逝きし世の面影

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「マレーシア機撃墜」 政治・軍事対立と人間の尊厳

2014年07月27日 | 政治
『付け火して、煙よろこぶ田舎もの』

『柳田邦男の深呼吸』
7月26日の毎日新聞オピニオン欄で『「マレーシア機撃墜」 政治・軍事対立と人間の尊厳』と題する記事で31年前の1983年に発生したサハリン上空での大韓航空機撃墜事件と、7月17日に発生したウクライナでのマレーシア航空機撃墜事件との関連性を書いている。
マレーシア機撃墜で『私が直ぐに想起したのは1983年にサハリン上空で起きた大韓航空機撃墜事件だ』と思った作家の柳田邦男ですが、根本的な大きな勘違いをしている。
7月22日に『ウクライナ軍が撃墜に関与した』と断定したロシア国防省は超強硬だが、同じ日のプーチン演説は異様にソフトと言うか慎重な言い回しなのですが、これはロシアの大統領と国防大臣が対立していると言うよりも、もう今回のマレーシア機撃墜では勝負が決まったので、プーチンとしてはアメリカを深追いしないで穏便に済ますことでオバマに恩を売る計算でしょう。
そもそも日本国においての海外ニュースは、すべてがロイターなどお欧米系の通信社経由なので欧米よりに大きく偏向しているの見るべきです。マスコミに書いてある内容は割り引いて考える必要がある。
今回ですが制裁どころか、フランスはロシアに対してミストラル級の強襲揚陸艦の売り渡しを止める気がない。
オランダとかオーストラリアが強硬に制裁を主張するが、EUとしては本気で制裁を行う気がない。アメリカの顔を立てて一応『対ロ制裁をしている』との体裁をとっているだけなのである。
そもそも一番大事な具体的な証拠が提出されていない。(軍事情報を出しているのはロシア側だけ)
アメリカやウクライナが『撃墜したのは親ロ派だ』と断定口調で言うから、何となく信用できそうだ思わせているだけで、中身は何もなし。
ウクライナが出した盗聴記録は切り貼りの可能性が高いし、『ソーシャルメディアの情報』なるものはネット上の誰か不明の削除されて今は無い書き込みですよ。
ウクライナですが、何故か管制当局とマレーシア機との交信記録さえ提出しないのです。
ところが、マレーシア機墜落の事実が判った途端に早々と『親ロ派が撃墜した』と発表。あわせて親ロ派がクレジットカードとか貴重品を盗んでいるとも発表している。今は機体を重機で切断して証拠を隠滅していると言うが、早期の遺体捜査の悪口としか思えない。基本的に不真面目すぎるのである。
物事にはすべてに最適な時期があり、時間的に早すぎても遅すぎても信用を失う。
今回のウクライナですが発表が余りにも早すぎるのである。証拠類を精査した痕跡が無、これでは到底信用できません。これは間違いなく戦争中のプロパガンダ(戦時の宣伝広報)の類ですね。
逆に『遅すぎて信用を失った』例といえば5年前の韓国の哨戒艦天安沈没でしょう。韓国の哨戒艦が沈没してから1週間後に北朝鮮の潜水艦の魚雷だというが、これも到底信用出来ない。敵に撃沈されているのに1週間後にやっと気が付くようでは戦争にならない。
遅すぎるといえばセウォル号オーナの変死体が発見から40日近くたってから発表されているが、18日間で白骨化するのかと韓国国内では不信感がいっぱいらしい。
マレーシア機撃墜では、作家の柳田邦男は真っ先に1983年に起きたサハリンで領空侵犯した大韓航空機の撃墜事件を思い出したらしい。
疎開先で『アカだ』『ビンボウニンだ』とイジメにあった経験がある私が直ぐに想起したのは、『付け火して、煙よろこぶ田舎もの』である。
濃密な人間関係の田舎生活(絆社会)で一番嫌な事は都会なら少しはある公平性が全く無いことなのです。論理的な発想が最初から欠如している。
盗難とか紛失、失火など何らかの不祥事(オキテ破り)が発生した時には、証拠も状況も無関係に即座に部外者(疎開者などの一般的なムラビトとは違う価値観をもっている人)が『犯人に間違いない』と断定されるのである。

『欧米や日本が忘れてしまいたい26年前の悪夢』

もしも対空ミサイルによる民間機撃墜の例を出すなら、一番似ているのは大韓航空機撃墜の5年後、26年前1988年に起きたイラン領海に侵入したアメリカ軍のイージス艦による定期航空路を予定どうりに飛んでいたイランのエアバスの撃墜ですよ。
マレーシア機も予定された航路を飛んでいて撃墜されたのですから、そっくり同じ種類の事件なのです。
今回の定期航空路上のマレーシア機と、航路を大きく外れて領空侵犯を5時間以上続けていた31年前の大韓航空機とでは『事情の違い』が大きすぎる。
今回の作家の柳田邦男の『政治・軍事対立と人間の尊厳』との毎日記事ですが、タイトルの通りで、知識も経験もある一流の教養人でも政治(軍事)が絡めば、『人間はどこまでも愚かになれる』のである。
まさに『政治・軍事対立で(極限まで容易に)人間の尊厳が汚される』と言う見本の様な話なのです。
柳田邦男ですが、『人道上の欠片も見せずに、真実を隠蔽し、事件を反米キャンペーンに利用することに傾注した』とか『よくぞこんな大嘘を連発できたものだと唖然としたものだ』とか『人々の命や尊厳や悲嘆などは、ブルドーザーに踏み潰される雑草の如く無視される』とか『何故、人間はそこまで非常になれるいのか』と、軍事独裁国家だった旧ソ連の悪行を口を極めて非難しているのです。
柳田邦男の『「マレーシア機撃墜」 政治・軍事対立と人間の尊厳』の主張ですが、『言い分』としては全く正しいのである。少しも間違っていない。
ただし、航路を大きく外れて領空侵犯を5時間以上続けていた31年前の大韓航空機には不十分で間違っていたのだが、撃墜する前に軍事通信や威嚇射撃など一応は警告が為された後にソ連のスホーイ戦闘機のミサイルで撃墜されている。
ところが26年前の1988年、ペルシャ湾のイラン領海に侵入したアメリカ軍のイージス艦は定期航空路上を飛ぶイランのエアバスを無警告で情け容赦なく撃墜する。

『ソ連軍の個別的自衛権と、アメリカ軍の集団的自衛権』

同じように民間機を撃墜して300人近い犠牲者が出ているが、自国領内の旧ソ連軍戦闘機による大韓機の撃墜(個別的自衛権)よりも、イラクのフセイン軍事独裁政権を支援する目的で他国の領海を侵犯した挙句に問答無用でイランの民間旅客機を撃墜したアメリカ軍(集団自衛権)の方が比較出来ないほど、数十倍以上もはるかに悪質なのである。
アメリカですが、売られてもいない喧嘩をわざわざ買いに行って間違って対空ミサイルで民間機を撃墜する。
しかも当時のレーガン大統領はイランのエアバスが超音速で急降下して爆撃体制をとっていたとの『よくぞこんな大嘘を連発できたものだと唖然とする』事実と正反対の無責任極まる腹立たしい爆笑発言を繰り返していた。
絶対的な正義(あるいは悪)とは宗教上にだけ存在する。科学的な客観的正誤は絶対的なのですが、善悪は常に相対的なのである。
自由と民主主義のアメリカの不朽の正義とそれと対になっている絶対的なソ連の悪を無邪気に信じているらしい柳田邦男ですが愚かにも今でも20年以上前に終わっている冷戦思考から抜け出せない。
あるいはギブミィ・チューインガムの米軍占領時代の卑屈な植民地の負け犬根性から一歩も抜け出せないのである。
飼い犬にとってはもしも主人が極悪人であるとしたら世の中でこれほど恐ろしい話は無い。嘘であっても自分のご主人様は常に公明正大な善の具現者であって欲しいのである。
そもそも今の世界で『政治・軍事対立と人間の尊厳』を言いたいならマレーシア機撃墜を取上げるよりも、何よりも緊急をようするイスラエル軍によるガザ市民の虐殺である。
今の世界でアメリカの絶対的な正義を能天気に信じているのは69年前の原爆攻撃を忘れている暢気な日本人だけですよ。
イスラエル軍の理不尽な蛮行ですが、アメリカの全面支援無しには不可能なのである。
パレスチナなど中東世界では『悪の権化』としてのアメリカの『自由と民主主義』が猛威をふるって人々を恐怖に陥れている目の前の『明らかな事実』を何故見ないのか不思議である。

『1983年にサハリン上空で起きた大韓航空機撃墜事件』

今では31年前の大韓航空機撃墜事件を正確に覚えている人は少なくなって仕舞ったが、当時でも事件を正確に把握していた人は少なかったのである。
当時は東西冷戦の真っ最中であり、政治的な邪まな思惑が人道よりもはるかに優先されていた。価値観が根本的に狂っていたのである。
欧米や日本の政府やマスコミは、まさに『『人道上の欠片も見せずに、真実を隠蔽し、事件を反ソ連キャンペーンに利用することに傾注した』のである。
大韓機撃墜直後にアメリカ(米軍)や日本政府(自衛隊)は、いままさに大韓機を撃墜しようとしているソ連軍のスホーイ戦闘機と通信司令部との生々しい交信記録をマスコミに公開する。
ただし理研のSTAP細胞のネイチャー論文と同じで都合の良い情報だけの『切り貼り』だった。軍事通信による領空侵犯の警告とか威嚇射撃などの部分を抜いて大韓機撃墜がより悪質に見えるように音声記録を加工していたのである。
STAP細胞の実験結果を分かりやすく際立たせようと科学論文を捏造した小保方博士の手口と同じなのです。(加工前の『生データー』以外は、科学的な資料価値はゼロである)
アラスカのアンカレッジ発ソウル行きの大韓航空機ですが、離陸した後に航路を逸脱、真っ直ぐにソ連領のカムチャッカ半島に向かっていた。カムチャッカを領空侵犯した後もサハリン上空に侵入して撃墜されるが自動操縦であったと言う。(何とも不思議な話なのですが、離陸から撃墜までの5時間以上もコックピットの操縦士らは一切の計器類を見ていないらしい。一目見れば航空路の大幅な逸脱が明らかなのです)
ただ管制当局や米軍や自衛隊は撃墜されるまで、危険なソ連の領空侵犯を続ける大韓機を正確にモニターしていたのである。人の死を冷静に観察していたナチスのメンゲレとか日本の石井部隊の医師と同じ悪魔の振る舞いである。
領空侵犯どころか、もしも日本の新聞社の飛行機がソ連領空に少しでも接近すれば直ちに自衛隊が当該機に煩いほど『接近しすぎている』と警告する。ところが、米軍や自衛隊などの航空関係者ですが誰一人も、領空侵犯の事実を一言も大韓航空機に警告していない。
撃墜された大韓機の乗員や米軍か自衛隊のうちで、誰か一人でも正しく行動していれば十分に防げた悲劇なのである。
31年前の大韓航空機の悲劇ですが撃墜したソ連軍一人の責任では無くて、関係した全員が犯した愚劣な非人道的怠慢が結果的に300人近い死亡につながっている。
自動航法装置の入力間違いでの大韓航空の航路の大幅逸脱ですが、アンカレッジとソウルとを直線で結ぶ線上を正確に飛んでいた。(飛行時間とか燃料節約の観点からなら少しも間違いではない)

『ソ連軍による大韓航空機撃墜事件と日本共産党の風評被害』

1983年9月1日大韓航空機撃墜事件が発生。事件直後にロッキード疑獄の田中角栄元首相の有罪(実刑判決)の衝撃で自民党中曽根康弘内閣が崩壊、総選挙で与党自民党は大敗北。過半数割れして自民単独与党体制は終わり新自由クラブとの連立政権になる。
この時に普通なら勝つはずの共産党は大韓機撃墜での風評被害で敗北。ソ連と日本の共産党を有権者が混同した為に総選挙で敗北したので党名を変える。党名をどう変えたのか、 それまでの『共産党』(CP・J)では無く、『日本共産党』(JCP)と変えた。
今までの人物は止めて公式な政党ポスターを日本の象徴的存在だと誰もが思っている富士山にし大きな文字で『日本共産党』と書き入れた。
日本共産党の政党ポスターが『富士山に日本共産党』である。
例えるなら日本の墓石によく見られる『○○家の墓』なる不思議な表記と同じで、確かに日本では伝統的な表記方法であるが、論理的に考えれば、墓石にわざわざご丁寧に『○○の墓』と念押しする必要があるのか。わざわざ『墓』と書かなくとも誰が見ても『墓』である。別のものと間違う方が可笑しい。
確かに犬小屋では『ぽちの家』なる表記法はあるが、『○○家の家』なんて表札は見たことが無い。名前の『○○』だけで十分である。
公式ポスターを『富士山に日本共産党』に変えたこの時から、誰もソ連共産党と勘違いする人が日本にいなくなったのか。
ところが1989年6月4日、中国で『天安門事件』が発生。 1ヵ月後の7月消費税導入直後の歴史に残る参議院選挙では与党自民党は歴史的な大敗北で過半数割れ。消費税に一番反対し、日本の政党の中では中国共産党と一番厳しく対決していた(天安が起きず国内問題だけなら)必ず勝てる日本共産党は、又しても共産党の名前つながりの風評被害で歴史的敗北を喫する。共産党の党名がマイナスブランドとして決定的に足を引っ張ている事実は誰が見ても明らかなのである。
因みにこの時、社会党は泡沫候補までトップ当選して、お粗末な土井チルドレンが大量発生。この後、社会党は消滅し共産党は未だに立ち直れない。

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