一九九七年十二月号
     俳壇雑詠・細見 綾子選・秀逸


  一 歩 に も 吾 あ る を 知 る 虫 時 雨           

 

     同・渡邊 恭子選・佳作

  細 胞 の 一 つ 一 つ が 吾 ぞ 秋               

 


★★★      一九九七年十一月二十四日
     毎日俳壇・岡本 瞳選・佳作


  曼 珠 沙 華 失 せ て 面 影 濃 く な り ぬ         

 

 

 

 

 

 

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★★★★★★     一九九八年     ★★★★★★

 

 


★★★      一九九八年一月号
     俳句研究・中原 道夫選・推薦


  一 粒 の 露 に 永 劫 あ り に け り      
        

   【評】 「露」の句といえば、まずは川端茅舎の<金剛の露ひとつぶや石の上>を思い出す。この句は昭和五年十一月号「ホトトギス」の虚子選雑詠巻頭に輝いたもの。<桔梗の露きびきびとありにけり>など他にも茅舎はたくさん露の句を残している。脊椎カリエスにむしばまれていく茅舎には、露を見るにつけ格別な思いがあったに違いない。露=人生のはかなさを譬えることは周知の通りだが、青柳氏の句はそれを逆手に取って<永劫>、無限に永い年月、時間があると、読み手に攻め込んでくる。
       中国の周易に「至大無外、至少無内」という名言がある。最大の宇宙に外界はなく、最小の粒子もとこしえに尽きなく、大もまたやはり無限であり、小もやはりまた無限なのである、という。まるではかない譬えの「露」にも物理的な時間以外の永劫はないとは言い切れないのだ。露の転生も含めて思えば・・・。

  


★★★     一九九八年一月号
     俳壇雑詠・嶋田 麻紀選・佳作


  つ ま ぐ れ の ご と お の ず か ら は ぜ た し や   

 


★★★    一九九八年一月十二日
     毎日俳壇・大峯 あきら選。特選

 
  赤 き 実 の 雪 待 月 と な り に け り       
     


   【評】 陰暦の十一月を「霜月」とも「雪待月」ともいう。野山には南天、ななかまど、梅もどきなど、赤い実が一杯。

 


★★★     一九九八年一月号
     平成俳壇・鈴木鷹夫選・佳作


  岩 風 呂 や 猿 の 来 て 啼 く 夕 時 雨           

 


★★★      一九九八年一月十九日
     朝日俳壇・川崎展宏選・四席


  丹 頂 の 舞 ふ を 見 て を る 烏 か な           

 

★★★      一九九八年一月十九日
     毎日俳壇・大峯 あきら選・佳作


  滝 の 上 凍 り 滝 壷 凍 り け り               

 


★★★      一九九八年二月号
     俳句研究・中原 道夫選・秀逸

  来 し 方 や 眠 り し 山 を 負 ふ ご と し         

 


★★★      一九九八年二月号
     俳壇雑詠・倉田 紘文選・佳作


  花 芒 ま る ご と 山 の う ね り を り           

 


★★★      一九九八年二月号
    NHK俳壇・藤田 湘子選・佳作


  白 湯 の ご と 粥 す す り を り 虫 し ぐ れ       

 


★★★      一九九八年二月十二日号
     週刊文春・草間時彦選・佳作


  中 年 や 最 後 の 恋 は 雪 女                 

 


★★★      一九九八年二月十六日
     毎日俳壇・岡本 瞳選・佳作


  寒 林 の 土 や 息 づ く も の に 充 ち           

 


★★★      一九九七年十二月号
     朝日家庭便利帳・「編集室から」

 

  ★朝日俳壇(十月十二日付)に福岡県柳川市の青柳仁さんの入選句「厨より秋茄子洗ふ音すなり」を見つけました。この句から磨かれ整頓された台所と生活のイメージが浮かびます。今月の風は「台所のダイエット」です。今年も一ヵ月余り。大掃除を前に、参考になりましたでしょうか。(後略)。

 


★★★      一九九八年三月号
     俳句研究・中原 道夫選・佳作


  一 筋 の 夢 一 筋 の 雪 の 道                 

 

     同
     俳句研究・藤田 湘子選・佳作


  風 花 の 舞 ふ 紺 碧 の 岬 か な               

 


 ★★★     一九九八年三月二日
     朝日俳壇・飴山 實選・佳作


     田原坂
  弾 痕 の 遺 る 白 壁 蕗 の 薹                 

 


★★★      一九九八年三月号
     平成俳壇・鈴木 鷹夫選・秀逸
        茨木 和生選・佳作
        廣瀬 直人選・佳作


  山 眠 る ご と 大 い な る 眠 り 欲 し           
   

 

★★★      一九九八年四月号
     俳句研究・大石 悦子選・秀逸
  
  
  夢 を 見 る 花 に あ り し や 帰 り 花           

 


 ★★★     一九九八年五月号
     俳句研究・大石 悦子選・佳作


  芽 柳 の 月 の 光 を 弾 き け り               

 


 ★★★     一九九八年五月号
     俳壇・後藤 比奈夫選・佳作


  流 氷 の 這 ひ 登 り 来 る 岬 か な     
         


    同 ・野見山ひふみ選・佳作

  熱 っ ぽ く 授 業 終 わ り ぬ 雪 日 和           

 


★★★     一九九八年五月四日
     毎日俳壇・堀口 星眠選・佳作

  
  菜 の 花 の 中 に 釣 人 あ り に け り           

 


★★★      一九九八年六月号
     NHK俳壇・星野 椿選・佳作


  や わ ら か き 光 と な り ぬ 春 の 水           

 


★★★      一九九八年六月号
     俳句研究・大石 悦子選・佳作

  引 鶴 を 待 つ 岬 に て 夕 か な               

 


★★★      一九九八年六月号
     俳壇・森田 峠選・佳作


  山 焼 き の 炎 が 炎 追 ひ か く る      
        


     同・松本 旭選・佳作


  初 燕 昨 日 を 超 ゆ る 光 な れ               

 


★★★      一九九八年六月二九日
     毎日俳壇・岡本 眸選・佳作


  万 緑 を く ぐ り て 今 日 の 仕 事 か な         

 


★★★      一九九八年七月六日
     毎日俳壇・大峯 あきら選・佳作


  早 苗 田 の 筑 後 は 広 く な り に け り         

 


★★★      一九九八年七月号
     平成俳壇・廣瀬 直人選・秀逸


  明 日 あ れ ば 明 日 の 煩 悩 木 の 芽 風         

 

 

★★★     ★★★     おわり     ★★★      ★★★

 

 



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