逝きし世の面影

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スタルダー太平洋海兵隊司令官が語る本音(苦しい言い訳)

2010年04月04日 | 軍事、外交

『沖縄の米海兵隊、主任務は北朝鮮の核兵器の除去』

キース・スタルダー米太平洋海兵隊司令官は沖縄に駐留する米海兵隊について、『その時、北朝鮮の核兵器を速やかに除去するのが最重要任務だ』と述べた。
スタルダー司令官が2月17日に訪日した際、
『実は沖縄の海兵隊の対象は北朝鮮だ。もはや南北の衝突より金正日(キムジョンイル)体制の崩壊の可能性の方が高い』と説明した上で述べたもの。
司令官は在日米国大使館で、日本の防衛当局幹部や安保専門家に会った際、在沖縄海兵隊の航空基地である普天間飛行場移設問題について、現行計画への理解を求め「公式見解」をひと通り述べたという。
すると、日本側の出席者に『(米国の)そんな(あいまいな)話はわたしたち安全保障専門家は分かっている。そういう説明ばかりだから、海兵隊は沖縄に必要ないと言われる』と指摘されたため、上の通り答えたとのことだ。
米国はこれまで、在沖縄米軍の役割について「北朝鮮の脅威」「中国の軍拡」「災害救援」と幅広く説明してきた。
日本の安保専門家の相当数は、在沖縄米軍の一部を構成する海兵隊の任務について、地上投入兵力が約2000人である点を挙げ、
『有事の際に韓国にいる米国人を脱出させるという役割に限定している』と解釈している。
(普天間問題を有利に導くため)北朝鮮崩壊時の核が日本に差し迫った問題であることを利用したきらいもあるが初めて(米国が)本音を明かした瞬間だった。(この話を聞いた)出席者の間に沈黙が流れた。
朝鮮日報 2010/04/02

『沖縄の海兵隊の任務は米人の保護か?』

抑止力として陸軍のような拠点防衛も出来る軍隊ではなく、殴り込み専門の急襲部隊である海兵隊の任務(使い道)としては今回のキース・スタルダー米太平洋海兵隊司令官発言には、『なるほど』と納得する日本人は多いだろう。
ところが現実問題としては朝鮮戦争停戦以来半世紀も自国経済を省みずアメリカ軍の侵攻を予想して、正規軍だけでも100万人を擁し、山岳地帯とトンネルで全土を要塞化して全面戦争を準備している北朝鮮に対して海兵隊が何の準備もなく侵攻することは、米軍としてあり得ない選択肢である。
今回の海兵隊司令官発言は、単に日本の世論(北朝鮮脅威論)に悪乗りした『方便』でしょう。
通常、海兵隊であっても米軍の敵地上陸作戦の前には制空権、制海権を確保して徹底した空爆と艦砲射撃を長期間続けて相手の抵抗力を完全に除去した後に、初めて軍事侵攻が行われる。
この原則を踏み外したイランアメリカ大使館人質事件へのイーグルクロー作戦(ライスボール作戦)は惨めに失敗している。
口に出すのはともかく、成功率は限りなくゼロに近いし、実現性はゼロ以下の低い確率である。
それにしてもグアム移転する8000人に対して北沢防衛相は現実に沖縄にいる海兵隊実数は4~5千人と話している。
数字が合わない。
普天間飛行場のある宜野湾市は以前から海兵隊の動向に敏感で情報を収集しているが、海兵隊が全数をグアムの移転する米軍資料を示して、マスコミや政府外務省の主張の間違いを指摘しています。
宜野湾市役所の調べでは既に環境影響評価を行い司令部だけでなく、実戦部隊の大半や補給部隊など兵站部門まで、沖縄海兵隊のほとんどすべてを2014年までにグアム島に移転する計画を米軍がすでに実施ずみなのです。

『韓国から見た沖縄問題』

直接的な何の脅威もないのに今までの膨大な防衛利権(防衛関連産業の既得権益の確保)の為に『脅威』を煽る狼少年並の平和ボケ日本側防衛族とは大違いで、実際に北の軍事力(脅威)と日常的に対峙している韓国の朝鮮日報の記事が興味深い。
日本の安保専門家が『抑止力である』との日本国内向けとは正反対に在沖縄海兵隊の任務について、『有事の際に韓国にいる米国人を脱出させるという役割に限定している』と客観的判断している。
『なるほど』、
この韓国の報道機関の記事(日本の海兵隊は米人保護用との判断)の方が米海兵隊の長い歴史から推察すれば納得がいく解釈です。
今までの沖縄の立地条件が『近いから最善なのだ』の説明だったのですが、海兵隊の航続距離の短い回転翼機では『北』は遠過ぎて日本本土の山口県岩国や長崎県佐世保の方が最適ですが、南(韓国)なら沖縄でも十分到達可能範囲で、海兵隊基地がいざと言う時の米兵や米国市民の脱出用の配備であると考えるとアメリカ(ゲーツ国防長官)がグアムではなく沖縄に拘る理由も納得できるでしょう。
米海兵隊とは当たり前ですが日本の防衛が目的の軍隊ではなく、アメリカのアメリカによるアメリカの為の軍隊なのです。

『駐韓米軍の有事の意味』

アメリカが考えている韓国の有事の意味ですが、反抗を恐れて韓国軍に戦車や満足な重砲を装備させなかった朝鮮戦争前の韓国軍とは大違いで、現在は兵員数とか戦車の数など数量的には今でも北が勝っているが、実質的な軍隊の実力である南北の装備の比較ではアメリカ製最新兵器で武装する『南』(韓国)が、朝鮮戦争当時の旧式ロシア製兵器のままの『北』を圧倒している、
有事とは、『北』の韓国侵攻(本格的な戦争)の意味ではなく、イランでのアメリカ大使館人質事件のようなもの(反米感情が爆発した韓国に米人が拘束される)ではないでしょうか。?
アメリカは北朝鮮に対して、冷戦が激しかった70年代前のプエブロ号事件(1968年)で82名が拘束されても一切軍事的なオプションは取らずアメリカ側(ジョンソン大統領)が謝罪して穏便に済ましている。
一名が死亡したプエブロ号の翌年(1969年)に米軍偵察機EC-121を撃墜されて30人以上の大量の死者が出た事件でも、アメリカの政権が民主党から共和党に変わっていたが新任のニクソン大統領は前のジョンソン大統領と同じ態度をとっている。
民主党のクリントン大統領は1994年には、長年の戦争経済で疲弊して慢性的な電力不足に苦しむ北朝鮮に対して毎年50万トンの重油の提供や、実現しなかったが無料で2基の原子力発電所を建設する約束までしていたのです。

『冷戦の意味するところは』

旧ソ連を本気で『悪の帝国』だと信じていて、冷戦を過激にエスカレートさせすぎて大事な冷戦相手のソ連をゲームオーバーで崩壊させた愚か過ぎるレーガン大統領以外の歴代のアメリカ大統領は、皆がみな、『冷戦』とはアメリカに敵対する相手(仮想敵国)があってこそ始めて成り立つ(日本の無駄に大きい箱物造りと同じ公共事業としての)『戦争ゲーム』だと言う大事な点を踏み外す事はなかったのです。
永久に終わらない筈の日本の公共事業と、永久に終わらない筈の公共事業としてのアメリカの『冷戦』とは、どちらも世界第一と第二の経済大国の経済に取っては欠くべからざる重要な位置を占めていて、(正当な大義名分で大量の公金を半永久的に浪費する)まったく同じ意味を持っていた。
ところが経済事情が変わり、今では日本の無駄に大きい公共事業も、アメリカの公共事業としての冷戦も、どちらも最早続けられなくなっている。
半世紀続いた東西『冷戦』とは、今にも『戦争が起こるぞ』と世界のみんなに思わせて緊張感をぎりぎりまで高めて戦争一歩手前の際どい瀬戸際まで持っていくが決して戦争まで起こさない。
剣法の達人の名人芸『寸止め』のような不思議な構造になっていたのです。

『米軍のお家の事情が優先』

沖縄の米軍の任務が日本防衛でも抑止力でも無く『韓国の米人保護である』との見方は韓国紙に書かれているので、韓国では常識であるのでしょうが、ただ現実問題としての可能性としては、今回言い出した北の核除去の話と全く同じで、ほぼゼロでしょう。
今回は、『多くの日本側防衛関係者の意見』とあるところが興味深いですね。
そんな事は日本のマスコミには決して載らない種類の話です。
米軍が沖縄にいる理由は唯一つ。
反戦塾ましま塾頭の明確な判断、『基地経費は持ってくれるしで、居心地がいいから出ていきたくない』に尽きるでしょう。

ただ普天間基地のある宜野湾市長の国会へ提出した米軍関連資料をよく読むと、元々米軍の世界的再編の為に米軍は大分前からグアムに海兵隊の全員移転は決まりごとで、居残るとのマスコミ報道の方が間違いであるようです。
ただアメリカ軍がマスコミ等で居残るように装っているのは、日本からの思いやり予算を今までどうりに日本政府から出させる思惑がある。
本当の真実を語ったら日本から金が引き出せなくなる。

アメリカ軍は作戦地域と、攻撃基地のベースとなる策源地とは安全上必ず2000キロメートル以上の距離を離すのは決まりごとらしく、第二次世界大戦時の日本列島攻略にはマリアナ諸島のサイパン島の基地確保(サイパン陥落1944年7月7日 )が重要な意味を持っていた。
距離が半分の1000キロメートルの便利な飛行場まである小笠原諸島の硫黄島を占領(1945年3月)しても日本本土への距離が近すぎて米軍は基地として使用することは一度も無かったのです。
沖縄の重要性とは日本に対するサイパン島と同じ意味で、ソ連極東地域(ウラジオストック)に対しては沖縄基地が2000キロメートル離れた絶妙な位置関係にあり、冷戦時は絶対に必要で米軍の要石だった。
ところが冷戦自体が崩壊するし、航空機などの軍事技術、装備が向上した今では距離はもっと遠くても良くなっているので、今では米軍が沖縄に軍事基地を置き続ける軍事的意味がなくなっているのです。
アメリカ軍の世界的再編で米軍の要となるグアム島基地ならその点理想的である。
日本列島、朝鮮半島、台湾、中国、フィリッピンなどと2000キロメートルのちょうど良い程度に離れた距離で、しかもアメリカ領なので何時でも不用に為れば本土に撤収も可能です
海兵隊は現在は三つの遠征軍を持っているが、将来は経費節減の為に縮小してアメリカ本土に配備されている二つの遠征軍に整理統合する予定であるらしい。

『本当の沖縄海兵隊の人数と目的』(海兵隊の抑止力は、非常に疑問)

今日4月3日の毎日朝刊オピニオン記事ニュース争論『沖縄に海兵隊は必要か』で防衛庁審議官、官房長を歴任し、小泉政権時から5年以上も軍事問題専門家として内閣官房副長官補をしていた柳沢協二氏は、
『海兵隊の抑止力は、非常に疑問だ。』と語る。
今までの歴代自民党日本政府内の軍事問題の専門家で、日本の軍事問題に詳しい柳沢協二氏は毎日紙上で、
『沖縄の一個大隊規模(700人~1200人程度か)の海兵隊が、この地域の抑止力としてどれだけ不可欠なのか非常に疑問だ。』と批判しているのです。
今までの公称海兵隊人数である18000人は大風呂敷に近く、
北沢防衛大臣の4~5000人でも可也も水増しで、
韓国の朝鮮日報の記事中の2000人でも多すぎて
歴代自民党政権の日本側防衛問題責任者である柳沢協二氏にいたっては海兵隊の員数はたったの1200人足らずですよ。
公式報道では、アメリカの海兵隊定員18万人の内の一割18000人が 、三つある海兵遠征軍の内の 第3海兵遠征軍として司令部沖縄県うるま市キャンプ・コートニーに常駐している事になっている。
海兵隊の編成ですが、調べると
海兵隊遠征隊(MEU)は、増強された海兵隊歩兵大隊を基幹として、混成ヘリコプター飛行中隊、兵站部隊、そして司令部部隊より編成されている。指揮官は海兵隊大佐、総兵員は約2200名です。
これが、朝鮮日報の2000人の数字の根拠でしょう。
海兵隊遠征隊Marine Expeditionary Unit、(MEU)は通常2200人規模ですが主力の地上戦闘部隊は一個大隊規模なので1200人程度。
米国本土 西海岸の海兵隊遠征隊はカリフォルニア州キャンプ・ペンデルトンに第11、第13、第15海兵隊遠征隊の三個MEUを持っていて一つの遠征部隊を組織している。
米国本土 東海岸の海兵隊遠征隊はノースカロライナ州キャンプ・レジューンに第22、第24、第26海兵隊遠征隊の矢張り三個のMENで編成されているのです。
ところが日本駐屯の海兵隊遠征隊は沖縄県キャンプ・ハンセンの第31海兵隊遠征隊だけで、唯一つMEUなのです。
数字が色々ありすぎて何を信じてよいかは判然としないが、最小の柳沢協二の一個大隊1200人との説が一番正確な数字のようです。
何しろアメリカの絶対的な正義(善意)を信じて『自衛隊では代替機能はない』と、ことごとく柳沢協二に反論していた自衛隊OBで軍事問題専門家の森本敏拓殖大教授が、
何とこの、最小の数字である柳沢協二氏の沖縄駐留の一個大隊規模の海兵隊編成が正しいとの前提で、その後の柳沢氏との対話を進めていたのです。

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1 コメント

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情報を独占する官僚組織 (逝きし世の面影)
2010-04-05 11:45:12
毎日新聞4月3日の倉重篤朗専門編集委員を立会人として、マスコミでお馴染みの自衛隊OBの軍事問題専門家の森本敏拓殖大教授と、
自民党歴代内閣で5年以上も安保担当の官房副長官補として、つい最近まで日本政府の中枢で普天間問題のみならず日本の安保・防衛問題を仕切る官僚トップにいた人物である元防衛庁の柳沢協二氏の論争が実に興味深い。
今までは自民党歴代政権だけではなく新政権の鳩山由紀夫首相や日本の主だったメディアまでが『抑止力』としての海兵隊を認めていた。
『抑止力』が正解(定説)であるかの議論が罷り通っているが、実はこれが『事実とは全く違っていた。』と。官僚のトップが『海兵隊の抑止力』完璧に否定して、今までの『定説』である森本説の間違いを事実に基づいて解説している。
この意味は大きいですね。
この記事が、この時点で毎日新聞に掲載された意味も大きいと考えています。
今までは自衛隊OBの森本敏と同じアメリカや米軍や安保を前提とした意見しかマスコミでは報道していませんでした。

この時点で、毎日新聞が君子豹変、寝返ったのか。?
総選挙後の自民党の首相候補?若林元農水相が代理投票して議員辞職した議会制民主主義をないがしろにしたお粗末自民党問題でも、この若林元大臣の映像を民主党に提供したのはマスコミ関係者で、自民党一本だった農協や日本医師会が民主党に寝返ったように、小沢鳩山疑惑報道(民主党叩き)ばっかりだったマスコミが民主党に寝返ったとの見方もあるようです。


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