福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

子ども農園 第一歩

2019-09-07 22:12:15 | 日記
 隊員宅の隣にある畑とビニルハウスの草刈り、土起こしをした。隊員が構想する、不登校や引きこもりの子どものための農園づくりの第1歩。夏の日差しの下、ボランティアで駆け付けてくれた3人とマッチョ大家さんと約2時間、草刈り機や農具を振るった。腰ほどの高さに茂っていた草の大半を「えいやっ」と刈り、勢いついでに隣の田んぼ脇の草もやっつけてくれた。
 畑の隅では、畑の主である大家さんが育てるナスとピーマンがぽこぽこ実を付けている。「取りんさい、取りんさい」。大家さんがボランティア参加してくれた女性に気前よく言うと、女性は勢いよくはさみを振るってバット2かご分を収穫した。
 汗だくの作業後、日陰でビールとノンアルコールビールで乾杯。取れたて野菜入りの焼きそばをみんなでこしらえ、お隣さんにもらったかわいいメロンをわいわいと味わった。
 「ここに人が集まったのは久しぶりよのぉ」。マッチョ大家さんが、日に焼けた顔で焼きそばを頬張りながらうれしそうに言う。先月からは隊員が暮らすこのおうち。実は大家さんのお母さんが生前、都市部の子どもを田んぼに招いて米作り体験会などをしていた。家の壁には、大勢の子どもが田植えをしている写真が数枚、飾られたままだ。
 隊員は引っ越し前にそれを知り、勝手に強い縁を感じてコーフンした。「まずはここで農園つくるぞ。つくれっておぼしめしだぜ」
 いつものクセで発作的に人を巻き込んでやった土起こし。時間設定、段取り、準備物、交通手段、呼びかけの方法―。「うわ、失敗」「これ、しんどっ」って改善すべき点、たくさんありました、はい。夜、作りすぎた焼きそばの余りを頬張りながら、ひとり反省する。
 子ども農園構想は試行錯誤、五里霧中、前途多難だけど、なにはさておき、急なむちゃぶりに応じてくれた3人に感謝! 山里にひょっこり転がり込んできた身として、人の温かさが身にしみた。



こわもてドクターの転身

2019-09-07 01:07:08 | 日記
 人から見ると人生の大きな転換でも、当の本人にとってはごく自然な流れ―。そんなことは、珍しくないのかもしれない。今日仕事で会った広島県内の男性医師も、泌尿器科医から精神科医へという転換を経て今、田舎町の地域医療と向き合っていた。
 大学の医学部を卒業後、いくつかの総合病院で経験を積みながらバリバリと働いていたドクター。30歳を過ぎたころ、心の病から体調を崩した。激務と人間関係のストレスが原因だった。たくさんの人を治してきた医師の立場から一転。ひとりの患者として医療に関わる中で、人の心と向き合う医師になりたいとの思いが芽生えたという。
 体調を取り戻した後、新たな「師匠」の医師の下で学びながら精神科の専門医資格を取った。数値や画像に基づいて治療法をほぼパターン化できたそれまでと違い、心や精神の病は原因がなかなか目に見えない。「患者さんと時間をかけて話し、その人の人生を知らないと、表面的なケアや間違った治療につながってしまうんだと痛感しました」
 再び長年の「修行」を積みながら、精神科の入院病棟や「看取り」を扱う介護事業所などを持つ医療法人のトップとなったドクター。全国的に相談・支援の機会が限られている高校生以上の発達障害の専門外来を設けるなど、独自のチャレンジを続けている。
 自分の心の声に気付いたとき、新たな一歩を踏み出すかどうか。そこが一番難しい。たいていの声は、常識や生活を理由に「踏み出さない」ことの言い訳に変わり、居酒屋でぶちまけられて消化されるのかもしれない。
 「まあ理想に向けていろいろやってますけど、現実はなかなか厳しいですよ」。こわもてに茶パツの風貌で、地域医療をめぐる現実もとつとつと語ったドクターの目は、なかなかかっこよかった。